徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

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書評:松岡圭祐著、『カウンセラー 完全版』(角川文庫)

2016年09月07日 | 書評ー小説:作者ハ・マ行

『カウンセラー 完全版』(角川文庫)は臨床心理士・嵯峨敏也を主人公とする『催眠』シリーズの第2弾(2008年)。

商品説明は:

カリスマ音楽教師を突然の惨劇が襲う。一家4人が惨殺されたのだ! 犯人は13歳の少年だった……。法で裁かれぬ少年への憎悪を抑えられない彼女の胸に、一匹の怪物が宿る。一線を超えた時、怪物は心を食い尽くす!臨床心理士・嵯峨敏也は犯罪の奈落に堕ちた彼女を、そして凶行の連鎖を止められるのか!!大ヒットシリーズ「催眠」の第2弾。徹底したリアリズムで書かれるサイコサスペンスの大傑作が、待望の完全版で登場!

となっています。

プロローグ「闇市」で、謎の女が戦後の闇市の時代から続いているというアメ横の武器闇商人からグロッグ17を購入する。次の章の話とは全くつながらないので、物語の中盤くらいになるまで、このエピソードがどの時系列に属するのかさっぱり分からないまま読み進むことになります。

「カリスマ音楽教師」こと響野由佳里は、絶対音感を持つばかりでなく、ピアノの演奏から演奏者の心情や生活まで読み取れるという特異な能力の持ち主という設定で、ちょっと≪徹底したリアリズム≫から外れてしまうと思うのですが、その彼女の特殊な能力ゆえに、問題のある子どもたちの更生に貢献し、文部科学省から表彰されるまでに上り詰めたが、表彰式のあったその晩に彼女の父母と二人の子どもが惨殺されてしまいます。しかも犯人は13歳の少年で、動機は「ムカついたから」。

これでは遺族は本当にやるせない。法で裁けないなら自分で復讐をしようと考えるまでは、とてもよく分かります。それを実際に実行に移す人は稀でしょうが、響野由佳里はそれを成し遂げ、高揚感に浸り、どんどん心が壊れていきます。彼女を助けようとする嵯峨敏也のことも拒絶します。

事態がどの辺に収束していくのか見えないので、ページを捲る手が止められない感じです。エンタメ性抜群のサスペンス小説と言えるでしょう。

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