みけの物語カフェ ブログ版

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1442「神対応」

2024-01-11 18:16:57 | ブログ短編

 彼女がそれに気づいたのは、つい最近(さいきん)のことだ。見えないはずのものが見えてしまう。よくある話なのだが、彼女の場合(ばあい)はちょっと違(ちが)っていた。
 彼女が見えてしまうのは神(かみ)さま…。しかも、どういうわけか、神さまは彼女に愚痴(ぐち)をこぼすのだ。人間(にんげん)たちへの不満(ふまん)や憤慨(ふんがい)をぶちまける。普通(ふつう)の人なら耳(みみ)をふさぎたくなるような話しだ。でも彼女は生まれつき優(やさ)しい性格(せいかく)なので、親身(しんみ)になって聞いてあげていた。
 それで気に入られてしまったのか、日を追(お)うごとに現(あらわ)れる神さまが増(ふ)えていった。ついには行列(ぎょうれつ)ができるくらいに…。仕事中(しごとちゅう)でも神さまは話しかけてくる。これでは仕事が手につかない。でも、どういうわけか彼女の仕事がどんどん他(ほか)の人にまわされていく。きっと、これは神さまの仕業(しわざ)なのだろう。
 それから幾日(いくにち)も、彼女は寝(ね)る時間(じかん)を削(けず)って神さま対応(たいおう)を続(つづ)けていた。それでも、行列がなくなることはなかった。とうとう彼女は過労(かろう)で倒(たお)れてしまった。
 病室(びょうしつ)で寝ていると、見知(みし)らぬ女性が見舞(みまい)にやって来た。その女性は彼女に言った。
「ごめんなさいね。あなたには迷惑(めいわく)をかけてしまったわ」
 彼女は首(くび)を振(ふ)って、「いいえ。あたしは……。あの…どなたですか?」
 女性はそれには答(こた)えず、「もう、あなたのところへは誰(だれ)も行かせませんから。安心(あんしん)していいわよ。このお礼(れい)は必(かなら)ずするから、ゆっくり休(やす)んでね」
<つぶやき>この女性はいったい何者なのか…。神さまの元締(もとじ)めなのかもしれませんね。
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