午後、市役所の課長から電話があった。児童公園に設置した「手押しポンプの水が出ないので見て欲しい」と言う。先輩と駆けつけると既に課長は部下と到着していた。手押しポンプの柄を上下させてみると手応えがある。呼び水をすれば水は出るはずだ。課長の命令で若い職員が隣の病院に水をもらいに行った。
バケツの水を注いで柄を上下に動かすと、濁った水が出てきた。相当長い間使っていなかったようだ。しばらく汲み続けると水はだんだん澄んできた。手押しポンプは吸い上げる力が強いので、溜まった砂を汲み上げてくるのだ。バケツの中を見せるとかなりの砂がある。ただ、ピストンの音を聞いていると摩耗しているようだから取り換える必要がある。
すぐに現場に行くことを先輩はモットーとしているが、市役所としても市民から水が出ないと言われ、すぐに対応できホッとしている様子だった。若い職員は手押しポンプに触ったこともないから、「毎日使わないとダメになってしまうよ」と伝えた。彼は何度も柄を上下させ、水を地下から汲み上げる実感を噛み締めていた。
ボタンを押せば電気がつき、蛇口をひねれば水が出る。私たちは快適な暮らしに慣れ過ぎてしまった。コロナ禍で「出歩かない方がいい」「外食は控えた方がいい」「人と接しなければ感染しない」と学んだが、おかげで憂鬱な日々を送っている。これも日常になってしまえば、どうってこともないのかも知れない。
けれど残念ながら素敵な時間を過ごした経験があるから、我慢ばかりの日々には不満が貯まる。ボジョレーヌーヴォーの解禁日。カミさんとふたりだけではちょっと寂しいが、仕方ないからテレビ見ながらの「静かに会食」である。酒は大勢で、ワイワイバカ話しながら楽しく飲む方がいい。コロナはいつ収まるのだろう。
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