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みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1300「しずく175~新たな敵」

2022-09-01 17:34:06 | ブログ連載~しずく

 どこかで犬(いぬ)の吠(ほ)え声がする。水木涼(みずきりょう)は敵(てき)の気配(けはい)をつかみ取ろうとしていた。でも、あせればあせるほど集中(しゅうちゅう)することができない。突然(とつぜん)、足に痛(いた)みが走った。見ると、制服(せいふく)のスカートが切(き)れていて、足から血(ち)が流(なが)れていた。涼はたまらず膝(ひざ)をついた。
 涼は思わず叫(さけ)んだ。「誰(だれ)だ! 姿(すがた)を見せろ! 卑怯(ひきょう)なこと――」
 どこかから女の声がした。「能力者(のうりょくしゃ)なら見つけてみなよ。あんたのすぐそばにいるよ」
 涼はやみくもに腕(うで)を振(ふ)りまわした。だが、何の効果(こうか)もなかった。女の笑(わら)い声がして、涼は頬(ほお)に打撃(だげき)を受(う)けて倒(たお)れ込んだ。涼は、何とか這(は)って、また塀(へい)を背(せ)にする。もうどうすることもできない。涼は恐怖(きょうふ)で顔をゆがめていた。
 辺(あた)りは静寂(せいじゃく)に包(つつ)まれた。涼の荒(あら)い息(いき)が聞こえるだけ――。しばらくして、涼の近くで何かがぶつかる音がした。次の瞬間(しゅんかん)、涼の横(よこ)に誰かが姿を現して、耳元(みみもと)にささやいた。
「もう心配(しんぱい)ないわ。あたしが守(まも)ってあげるから」
 それは、川相初音(かわいはつね)だ。涼は、震(ふる)えながら初音に抱(だ)きついた。上の方から声がした。
「見つけたわ。あとは任(まか)せて」上空(じょうくう)にいた琴音(ことね)が地上(ちじょう)めがけて落ちて来た。
 琴音が手を振り下ろすと、電柱(でんちゅう)に亀裂(きれつ)が走った。すぐ近くに黒い影(かげ)が現れた。長い髪(かみ)を束(たば)ねた女だ。女は地上に降(お)りた琴音を睨(にら)み付けると、すぐに姿を消(け)してしまった。
 琴音は息を吐(は)くと呟(つぶや)いた。「何者(なにもの)なの? 今まで出会(であ)ったことのない能力者だわ」
<つぶやき>新たな敵が現れたのか…。ますます混迷(こんめい)を深(ふか)めていくような感じですよね。
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1295「しずく174~襲撃」

2022-08-22 17:33:43 | ブログ連載~しずく

 川相姉妹(かわいしまい)は、初音(はつね)の怪我(けが)が良くなるとみんなから離(はな)れて行った。アパートにも戻(もど)ることはなかった。水木涼(みずきりょう)とアキは、毎晩(まいばん)のようにあずみ先生(せんせい)から特訓(とっくん)を受けることになった。しずくとつくねは、交替(こうたい)で神崎(かんざき)の動きを探(さぐ)ることにした。
 一ヶ月近く、何事(なにごと)もなく過(す)ぎて行く。黒岩(くろいわ)たちも姿(すがた)を見せることはなかったので、しずくたちは学校(がっこう)の勉強(べんきょう)に励(はげ)んでいた。だが、心の中には緊張感(きんちょうかん)を絶(た)えずもっているようだ。
 ――それは、何の前触(まえぶ)れもなく訪(おとず)れた。いつものようにあずみ先生の特訓を終(お)えて、涼は夜道をひとりで自分のアパートへ向かっていた。アキは用(よう)があるからと先(さき)に帰ってしまったからだ。本当(ほんとう)に用事(ようじ)があるのかどうかは疑(うたが)わしい限(かぎ)りだ。アキは、特訓をするのを嫌(いや)がっていた。アキには戦闘(せんとう)に使える能力(ちから)はそれほどなかったからだ。
 もうすぐアパートに到着(とうちゃく)するところで、涼は背後(はいご)に何かの気配(けはい)を感じた。それは、だんだん近づいて来るようだ。涼は後ろを振(ふ)り返った。だが、そこには誰(だれ)もいなかった。気のせいだったのかと、また歩き出そうとしたとき、目の前の暗(くら)がりに人の姿を見つけた。
 涼は思わず身構(みがま)えた。その姿は突然(とつぜん)消えると、涼の目の前に現れて横を駆(か)け抜(ぬ)けた。涼の腕(うで)に痛(いた)みが走った。涼は思わず腕を押(お)さえた。腕から赤い血が滲(にじ)んでいた。涼は周(まわ)りを見回した。だが誰も見つけることができない。涼は、近くの塀(へい)を背(せ)にして立った。
<つぶやき>どうして涼が狙(ねら)われたのでしょう。川相姉妹はどこへ行ってしまったのか?
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1290「しずく173~疑惑」

2022-08-12 17:38:54 | ブログ連載~しずく

 日野(ひの)あまりが行方不明(ゆくえふめい)になって一週間がたとうとしていた。黒岩(くろいわ)たちの動きもなく、しずくたちには打(う)つ手はなかった。その間(あいだ)に、しずくは神崎(かんざき)を訪(たず)ねていた。神崎はしずくの協力(きょうりょく)を歓迎(かんげい)し、こう提案(ていあん)してきた。
「黒岩の所在(しょざい)はまだつかめていないようです。ですから、黒岩が見つかるまでは待機(たいき)していて下さい。黒岩逮捕(たいほ)のとき、彼の能力者(のうりょくしゃ)たちが邪魔(じゃま)に入るはずです。あなた方には、その能力者たちを撃退(げきたい)していただきたい」
 しずくはうなずくと、「分かったわ。でも、ひとつ教(おし)えてください。黒岩はどんな能力者を使ってるんですか? それが分かれば、こちらも助(たす)かります」
 神崎の返答(へんとう)には、新しい情報(じょうほう)は何もなかった。本当に知らないのか、それとも――。
 そこへ、研究員(けんきゅういん)が慌(あわ)ただしく入って来た。神崎はその研究員を制(せい)して、
「来客中(らいきゃくちゅう)だ! あとにしたまえ」
 研究員は、しずくを見てそそくさと部屋(へや)を出て行った。しずくは神崎に言った。
「何かあったんですか?」
「いや…。装置(そうち)の不具合(ふぐあい)の件(けん)でしょう。いまメンテナンスをしてましてね」
 しずくは神崎の表情(ひょうじょう)を見て、何かあるなと感じた。そこで、しばらく神崎を見張(みは)ることにした。黒岩が見つかるまでは、何もできることはないのだから…。
<つぶやき>これから何が待ち受けているんでしょ。あまりを見つけることはできるのか。
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1285「しずく172~迷い」

2022-08-02 17:33:09 | ブログ連載~しずく

 学校(がっこう)の屋上(おくじょう)――。柊(ひいらぎ)あずみは、月島(つきしま)しずくを連れ出した。空(そら)は曇(くも)っていて星(ほし)がまったく見えない。天気(てんき)が悪(わる)くなるのか、雨の匂(にお)いがしていた。
 あずみは真剣(しんけん)な顔で言った。「あなたは、何をやろうとしてるの? みんなに話すべきよ。そうでなきゃ、ばらばらになってしまうわ」
 しずくは、あずみから目をそらして答(こた)えた。「……。私、みんなを守(まも)りたいの。誰(だれ)も失(うしな)いたくない。もし…戦(たたか)いを始めたら、命(いのち)を落(お)とす人が出てしまうわ」
 あずみは昔(むかし)のことを思い出すように、「そうね。……前の戦いのとき、大勢(おおぜい)の人が犠牲(ぎせい)になったわ。私、ちょうどあなたぐらいの歳(とし)だったのよ。でも、私は迷(まよ)わなかったわ。戦うしかなかったの。何もしなかったら、生き延(の)びることなんかできなかった」
「分かってるのよ。しなきゃいけないことは…」しずくはあずみと向き合って、「神崎(かんざき)から手を組(く)みたいって言ってきてる。私、受(う)けようと思う」
 あずみは目を見開いて、「何を言ってるの? あいつらは信用(しんよう)できない。神崎がしてきたこと、あなただって知ってるでしょ。手を組むなんて無理(むり)よ」
「深入(ふかい)りするつもりはないわ。神崎との接触(せっしょく)は私が…。有益(ゆうえき)な情報(じょうほう)を集(あつ)めたいの。黒岩(くろいわ)の仲間(なかま)に、どんな能力者(のうりょくしゃ)がいるか分からないでしょ。きっと、まだ強力(きょうりょく)な能力者がいるはずよ。今のままでは、とても勝(か)つことなんかできないわ」
 雨がぽつぽつと降(ふ)り出してきた。二人は、ふと空を見上げた。
<つぶやき>失うもののことを考えてしまう。でも、その優(やさ)しさは戦いには邪魔(じゃま)なのか…。
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1280「しずく171~盛られる」

2022-07-23 17:40:23 | ブログ連載~しずく

 どこかのレストランなのか…。並(なら)んだテーブルには客(きゃく)の姿(すがた)はなかった。ただひとつだけ、灯(あか)りがついているテーブルがあった。そこに黒岩(くろいわ)が座(すわ)っている。
 黒岩は部下(ぶか)の男に小声(こごえ)で言った。「それで、始末(しまつ)したんだろうな?」
「それが、装置(そうち)との接続(せつぞく)が途切(とぎ)れてしまって…。申(もう)し訳(わけ)ありません」
「まぁいい。あいつら、姉妹(しまい)そろって使いものにならなかったなぁ」
 そこへ、どこからともなく黒いマントを着(つ)けた女が現(あらわ)れた。その黒ずくめの女は、黒岩に向かってため口で言った。
「あの二人と遊(あそ)んできちゃった。でも、あたしより弱(よわ)くて、がっかりよ」
 黒岩は不機嫌(ふきげん)になり、「また勝手(かって)なことを…。メイサ、お前はおとなしく洞窟(どうくつ)で待(ま)っていろ。必要(ひつよう)なときは、ちゃんと呼(よ)んでやるから」
「だって、つまんないんだもん。別にいいじゃない。あなたの邪魔(じゃま)はしないわ」
 メイサと呼ばれた女はどこかへ消(き)えてしまった。黒岩は部下に言った。
「じゃあ、こいつを連(つ)れて行ってくれ。あの装置(そうち)にかけて、能力(ちから)を最大(さいだい)にさせるんだ。それが終(お)わったら、洗脳(せんのう)して、チップを埋(う)め込んでおけ」
 黒岩の向かいの席(せき)を見ると、そこには日野(ひの)あまりの姿があった。食事(しょくじ)の中に薬(くすり)でも入れられていたのか、ぐったりと椅子(いす)にもたれて眠(ねむ)り込んでいた。
<つぶやき>この女が、あの幻覚(げんかく)を作ってたんだね。あまりを救(すく)い出すことはできるのか?
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