男達を片(かた)づけるのにさほど時間はかからなかった。侍(さむらい)の男が強すぎたのか、それとも男達の方が口ばっかりで弱すぎたのかもしれない。男達は慌(あわ)てて車に乗り込むと、急発進(きゅうはっしん)で逃(に)げ出していった。その様子(ようす)を、侍の男は不思議(ふしぎ)そうに見つめていた。
助(たす)けられた女子高生は、恐(おそ)る恐る侍の男に近づいて…。だって侍姿(すがた)である。普通(ふつう)の人じゃないことぐらい誰(だれ)が見たって分かる。女子高生は後ろから声をかけた。
「あの…、助けていただいて、ありがとうございました」
侍の男は、彼女の声が聞こえているのかいないのか、何の反応(はんのう)もしめさない。彼女が近づこうと歩き出したとき、急に侍の男がバタリと倒(たお)れ込んだ。
これには彼女も驚(おどろ)いた。慌(あわ)てて男に駆(か)け寄ると、男の身体(からだ)を揺(ゆ)すりながら、
「大丈夫(だいじょうぶ)ですか? しっかりしてください。どこか、ケガとかしたんですか――」
彼女は突然(とつぜん)男に手をつかまれて、小さな悲鳴(ひめい)を上げた。男は彼女を見つめて、
「す、すまんが…、何か食(く)い物を持っておらんか。道に迷(まよ)ってしまってな、昨日(きのう)から何も口にしておらんのだ。お、お頼(たの)み申(もう)す」
彼女は呆気(あっけ)に取られてしまった。その時、男のお腹(なか)がグーッと鳴(な)った。彼女は、「ちょっと待ってて」と言って、コンビニへ駆け込んで行った。
<つぶやき>道に迷ったなんて、この男はどこから来たのでしょ。何でここに現れたのか。
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