徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

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書評:島田荘司著、『御手洗潔のダンス』(講談社文庫)

2018年11月17日 | 書評ー小説:作者サ・タ・ナ行

『御手洗潔のダンス』(1990)は御手洗シリーズ第5巻、2つ目の短編集で、収録作品は

  • 山高帽のイカロス
  • ある騎士の物語
  • 舞踏病
  • 近況報告
の4作。とはいえ「近況報告」は小説ではなく、御手洗潔ファンからの質問に答える意味で、御手洗潔の日常生活の報告がなされています。
 
「山高帽のイカロス」は、1982年、東武伊勢崎線浅草駅近くで、空を飛ぶ山高帽をかぶった男ばかりを描く画家赤松稲平が殺され、空中を飛ぶような格好で電線に乗っているところを発見され、また彼の別居中の妻が近くの発狂して発見され、彼女の秘書と車が行方不明となった謎を解く話です。画家が人には「空を飛ぶ」能力があると信じていたことの裏も暴かれるため、なんとなくファンタジーっぽく始まったストーリーもファンシーな部分は木端微塵に粉砕されてしまいます(笑)
 
「ある騎士の物語」は石岡氏が知り合いの結婚式で聞いてきた15年前(1960年代末)の武蔵野線沿線新秋津駅で起こった不思議な殺人事件を御手洗潔に報告し、後に犯人から告白の手紙が届いて真相が明らかにされるという構成で、御手洗潔の推理は本人によって披露されることはありません。はっきり言ってほとんど出番なしです。でも、彼が傲然と現れた渦中の女性の鼻っ柱をごきっとへし折って追い返すシーンは胸のすくような感じですね。報われない騎士の恋がちょっと気の毒な感じです。
 
「舞踏病」は1988年の浅草が舞台で、食堂を営む陣内家に突然大金を積んで1か月ばかり下宿させてくれと頼み込んで入居した老人が夜中になると狂ったように踊り出す話。その裏に潜む犯罪を御手洗潔がホームレスたちと酒を飲みながら調査して暴きます。
立場の弱い人たちには丁寧な態度、地位や権威をもって威張り散らす人たちにはぞんざいな態度で臨む御手洗潔の姿勢に非常に共感します。
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