友々素敵

人はなぜ生きるのか。それは生きているから。生きていることは素敵なことなのです。

深いため息が出てしまった

2023年05月28日 18時46分32秒 | Weblog

 友だちに頼んで、Amazonで購入してもらった残りの1冊が今朝、届いた。歌集『キリンの子』である。「中古でもいい」と返事はしたものの、汚れていたらと心配だったが、フィルムでカバーされた新品だった。

 書籍の最後のページには、作者の名前やプロフィールが記されているのに、この本には「鳥居」としか書かれていない。「2歳の時に両親が離婚、小学5年の時には目の前で母に自殺され、その後は養護施設での虐待、ホームレス生活などを体験した女性歌人」と紹介されている。

 「義務教育もまともに受けられず、拾った新聞などで文字を覚え、短歌についてもほぼ独学で学んだ」とある。短歌は彼女の体験を綴ったもので、口語歌が多いから分かりやすいが、余りにも悲惨な状況で悲しくなる。

 おそらく入水自殺を図ったのだろう、「入水後に助けてくれた人たちは『寒い』と話す 夜の浜辺で」。「死にきれず蛍光灯を見つめており動けないままエタノール嗅ぐ」。「夜だけはみんな死んでた夜だけはひとり起きてた(夜だけが味方)」。

 亡くなったお母さんの歌では、「サインペンきゅっと鳴らして母さんが私のなまえを書き込む四月」。「味噌汁の湯気やわらかくどの朝も母はわれより先に起きていて」。「泣いたってよかったはずだ母はただ人参を切るごぼうを洗う」。「副作用に侵されながら米を研ぎ、とぎつつ呻くあの人は母」。

 昨夜、テレビで観た映画『ギルバート・グレイプ』も悲惨だった。アメリカのアイオワ州の小さな町の4人家族の物語だった。知的障害の弟と、夫が首吊り自殺して以来、家に籠ってしまい過食症で250キロもある母と、ふたりの姉妹の生活を支える青年ギルバート。出口が全く見えない絶望的な日々が続く。知的障害の弟の18歳の誕生日を目前にして、母親は亡くなるが、巨体は動かすことが出来ない。家ごと燃やして弔う。母が居なくなり、姉妹も旅立ち、ギルバートも弟を連れて旅に出る。

 重いアメリカ映画を2週連続で観た後で、さらに悲惨な短歌に出会い、深いため息が出てしまった。

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