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みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1004「その記憶」

2020-12-24 17:51:17 | ブログ短編

 あなたの記憶(きおく)は本当(ほんとう)に正(ただ)しいのでしょうか? その記憶、実際(じっさい)とは違(ちが)うのかもしれません。彼女も、そんな迷宮(めいきゅう)に迷(まよ)い込んでしまったようです。
「えっ、どういうことですか? 彼が、存在(そんざい)していないって…。そんなはずありません。だって、彼とはもう、一年以上(いじょう)付き合ってるんですよ」
 彼女は悲(かな)しくなって涙(なみだ)を浮(う)かべた。「彼とは別れることになったけど、まだあたし、彼のこと愛してるし…。忘(わす)れられないんです。会いたい…。別れたくなかったのに…」
 彼女の前に座っていた白衣(はくい)の男は、困(こま)った顔をして言った。
「ですから、その記憶は作られたものなんです。あなたは、我々(われわれ)の研究(けんきゅう)に――」
「なにを言ってるんですか? 研究って…、何のことですか?」
「どうやら、記憶が混乱(こんらん)しているようですね。あなたは、我々の実験(じっけん)の被験者(ひけんしゃ)になったんです。そして、あなたの希望(きぼう)で、恋人(こいびと)との記憶をつけ足(た)して――」
「そんな…、そんなはずありません。彼は、ちゃんといるんです」
「〈君(きみ)は、僕には重(おも)すぎるんだ。別れよう〉これが、彼の最後(さいご)の言葉(ことば)ですよね」
「どうして、知ってるんですか? あたしたちしか知らないはずなのに…」
 彼女は部屋を飛(と)び出した。彼女は鞄(かばん)からスマホを取り出して、彼に電話(でんわ)を…。でも、アドレスに彼の名前(なまえ)はなかった。何度見ても…。彼女は鞄にスマホを戻(もど)した。その時だ。鞄の中に彼女は見つけた。彼からもらったネックレスを――。
<つぶやき>これは、どういうこと? 彼は存在していたのか…。謎(なぞ)は深まるばかりです。
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