年に一度、娘夫婦と孫が顔を見せにやってくる。99歳の誕生日を迎えた義母の見舞いもかねている。義母も来てくれてうれしいと言うが、そんな気持ちもほんの一瞬だ。すぐに忘れて、別の話題に移る。その話題も、一度口にした言葉の繰り返し。老いるとことのひとつの姿をまざまざと見せてくれる。
空は晴れ。初夏のように気候から一転して、肌寒い普通の早春の季節だ。福寿草が花の蕾をふくらませて、早朝の散歩を促してくれる。99歳の義母の誕生時をことおいで、開こうとしているのかも知れない。春の木々は実に力強い。数日前に堅い蕾だった桜の花芽は、芽鱗をこじ開けるように後退させ、緑色の内側の部分が見え始めている。
孫が来てもそれほど話があるわけでもない。元気な様子を確認し、話のはしばしに成長のあとを確認する。それだけで満足である。温泉であたたまり、皆で囲む田舎料理で、故郷の食材のうん蓄を傾ける。こうして年に一回束の間の機会を持つことに喜びを感じる。ラインの返事は、「10時出発だよ!」
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