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みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0382「殺し文句」

2018-11-17 18:39:54 | ブログ短編

「ねえ、あたしのこと好き?」
 彼女はうるんだ瞳(ひとみ)でささやいた。気になる女性にそんなことを言われたら、男は単純(たんじゅん)だ。まだ〈好きかも?〉って段階(だんかい)でも、その気になってしまう。
 彼女はここぞとばかりに、次の手を打ってきた。甘(あま)えるような声で、
「ね~ぇ、お願(ねが)いしたいことがあるんだけど…」
 ここで断(ことわ)ることのできる男がどれだけいるだろう。一応(いちおう)、話を聞いてあげるのが礼儀(れいぎ)というものだ。ほんと、男って単純(たんじゅん)な生き物だ。それが罠(わな)だと気づかない。
「あたしと、デートして下さらない?」
 女性からこんな誘(さそ)いがきたら、もう尻込(しりご)みなんてしてる場合(ばあい)じゃない。
「あたし、行きたいところがあるんだけど、連れてって。お・ね・が・い」
 これで完全(かんぜん)に男は女の言いなりだ。もう彼女から逃(のが)れる術(すべ)はない――はずだった。
「こんな時間までお仕事(しごと)ですか? 大変(たいへん)ですねぇ」男は動揺(どうよう)する素振(そぶ)りもなく言った。そして、彼女が乗り込んだのを確認(かくにん)するとドアを閉めた。
 彼女はため息(いき)をついて、「あの…、カードって使えます? ちょとお金が足(た)りないかも…」
「ああ、いいっすよ。で、どちらまで行きましょう?」
<つぶやき>ダメですよ、こんなことしちゃ。一番大切(たいせつ)だと思える人に使いましょうね。
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