久(ひさ)しぶりに同期(どうき)の女性が集まった。新人研修(けんしゅう)で仲良(なかよ)くなったグループだ。だが、その中に一人だけ不思議(ふしぎ)ちゃんが隠(かく)れていた。初恋(はつこい)の話題(わだい)になったとき、
「あたしも、初恋は小学生の頃(ころ)でした。ものすごく好きになっちゃって」
「でもその頃って、好きっていうことが、まだよく分かってないんだよね。だから、先生とか好きになっちゃったりして――」
「ねえ、聞いて下さい」不思議ちゃんは一人で突(つ)っ走る傾向(けいこう)があるようだ。
「あたし、毎晩(まいばん)、一緒(いっしょ)に寝(ね)てたんですよ。もう、可愛(かわい)くって」
みんなは一瞬(いっしゅん)、彼女の方を見る。隣(となり)にいた女性が訊(き)き返した。
「ああ、それって縫(ぬ)いぐるみかなんかでしょ? よくあるパターンよね」
「違(ちが)います。その子ね、触(さわ)るとヌメヌメしてて、なかなかつかめなくって」
「ヌメヌメって…。絶対(ぜったい)、人じゃないよね。そう言うのは、初恋とは言わないのよ」
「でも、初めて好きになるのが初恋ですよね」
「もう、なに言ってんのよ。あなた、人を好きになったことないでしょ」
「ありますよ。見ます? ちゃんと写真(しゃしん)を撮(と)ってありますから」
彼女は携帯(けいたい)を取り出した。果(は)たして何が写(うつ)っているのか、みんなは固唾(かたず)を呑(の)んだ。
<つぶやき>ちゃんと男性が写っているといいのですが。初恋の相手(あいて)は何だったんでしょ?
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