「立てばシャクヤク、座ればボタン、歩く姿はユリの花」。ルーフバルコニーの鉢植えのシャクヤクが花開いた。でも、どうして昔の人は、美人をこれらの花に譬えたのだろう。シャクヤクは大きくなるが見上げるほどではない。
ボタンはシャクヤクと変わらない背丈だと思うが、座っているようには見えない。ユリは確かに清楚で、風に揺らめくと色っぽい気がする。けれど、シャクヤクもボタンもユリも漢方薬の原料と聞いて納得した。
美しい花の根なら、治療に効果あるように思えてしまう。カミさんはすっかり元気になった。保険の見直しで悩んでいた上に、ゴールデンウィークに娘たちの家族がやって来て、寝具の準備や風呂や掃除、食事の用意でヘトヘトになっていた。
けれど、一番の気がかりは保険の見直しだったようで、寝ていても目が覚めてしまい、「私が心配なのはね」と私に話し出す。こんな状態が続くようなら、こちらまで眠れなくなりそうだ。昨日は連絡がつかなかったが、今朝、彼女の方から電話をくれた。
「娘たちは断れと言うので、見直しは致しません」と話すと、「娘さんたちに立ち会ってもらいましょう」と言うので、「その必要もありません。いろいろありがとうございました」と言って、電話を切った。「見直しは断ったよ」とカミさんに伝えると、顔つきが変わった。
カミさんは新聞を見ながらウトウトしている。「フトンに入って休んだら」と言うと、2時間も眠った。「何だかスッキリした」と、晴れやかな顔で起きて来た。月曜日は曾孫も熱を出した。ゴールデンウィーク中、あっちこっちと連れ回され、興奮の日々だったから疲れが出たのだろう。
「立てばシャクヤク、座ればボタン、歩く姿はユリの花」。そんな美人に出会いたいものだと、元気になったカミさんを見て思う。オットットト、カミさんの雷が落ちてきそうだ。