みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0702「修業」

2019-11-01 18:22:55 | ブログ短編

「いいか、頭(あたま)を使うな。身体(からだ)で会得(えとく)するんだ。分かったな」
「はい…。でも、わたしは、掃除(そうじ)をするために来たわけじゃ…」
「口答(くちごた)えをするな! お前は、私に弟子入(でしい)りしたくて来たんじゃないのか? 師匠(ししょう)の命令(めいれい)は絶対(ぜったい)だ。もし嫌(いや)なら帰ってもらってもかまわないんだぞ」
「いえ…、やります。すいませんでした。わたし、がんばりますから…」
 男は彼女を残(のこ)して出て行った。彼女は、雑巾(ぞうきん)を絞(しぼ)ると廊下(ろうか)の雑巾がけを始めた。――しばらく掃除を続けていると、老人(ろうじん)がよろよろとやって来た。彼女を見て老人は言った。
「君(きみ)は、こんなところで何をしているんだね?」
「掃除ですよ。ここの、先生(せんせい)に言われて…。わたし、ここで修業(しゅぎょう)するために来たんです」
「先生? わしの知っている限(かぎ)り、ここで先生と言われているのは一人だけのはずだが」
「だから、その先生が…。あの、あなたも、ここで働(はたら)いているんですか?」
「ああ、もしかして君の言う先生というのは、真っ黒に日焼(ひや)けした身体の大きな…」
「はい、そうです。その方です。とても厳(きび)しい先生で、さっきも口答えするなって」
「それなら、ここの居候(いそうろう)だよ。掃除をするように言っておいたんだが、また逃(に)げ出したか」
「えっ、違(ちが)うんですか? そんな…、わたしはてっきり…」
「じゃ、後は頼(たの)んだよ。終わったら、お茶(ちゃ)をご馳走(ちそう)しよう。美味(おい)しい饅頭(まんじゅう)もあるからな」
 老人はそう言うと、奥(おく)の部屋へ入って行った。もしかして、この老人が…。
<つぶやき>何かを会得するためには、厳(きび)しい修業が必要(ひつよう)なんですね。楽をしていては…。
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