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みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0390「彼のつぶやき」

2018-11-25 18:00:28 | ブログ短編

 彼は、私の顔(かお)を見てぽつりと言った。「残念(ざんねん)だなぁ」
 聞こえないように言ったつもりだろうけど、私にはちゃんと聞こえてますから。すかさず私は、「何よ。言いたいことがあるんだったらはっきり言って」
 彼はとぼけて、「えっ、なに?」て笑(わら)って誤魔化(ごまか)して、水割(みずわ)りを口にする。
 私は、彼が何を考えてるのか今ひとつつかめない。彼の方から付き合ってくれって言ったくせに、ほんとに私のこと好きなのかな? この間だって、似(に)たようなことがあった。その時は、イマイチって言ったのよ。私は聞こえないふりをしたけど、心の中ではザワザワ、モヤモヤで…。今日こそハッキリさせてやる。私は微笑(ほほえ)みかけて、
「今、私の顔を見て言ったよね。残念だなぁって」
「いや、そんなこと言ってないよ。君(きみ)の空耳(そらみみ)じゃないのかなぁ」
「空耳のワケないでしょ。私の何がいけないの? ちゃんと言ってよ」
「別にそんなことは…。いやぁ、君は、そのままでいいと思うよ。服(ふく)だって似合(にあ)ってるし、その髪型(かみがた)もバッチリじゃない。僕(ぼく)が口をはさむことなんて…」
「じゃあ、教えて。あなたの好みの女性はどんなタイプなのか。私とは真逆(まぎゃく)なんじゃない?」
 彼は何か言いたげな素振(そぶ)りを見せたが、私から視線(しせん)をそらすとため息(いき)をついた。
 これって、どういうこと? 私は、ますます彼のことが分からなくなった。
<つぶやき>相手(あいて)の好(この)みに合わせるか、それとも相手の好みを変えるのか。どっちがいい?
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0389「馴れ初め」

2018-11-24 18:41:22 | ブログ短編

 交番(こうばん)のお巡(まわ)りさんは顔をしかめて唸(うな)り声を上げた。
「それは、事件(じけん)とかじゃないかもしれませんねぇ。出てっただけじゃ…」
「そんなことありません」女性は必死(ひっし)だった。「彼があたしから逃(に)げるなんて、ないです」
「でもね、彼の荷物(にもつ)もなくなってるんですよね?」
「だから、彼は誘拐(ゆうかい)されたんです。早く探(さが)してください。彼にもしものことがあったら、あたし…」彼女はハンカチを目に当てた。
 お巡りさんはしばらく考えていたが、「じゃ、その彼の名前(なまえ)と勤(つと)め先(さき)を教えてください」
 女性は困(こま)ったような顔をして、「あたし…、知らないんです。彼のこと…」
「えっ? その人と一緒(いっしょ)に暮(く)らしてたんじゃ?」
 お巡りさんはまた顔をしかめて、「で、その彼とはいつ、どこで知り合ったんですか?」
 女性はうつむきながら、「それが、おととい、道(みち)で倒(たお)れてたんで…。家へ連(つ)れて帰って…」
「あのね、捨(す)て猫(ねこ)じゃないんだから、知らない人を家に入れない方がいいと思うよ」
「でも、とっても礼儀正(れいぎただ)しくて、こんなあたしでも優(やさ)しくしてくれて…。あたし、これは運命(うんめい)だって思ったんです。彼は、あたしと出会(であ)うために…」
 お巡りさんは事務的(じむてき)な口調(くちょう)で言った。「じゃ、一度家に帰って、盗(と)られた物がないか確認(かくにん)してください。もしあれば、被害届(ひがいとどけ)を出してもらって…。いいですか?」
<つぶやき>運命的な出会いって、あるんでしょうか? 気づかないだけで、あるかもね。
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0388「ねこの話」

2018-11-23 18:03:10 | ブログ短編

 彼はしたたかに生きていた。彼の行動範囲(こうどうはんい)はかなり広い。確(たし)かめた人はいないが、彼はいくつものねぐらを持っていた。そして、訪(おとず)れる家ごとに違(ちが)う名前(なまえ)で呼(よ)ばれている。
 彼は、首輪(くびわ)をつけられることを良しとはしなかった。確固(かっこ)たる態度(たいど)で拒否(きょひ)し、受け入れることはない。彼は人間に媚(こ)びることもしなければ、愛想(あいそ)がいい方でもない。なのに、なぜか人間たちは彼を受け入れてしまう。
 彼には威厳(いげん)があった。他の猫(ねこ)とはまったく違う。彼は自分の生き方を貫(つらぬ)いていた。そんな彼でも、時には人間に寄り添(そ)うこともある。でも、よけいなことはしゃべらない。ただじっとそばに座(すわ)っているだけ。人間にとっては、それだけで充分癒(い)やされているようだ。
 彼はその日の気分(きぶん)で居場所(いばしょ)を変える。自由(じゆう)気ままに生きているように見えるのだが、猫の世界(せかい)にもいろいろなことがある。彼は争(あらそ)いを好(この)まない。どんな猫や犬(いぬ)にも寛容(かんよう)だ。だが、闘(たたか)いをしかけてくる相手(あいて)には全力(ぜんりょく)で立ち向かう。
 彼は知っていた。いつか自分にも訪(おとず)れる老(お)いというものを。彼は散(ち)りぎわを心得(こころえ)ていた。その時が来れば、彼は静かに自分の場所を譲(ゆず)るだろう。そして、人間たちの前からを姿(すがた)を消(け)すのだ。彼は人間に看取(みと)られることを望(のぞ)まない。最後(さいご)まで、猫としての生き方を貫き通す。猫の中の猫なのだから。
<つぶやき>感情(かんじょう)を持っている生き物は、人間だけじゃないのかもしれません。猫にも…。
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0387「窓」

2018-11-22 18:38:06 | ブログ短編

 通(とお)りを隔(へだ)てた家の二階の窓(まど)。その窓にはカーテンがかけられていた。以前(いぜん)はもっと鮮(あざ)やかな色だったのだろうが、今は陽(ひ)に焼けて淡(あわ)いピンク色になっている。
 そのカーテンがわずかに開(あ)いているのを見つけたのは、彼女がここへ越(こ)して来て一ヵ月もたたない頃(ころ)だ。確(たし)かにちゃんと閉(し)まっていたはず。そう彼女は記憶(きおく)している。それ以来(いらい)、何だか気になりはじめ、部屋から外(そと)を見るたびにその窓を見てしまう。そして、彼女はそこから誰(だれ)かが覗(のぞ)いているような、そんな視線(しせん)を感じるようになった。
 その家は、どうやら空(あ)き家(や)のようだ。庭(にわ)は荒(あ)れ放題(ほうだい)で、夜も灯(あか)りがつくのを見たことがない。人の出入りだって…。だから、誰かがそこにいるはずはないのだ。
 友だちが遊(あそ)びに来たとき、彼女はそのことを話した。
「ホントなのよ。あの窓のカーテン、少しずつ開(ひら)いてる気がするの。あたし、写真(しゃしん)だって毎日撮(と)ってるのよ。ねえ、一緒(いっしょ)に見てくれない? あたし一人じゃ恐(こわ)くて」
 彼女はカメラを手に取ると、最初から日付順で画像(がぞう)を出して行く。彼女が言うように、カーテンが動いているようには見えない。「これが最後よ。今朝(けさ)撮ったのだけど…」
 彼女はカメラのボタンを押(お)す。出て来た画像を見た彼女は、小さな叫(さけ)び声をあげてカメラを投(な)げ捨(す)てた。そこにはカーテンが開けられた窓があり、少女が微笑(ほほえ)みかけていた。
 彼女は震える声で、「嘘(うそ)よ。あたし…。カーテンなんか、開いてなかったわ」
<つぶやき>世の中には不思議(ふしぎ)な事があるのです。でも、あまり詮索(せんさく)しない方がいいかも。
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0386「別れなさい2」

2018-11-21 18:17:38 | ブログ短編

 幸奈(ゆきな)はウエイトレスに紅茶(こうちゃ)を頼(たの)むと、貴子(たかこ)の方に微笑(ほほえ)みかけて言った。
「そうね。先輩(せんぱい)の部屋に来る女はいるわ。でも、そんなの、すぐいなくなるから」
「えっ? 何で、そんなこと…」
「偶然(ぐうぜん)なんだけど、あたしの部屋の隣(となり)が、先輩の部屋なんだ。もう、ビックリしちゃった。今朝(けさ)も、先輩のとこ覗(のぞ)いてみたら、まだぐっすり眠(ねむ)ってたわ」
 顔をこわばらせている貴子を見つめて、幸奈はかすかに笑(え)みを浮(う)かべた。
「あら、どうしたの? 心配(しんぱい)しないで。先輩は来ないわよ」
「あなた、何をしたの? 彼に…」
 貴子は店を出ようと立ち上がった。しかし、幸奈は貴子の手をつかんで引き戻(もど)す。
「まだ話は終(おわ)わってないわよ。もう、せっかちさんなんだから」
 幸奈の言葉(ことば)は温和(おんわ)に聞こえるが、顔は無表情(むひょうじょう)で鋭(するど)い目つきで貴子を見つめていた。貴子は身体(からだ)が震(ふる)えた。まるで、ヘビに睨(にら)まれたカエルのように。
 ウエイトレスが紅茶を運んでくると、幸奈は何事(なにごと)もなかったように紅茶をすすった。
「それで、相談(そうだん)なんだけど。先輩と別れてくれない? お願い」
 貴子は震える声で答えた。「イヤよ。彼だって、あなたのこと好きになるはずない」
「あたしの部屋に前(まえ)住んでた人、どうしていなくなったか知ってる?」
<つぶやき>恐(こわ)いですね。前に住んでた人どうなったの? 考えただけで背筋(せすじ)が凍(こお)ります。
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