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みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1225「しずく160~拉致る」

2022-04-01 17:33:10 | ブログ連載~しずく

 川相琴音(かわいことね)は、初音(はつね)の手を振(ふ)り払(はら)うと一撃(いちげき)を与(あた)えた。初音は手すりまで飛(と)ばされてしまった。琴音はゆっくりと初音に近づきながら言った。
「あら、まだこんなとこにいたの? 逃(に)げなって言ったでしょ」
 初音は体勢(たいせい)を立て直(なお)すと、「琴音、何しに来たのよ」
「ほんと…。姉(ねえ)さんはバカなの? わたしには勝(か)てないって分かってるはずでしょ」
 その時、もうひとり女学生(じょがくせい)が現(あらわ)れた。その女学生は、初音を見て不気味(ぶきみ)な笑(え)みを浮(う)かべた。そして、うずくまっている日野(ひの)あまりの方へ歩いて行く。
 初音は叫(さけ)んだ。「逃げて! 早く逃げて!」
 あまりは立ち上がるのが精一杯(せいいっぱい)だった。足がすくんで動くことができないのだ。初音は、テレパシーで助(たす)けを求(もと)めた。次の瞬間(しゅんかん)、初音の目の前に琴音が現れた。
「よそ見しないでよね。あなたの相手(あいて)はわたしなんだから」
 琴音は、初音の首(くび)に手をかけると締(し)め上げた。初音は何とか逃(のが)れると、あまりを助けに向かった。だが、琴音はそれを許(ゆる)さなかった。
 女学生は、その姿(すがた)を変えた。その女はエリスだった。エリスは、あまりを手すりまで追(お)いつめた。そして、あまりの胸(むな)ぐらをつかむとささやいた。
「一緒(いっしょ)に来てもらうわよ。あなたに頼(たの)みたいことがあるの。断(ことわ)ったら、命(いのち)はないわよ」
<つぶやき>助けは来てくれるの? このまま、あまりは拉致(らち)されてしまうのでしょうか。
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1220「しずく159~お弁当」

2022-03-22 17:35:18 | ブログ連載~しずく

 朝の烏杜高校(からすもりこうこう)。登校(とうこう)してくる生徒(せいと)たちが校門(こうもん)を入って校舎(こうしゃ)へ向かっていた。その中に、日野(ひの)あまりの姿(すがた)があった。少し離(はな)れて、彼女の後(あと)をつけていく人影(ひとかげ)が――。彼女はそれに気づいていないようだ。
 午前中(ごぜんちゅう)の授業(じゅぎょう)が終わると、あまりはお弁当(べんとう)を手にこっそりと屋上(おくじょう)へ向かった。屋上へ出るのは禁止(きんし)されているのだが、先輩(せんぱい)の水木涼(みずきりょう)からたまに行っていることを聞かされていたのだ。それ以来(いらい)、彼女もここを利用(りよう)することがあった。ここなら、誰(だれ)にも邪魔(じゃま)されずにいられるからだ。
 あまりが景色(けしき)を見ながらのんびりお弁当を食べていると、誰かが彼女の後(うしろ)に現(あらわ)れた。それは、川相初音(かわいはつね)だ。突然(とつぜん)、初音が声をかけたので、あまりは危(あや)うくお弁当を落としそうになった。初音は、あまりの隣(となり)に座(すわ)ると言った。
「一人でお弁当を食べるなんて、淋(さび)しくないの? あたしが付き合ってあげるよ」
 初音は売店(ばいてん)で買ってきたパンを出して食べ始めた。あまりは恥(は)ずかしそうに、
「あの…、先輩…。どうして、ここに…?」
「ああ…。気にしないで。あたしも、たまに来てるのよ。これ、誰にも言わないでね」
 初音は何かを感知(かんち)したのか、あまりを突(つ)き飛(と)ばすと姿を消(け)した。次の瞬間(しゅんかん)、二人のいた場所(ばしょ)に川相琴音(ことね)が現れた。すぐに、初音は琴音の背後(はいご)に姿を見せて琴音を掴(つか)んだ。
<つぶやき>あまりを守(まも)ることができるのか? 姉妹(しまい)の戦いが再び始まろうとしています。
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1215「しずく158~開戦前」

2022-03-12 17:52:55 | ブログ連載~しずく

「総理(そうり)、つけ心地(ごこち)はいかがでしょうか?」執務室(しつむしつ)で小暮(こぐれ)が言った。
「ああ…。まぁ、腕時計(うでどけい)みたいなものだから気にはならないがねぇ。しかし、本当(ほんとう)に必要(ひつよう)なことなのかね? わしには、やり過(す)ぎとしか思えんが…」
「これは勝手(かって)に取り外しができないようになっていますので、本人(ほんにん)の証明(しょうめい)になります。それに所在(しょざい)の確認(かくにん)も容易(ようい)です。報告(ほうこく)によると、姿(すがた)を変えられる能力者(のうりょくしゃ)がいるということなので、その侵入(しんにゅう)を防(ふせ)げるはずです。総理の安全(あんぜん)のためには――」
 ドアがノックされて、権藤(ごんどう)が神崎(かんざき)を連れて入って来た。小暮が言った。
「神崎さん、お待ちしておりました。どうぞ、こちらへ」
 神崎がソファに座ると、総理がゆっくりと彼の前に座って言った。
「すまなかったね。君(きみ)たちが信用(しんよう)に値(あたい)するかどうか知りたかったんだ」
 神崎は緊張(きんちょう)した面持(おもも)ちで、「そ、そうでしたか…。私たちは、この国のために――」
 小暮が口を挟(はさ)んだ。「ところで、黒岩(くろいわ)がどこにいるかご存知(ぞんじ)ないですか? 実(じつ)は、姿を消(け)してしまいまして。今、捜索(そうさく)をしているところなんです」
 神崎は何かを合点(がてん)したように、「私は、何も…。黒岩が何かを企(たくら)んでいると…?」
 小暮は小さく肯(うなず)いて、「黒岩は何人も能力者を使っているようで、こちらもその対応(たいおう)に苦慮(くりょ)しています。そこで、あなた方に協力(きょうりょく)していただきたいのです」
<つぶやき>これから何が起こるのか。しずくたちも、巻(ま)き込まれていくことになるかも。
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1210「しずく157~計画延期」

2022-03-02 17:46:06 | ブログ連載~しずく

 黒岩(くろいわ)を前に、側近(そっきん)のひとりが何か報告(ほうこく)を伝(つた)えていた。黒岩は苦々(にがにが)しい顔つきで言った。
「なぜだ! なぜこのタイミングで総理(そうり)の警備(けいび)が強化(きょうか)されたんだ?」
「それは、分かりませんが…。総理の周りにはいつも護衛(ごえい)がついていて、特別(とくべつ)な装置(そうち)を身につけた者しか近づけなくなっていると。こうなっては、計画(けいかく)は延期(えんき)するしか…」
「今まで何の危機感(ききかん)も持っていなかった連中(れんちゅう)が、どうしてだ? なぜ警備を厳重(げんじゅう)にしたのか、送り込んでいる工作員(こうさくいん)に調(しら)べさせるんだ」
「分かりました。しかし、情報統制(じょうほうとうせい)がされているようで時間がかかるかもしれません」
「何を悠長(ゆうちょう)なことを。我々(われわれ)の計画が漏(も)れているかもしれないんだぞ!」
 そこへ、女がやって来た。黒岩は女を見て言った。
「エリスか、ご苦労(くろう)だった。神崎(かんざき)の娘(むすめ)を手に入れることができなかったのは残念(ざんねん)だったが…。まあ、いい。さて、君(きみ)には総理になってもらうつもりだったが、しばらく延期することにした。どうやら、我々の中にネズミが入り込んでいるかもしれない。それを見つけるには、人の心を読(よ)むことができる能力者(のうりょくしゃ)がいればいいんだが…。そんな能力(ちから)を持つ者は我々の中にはいないようだ」
 エリスは一瞬(いっしゅん)考えて、「たぶん…います。私に心当(こころあ)たりが…」
「ほう…」黒岩は興味(きょうみ)を示(しめ)して、「そいつを連れて来ることはできるかね?」
<つぶやき>これは、あまりのことでは…。今度は彼女が狙(ねら)われることになるのかなぁ?
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1205「しずく156~おかえり」

2022-02-20 17:41:55 | ブログ連載~しずく

 神崎(かんざき)つくねは目を覚(さ)ました。まだ朦朧(もうろう)としている。だんだん頭がはっきりしてくると、目の前に顔が並(なら)んでいたので思わず叫(さけ)び声を上げて飛び起きた。つくねは見回して、
「な、何なの? どうして――」
 いきなり月島(つきしま)しずくが抱(だ)きついて、「おかえり。ずっと待ってたんだからね」
 それがしずくだと分かると、つくねはしずくを引き離(はな)し、「もう、何するのよ。しずく、やっと目を覚ましたのね。あたし、あなたに言いたいことがいっぱいあるんだから…」
「目を覚ましたのはあなたの方よ。戻(もど)って来てくれて、ありがとう」
「戻って…? あたし……。そうだわ。あたし、あいつのところへ行って…」
「あなた、覚(おぼ)えてないの?」柊(ひいらぎ)あずみが訊(き)いた。
「何を…。あたし、どうしてここに…」ベッドの横に座(すわ)っているアキを見て、「あなた、どこかで……。ああっ、あなた、ハルちゃんね」
 アキはクスクス笑(わら)って、「残念(ざんねん)でした。あたしはアキよ」
「あっ、ごめん。でも、ずいぶん大人(おとな)びたわね。ハルちゃんは、一緒(いっしょ)じゃないの?」
 アキは自分(じぶん)の胸(むね)に手を当(あ)てて、「いるよ、ここに。わたしの中にちゃんと生きてるよ」
 つくねには何のことか分からないようだ。しずくが、そんな彼女を見て言った。
「おいおい話してあげるわよ。今は、ゆっくり身体(からだ)を休(やす)めて――」
<つぶやき>やっと戻って来ました。さて、これからの展開(てんかい)は…。どうすればいいんだ?
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