みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0072「幸せの基準」

2017-09-17 19:22:09 | ブログ短編

 加代子(かよこ)は行き詰(づ)まっていた。人生(じんせい)の選択(せんたく)にことごとく失敗(しっぱい)して、生きる気力(きりょく)さえなくしていた。人づてによく当(あ)たる占(うらな)い師(し)のことを知って、彼女は訪(たず)ねてみた。
 その占い師は八十路(やそじ)を越(こ)えた老人(ろうじん)だった。温和(おんわ)な顔立(かおだ)ちの老人は、嫌(いや)な顔をするでもなく彼女を招(まね)き入れて、「私は、占い師じゃないんですよ。ただ、話をするだけです」
「そんな…」加代子は落胆(らくたん)の顔をして、「よく当たるって聞いてきたんですよ」
「こんな年寄(としよ)りですが、よろしければ、お話しをうかがいますが」老人は優(やさ)しく微笑(ほほえ)んだ。
 この老人からは不思議(ふしぎ)なオーラが出ていた。加代子は身(み)も心も軽(かる)くなるような、何か暖(あたた)かなものに包(つつ)まれているような気がして、心に溜(た)まっていたものを吐(は)き出した。
 老人は彼女の話を聞き終わると、「大変(たいへん)でしたね。よく、がんばりました。でも、あなたの選択は本当(ほんとう)に間違(まちが)っていたんでしょうか。あなたはまだお若(わか)い。そんなことを考えるのは、ずっと先でもいいんじゃないんですか。ご主人のことだってそうです。二人三脚(ににんさんきゃく)ですよ。お互(たが)いに助(たす)け合い、補(おぎな)い合って愛情(あいじょう)を育(そだ)てていくんです」
「でも、あの人は私のことなんか…。どうでもいいんです」
「あなたはどうですか? もう、愛せなくなってしまったのですか?」
「私は…。分からない。どうしたいのか分からないんです」
「今の気持(きも)ちをご主人(しゅじん)に話してみたらどうですか。何か変わるかもしれませんよ」
<つぶやき>人生は人それぞれ。失敗もありますよ。でも、人は学(まな)ぶことができるはず。
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