マモル君は彼女から突然(とつぜん)別れを告(つ)げられた。その別れる理由(りゆう)を訊(き)いてみると、
「だって、普通(ふつう)すぎるんだもん。もっとさぁ、何かないの?」
「普通って何だよ。そりゃ、確(たし)かに僕(ぼく)は運動(うんどう)も苦手(にがて)だし、勉強(べんきょう)だってそんなに…」
「あたしさぁ、前(まえ)付き合ってた人が頭(あたま)良すぎたの。だから今度は普通がいいかなって」
「えっ? そんなんで、僕に告白(こくはく)したのかよ。僕のこと好きなんじゃ…」
「う~ん、好きになるかなって思ったんだけど。やっぱ、無理(むり)みたい」
「何でだよ。僕たち、付き合い始めて二日目だろ。まだ、僕のこと何にも――」
「あのね、あたし、よく考えてみたの。この先(さき)あなたと付き合って、何か楽しいことあるかなって。でもね、何にも思いつかなかったわ。だから、別れましょ」
マモル君の中で何かが切(き)れた。彼はいきなり彼女の腕(うで)をつかむと、ぐいぐいと歩(ある)き始めた。彼女はされるがままに、引きずられるようについて行く。
「ねえ、どこに行くのよ。あたし、これから――」
「いいから、ついて来いよ。これから楽しいことするんだから」
「イヤよ。ちょっと離(はな)して。あたし、帰る」
この後、二人の姿(すがた)は小さな農園(のうえん)にあった。意外(いがい)にも、彼女はとても楽しそうだ。大根(だいこん)を引きぬきながら、笑顔を見せてはしゃいでいた。
<つぶやき>普通って何でしょう。みんなそれぞれ違(ちが)って、いろんな人がいるから面白(おもしろ)い。
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