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みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1350「しずく185~潜入」

2023-01-21 17:24:17 | ブログ連載~しずく

 水木涼(みずきりょう)とアキは烏杜高校(からすもりこうこう)に到着(とうちゃく)した。正門(せいもん)は閉(し)まっているので休校(きゅうこう)なのだろう。
 アキは高い門を見て言った。「ねぇ、どうやって中に入るの?」
 とても乗(の)り越(こ)えることはできそうにない。それに、二人には飛(と)ぶ能力(ちから)はない。
 涼はにっこり微笑(ほほえ)んで、「こっちよ。抜(ぬ)け道を使いましょ」
 学校の裏(うら)は林になっていた。二人は歩道(ほどう)から低いフェンスを乗り越えて、その林に入っていった。道があるわけではないので、木の間(あいだ)をぬうように進んで行く。しばらく行くと、学校の境(さかい)の塀(へい)に突(つ)き当(あ)たった。塀に沿(そ)っていくと土が盛(も)り上がっているところが見えてきた。そこからだと楽(らく)に塀を乗り越えることができそうだ。アキは涼に訊(き)いた。
「どうして知ってるの? こんなところがあるのを…」
「それは、まあ…、いろいろとあるわけよ」涼は曖昧(あいまい)に返事(へんじ)を返して、「さあ、行きましょ」
 二人は塀を乗り越えて学校の敷地(しきち)に入った。校舎(こうしゃ)の裏手(うらて)にたどり着くと、開いている窓(まど)がないか確認(かくにん)していく。さすがに戸締(とじ)まりのしていない窓はなかった。
 校舎の玄関(げんかん)まで来て涼が呟(つぶや)いた。「ここは開いてるはずないよね」
 涼が扉(とびら)を引くと開いてしまった。涼は驚(おどろ)いて、「何だよ。無用心(ぶようじん)だなぁ」
 二人はゆっくり校舎の中へ入って行った。その時、千鶴(ちづる)からのテレパシーが届(とど)いた。
「三階の教室(きょうしつ)にいるわ。彼の他には誰(だれ)もいないみたい。気をつけてね」
<つぶやき>男の正体はいったい。これ以上(いじょう)人を増(ふ)やすと、もう分かんなくなっちゃうよ。
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1345「しずく184~見えない壁」

2023-01-06 17:40:50 | ブログ連載~しずく

 ここは市外(しがい)へ出る県道(けんどう)の一つ。自動車(じどうしゃ)が何十台も停(と)まっていて道を塞(ふさ)いでいた。どうやら通り抜(ぬ)けができなくなっているようで、集まっていた市民(しみん)たちは困惑(こんわく)しているようだ。
 そこへ、川相初音(かわいはつね)と琴音(ことね)が姿(すがた)を見せた。みんなの話を聞いていると、どうやら見えない壁(かべ)があるらしい。二人は、止まっている車の先頭(せんとう)へ向かった。そこにも大勢(おおぜい)の人たちが集まっている。壁の向こう側(がわ)にも人が集まっていて、両側(りょうがわ)の先頭の車は衝突(しょうとつ)で壊(こわ)れていた。
 二人は人の間をすり抜けて、見えない壁がある場所(ばしょ)に立った。手を出して前へ進んでいくと、何かにぶつかった。ふわふわしたもので、押(お)すと押し返してくる。これは一体(いったい)何なのか? 二人は顔を見合わせた。
 柊(ひいらぎ)あずみからテレパシーが届(とど)いた。初音は現在地(げんざいち)を伝(つた)えた。あずみたちと合流(ごうりゅう)するのにさほど時間はかからなかった。四人が壁の前に集まったとき、それは起こった。
 突然(とつぜん)、集まっている人たちが耳(みみ)をふさいでしゃがみ込んだのだ。四人もそれぞれに、耳鳴(みみな)りがして顔をしかめた。でも、すぐにそれはおさまった。その後、集まっていた人たちは、何事(なにごと)もなかったように無言(むごん)で引き返していく。これは異様(いよう)な光景(こうけい)だった。
 あずみは、その人たちの顔を見つめて呟(つぶや)いた。「これは、正気(しょうき)じゃない。操(あやつ)られてる」
 初音もそれに答(こた)えて、「そうね。でも、あたしが使う能力(ちから)とは違(ちが)うみたい。それに、これだけの人に能力(ちから)を使えるなんて…。そんな能力者(のうりょくしゃ)、いるのかしら?」
<つぶやき>強力(きょうりょく)な能力者が登場(とうじょう)するのかもね。しずくの行方(ゆくえ)も気になるところです。
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1340「しずく183~若い男」

2022-12-22 17:51:45 | ブログ連載~しずく

 水木涼(みずきりょう)とアキは、千鶴(ちづる)の指示(しじ)で昼食(ちゅうしょく)の準備(じゅんび)をしていた。みんながお腹(なか)を空(す)かせて帰って来るはずだから。二人とも手慣(てな)れた感じで働(はたら)いていた。アキがぽつりと涼に言った。
「今日は、学校へ行かなくてもいいの?」
 涼は一瞬(いっしゅん)考えて、「休校(きゅうこう)じゃないかなぁ。市内に入れないんじゃ、生徒(せいと)も集まれないし…。先生(せんせい)だって――。それに、うちらの担任(たんにん)、他(ほか)へ行っちゃってるしね」
 これはあずみのことだ。アキは、楽(たの)しそうにしている涼を見て可笑(おか)しくなった。千鶴はふと烏杜高校(からすもりこうこう)に目を向けた。千鶴は千里眼(せんりがん)が使えるのだ。
 千鶴は二人に聞こえるように言った。「そうね。学校は誰(だれ)もいないみたい」
 涼がそれを聞いて自慢気(じまんげ)に言った。「でしょ。私には何でも分かるんだからぁ」
「ちょっと待って…」千鶴が緊張(きんちょう)した声を上げた。「誰かいるわ。若い男ね。大きな荷物(にもつ)を持って…。あら、足に怪我(けが)をしてるみたい」
 涼がすかさず言った。「私、見てくるよ。ねぇ、いいでしょ?」
「そうねぇ。悪(わる)い人には見えないから…。そうだ、アキを連れて行って」
 アキは嬉(うれ)しそうにうなずくと、手際(てぎわ)よく必要(ひつよう)な物(もの)を鞄(かばん)に詰(つ)め込んだ。千鶴は涼に言った。
「私はここから見てるから。もし危険(きけん)なことがおきたら、アキをお願(ねが)いね」
「心配(しんぱい)ないよ。私がちゃんと守(まも)るから、大丈夫(だいじょうぶ)!」
<つぶやき>この若い男はいったい何者(なにもの)なのか? そして、これから何が起きるのか…。
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1335「しずく182~もぬけの殻」

2022-12-07 17:32:55 | ブログ連載~しずく

 みんなは手分(てわ)けをすることにした。川相初音(かわいはつね)と琴音(ことね)で市内の様子(ようす)を確認(かくにん)。柊(ひいらぎ)あずみは神崎(かんざき)つくねと神崎の研究所(けんきゅうしょ)を探(さぐ)りに行く。そして、千鶴(ちづる)は引き続きしずくの居場所(いばしょ)を見つけること。そして、アキと水木涼(みずきりょう)はここで待機(たいき)する。涼は、すぐに不満(ふまん)をもらした。
「何でよ。私にも、何かさせてよ。ここで待ってるだけなんて…」
 あずみが諭(さと)すように言った。「あなたは飛(と)べないでしょ。危険(きけん)なめにあったとき、誰(だれ)もあなたを助(たす)けには行けないのよ。もし、あたしたちに何かあったとき、あなただけが頼(たよ)りなんだから。お願(ねが)いよ、私の指示(しじ)に従(したが)って」
 涼はしぶしぶ肯(うなず)いた。四人はすぐに行動(こうどう)に移(うつ)した。千鶴はみんなを見送ると、
「さぁ、私たちも頑張(がんば)りましょう。自分(じぶん)のできることをしなくちゃね」
 ――あずみとつくねは研究所の前に来ていた。おかしなことに人の出入りがまったく無い。二人は研究所の中に入ってみることにした。入口の扉(とびら)は開いていた。扉を開けた正面(しょうめん)には受付(うけつけ)があるが、誰も座(すわ)っていなかった。それに、建物(たてもの)の中には人の気配(けはい)がないようだ。今朝の騒動(そうどう)で誰も来られないのか…。だとしても、一人もいないなんて――。
 二人は分かれて探ってみた。実験室(じっけんしつ)や所長室(しょちょうしつ)、他(ほか)のどの部屋(へや)ももぬけの殻(から)だ。
 あずみが言った。「やっぱり、黒岩(くろいわ)とつながってたんだわ。ここを引き払って、他の場所(ばしょ)に移ったとしか考えられない。ここはもういいわ、初音たちと合流(ごうりゅう)しましょ」
<つぶやき>神崎たちはどこへ消(き)えたのでしょう。そして、しずくを見つけられるのか?
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1330「しずく181~独立」

2022-11-22 17:27:00 | ブログ連載~しずく

 それは早朝(そうちょう)に起きた出来事(できごと)だった。始発(しはつ)の時間になっても電車(でんしゃ)やバスが運行(うんこう)されなかったのだ。それに、テレビやラジオの受信(じゅしん)、インターネットの接続(せつぞく)もできなくなっている。さらに、固定電話(こていでんわ)や携帯(けいたい)電話もつながらない。
 市民(しみん)が騒(さわ)ぎ始めた頃(ころ)、テレビのすべてのチャンネルに市長(しちょう)の顔が映(うつ)し出された。烏杜(からすもり)市長は、市民に向けて高揚(こうよう)した口調(くちょう)で言った。
「……突然(とつぜん)のことで驚(おどろ)かれていることと思います。私は、熟慮(じゅくりょ)を重(かさ)ねて、この決断(けつだん)を下しました。烏杜市は…、日本国からの独立(どくりつ)を宣言(せんげん)します。これより、市内全域(しないぜんいき)で警戒態勢(けいかいたいせい)に入ります。市外(しがい)への道はすべて封鎖(ふうさ)し、市内への出入りを規制(きせい)します。これは、烏杜国の独立を保(たも)つために必要(ひつよう)なことなのです。市民のみなさんは落ち着いた行動(こうどう)を――」
 ――あの場所(ばしょ)にみんなは集まっていた。千鶴(ちづる)がみんなを集めたのだ。みんなはテレビを見ながら、何が起きているのか理解(りかい)できないでいた。市長の話が終わると、突然、市長の後に人の姿(すがた)が現れた。みんなの目は釘付(くぎづ)けになった。それは、月島(つきしま)しずくだった。
 しずくは落ち着いた声で言った。「この国は、特別(とくべつ)な能力(のうりょく)を持った人たちの国です。我々(われわれ)は、能力者(のうりょくしゃ)たちを歓迎(かんげい)します。この国は、あなたたちの安全(あんぜん)を保証(ほしょう)します。あなたたちの能力をムダにしてはいけない。今すぐ行動(こうどう)を起こしてください」
 神崎(かんざき)つくねは憤慨(ふんがい)して言った。「これは、何なのよ! どうしてこんなこと…」
 柊(ひいらぎ)あずみはつくねを抱(だ)きよせて、「私たちで確(たし)かめましょう。何が起きているのか…」
<つぶやき>どうして、しずくがここにいるのか? これから何が起こるのでしょうか…。
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