みけの物語カフェ ブログ版

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1459「侵される」

2024-05-27 18:05:12 | ブログ短編

 彼にはルーティンがあった。朝(あさ)起きたときとか、出かけるときとか、自分(じぶん)で決(き)めた手順(てじゅん)を繰(く)り返す。そういうの誰(だれ)にでも多少(たしょう)はあると思う。でも、彼の場合は、そういうこだわりが他(ほか)の人より強(つよ)いようだ。几帳面(きちょうめん)すぎるのかもしれない。
 そんな彼の前に、見知(みし)らぬ女性が現れた。その彼女は、どういうわけか彼のことが好きになってしまったようだ。一目惚(ひとめぼ)れってヤツなのだろうか、彼女は彼にぐいぐいと迫(せま)っていった。そして彼の返事(へんじ)も聞かずに、彼女は彼と付き合うことになったと公言(こうげん)した。
 どうも彼女は押(お)しの強い女性のようだ。それに、かなり大らかな性格(せいかく)なのか…。彼は控(ひか)え目なところがあるので、どんどん彼女に押し切られていく。そして、彼は自分のルーティンを完全(かんぜん)に崩(くず)されてしまった。
 そして、とうとう彼女が彼の部屋(へや)へ――。これは、彼が誘(さそ)ったわけではない。彼女が無理(むり)やり約束(やくそく)させたのだ。ここへきて、彼の我慢(がまん)は限界(げんかい)を迎(むか)えた。自分の生活(せいかつ)の場(ば)まで侵(おか)されてはたまらない。彼は、今日こそはっきりさせようと決意(けつい)した。
 約束の日。待(ま)ち合わせの場所(ばしょ)で彼は彼女を待っていた。でも、約束の時間になっても彼女は現れなかった。彼は電話(でんわ)をかけてみた。電話に出た彼女はか細(ぼそ)い声で、
「ごめんなさい。ちょっと、風邪(かぜ)をひいたみたいで……」
 声(こえ)が途切(とぎ)れる。彼は思わず言ってしまった。
「住所(じゅうしょ)を教(おし)えてください。今から、そっちへ行くから…。僕(ぼく)が…助(たす)けます」
<つぶやき>これは、ほっておけませんよね。苦手(にがて)な人でも助けてあげないといけません。
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