通(とお)りを隔(へだ)てた家の二階の窓(まど)。その窓にはカーテンがかけられていた。以前(いぜん)はもっと鮮(あざ)やかな色だったのだろうが、今は陽(ひ)に焼けて淡(あわ)いピンク色になっている。
そのカーテンがわずかに開(あ)いているのを見つけたのは、彼女がここへ越(こ)して来て一ヵ月もたたない頃(ころ)だ。確(たし)かにちゃんと閉(し)まっていたはず。そう彼女は記憶(きおく)している。それ以来(いらい)、何だか気になりはじめ、部屋から外(そと)を見るたびにその窓を見てしまう。そして、彼女はそこから誰(だれ)かが覗(のぞ)いているような、そんな視線(しせん)を感じるようになった。
その家は、どうやら空(あ)き家(や)のようだ。庭(にわ)は荒(あ)れ放題(ほうだい)で、夜も灯(あか)りがつくのを見たことがない。人の出入りだって…。だから、誰かがそこにいるはずはないのだ。
友だちが遊(あそ)びに来たとき、彼女はそのことを話した。
「ホントなのよ。あの窓のカーテン、少しずつ開(ひら)いてる気がするの。あたし、写真(しゃしん)だって毎日撮(と)ってるのよ。ねえ、一緒(いっしょ)に見てくれない? あたし一人じゃ恐(こわ)くて」
彼女はカメラを手に取ると、最初から日付順で画像(がぞう)を出して行く。彼女が言うように、カーテンが動いているようには見えない。「これが最後よ。今朝(けさ)撮ったのだけど…」
彼女はカメラのボタンを押(お)す。出て来た画像を見た彼女は、小さな叫(さけ)び声をあげてカメラを投(な)げ捨(す)てた。そこにはカーテンが開けられた窓があり、少女が微笑(ほほえ)みかけていた。
彼女は震える声で、「嘘(うそ)よ。あたし…。カーテンなんか、開いてなかったわ」
<つぶやき>世の中には不思議(ふしぎ)な事があるのです。でも、あまり詮索(せんさく)しない方がいいかも。
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