みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0931「会計課」

2020-07-31 18:06:05 | ブログ短編

 廃工場(はいこうじょう)の入口(いりぐち)近くで、二人の男が人目(ひとめ)を避(さ)けるように身(み)を隠(かく)していた。若い方の男が、
「あの…、どうして僕(ぼく)なんかを…。僕は、刑事(けいじ)でもないし…」
「仕方(しかた)ないだろ。人手(ひとで)が足(た)りないんだよ。お前だって、警察官(けいさつかん)だろ? だったら…」
「でも、僕は会計課(かいけいか)で、あの、犯人(はんにん)を捕(つか)まえたこともないし、僕なんかじゃ…」
 廃工場の前に男がやって来た。辺りをうかがって工場の中へ入って行く。
「現(あらわ)れやがったなぁ。おい、行くぞ。ヤツを捕まえるんだ」
「えっ? でも、待って下さい。もし、中に大勢(おおぜい)いたらどうするんですか?」
「心配(しんぱい)ないって。ヤツは小者(こもの)だ。仲間(なかま)がいたとしても二、三人ってとこだ。行くぞ」
「でも、応援(おうえん)を呼(よ)んだ方がよくないですか? 僕たちだけじゃ…」
「お前、俺(おれ)の話し聞いてなかったのか? 人手が足りないんだよ。行くぞ。ついて来い」
 ――廃工場の前にパトカーが停まっていた。どうやら、犯人を逮捕(たいほ)したようだ。あの二人の男たちが、泥(どろ)まみれになって出てきた。刑事の方が声をかけた。
「お前、なかなかやるじゃないか。あそこで、犯人を投(な)げ飛(と)ばすなんて」
「もう…、必死(ひっし)だったんです。だって、僕の方に向かってくるんですよ。僕は…僕は…」
「よくやった。褒(ほ)めてやるよ。ところで…、クリーニング代って経費(けいひ)で落(お)ちないか?」
「無理(むり)です。落ちるわけないじゃないですか。僕は会計課ですよ」
<つぶやき>とんだことになってしまいましたね。でも、仕事はきっちりやらないとね。
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