徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

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書評:島田荘司著、『魔神の遊戯』(文春文庫)

2018年09月24日 | 書評ー小説:作者サ・タ・ナ行

『魔神の遊戯』は御手洗潔シリーズの16作目。舞台はスコットランド。まずはネス湖のふもとの小さな村ティモシー生まれで、母親を亡くした後に村から追い出されるように精神病院に入れられ少年ロドニー・ラーヒムが何十年後かにロンドンで「記憶の画家」として有名になるまでの生い立ちが語られます。そして彼の復讐の手記。その後ティモシー村で数十年ぶりにオーロラが現れた夜、その手記通りの連続バラバラ殺人事件が起こります。犯人は本当にこの手記を書いた精神障害のある画家なのか?あるいは復讐の神にして魔神ヤーヴェなのか?不気味な咆哮が轟く中、毎夜起こる凄惨な殺人事件の行方は?

この作品のティモシー村部分(第2章以降)の語り手はティモシー村の酒場に入りびたっている酔っ払い・自称詩人バーニーで、ただの民間人にもかかわらずティモシー村の警察署長の「親友(?)」としてやたらと現場へ出かけて行って情報を集めます。御手洗はここではウプサラ大学の脳科学者兼探偵のミタライ教授として登場しますが、もっぱら死体の検証しかしていないようで、また奇人変人ぶりが鳴りを全く潜めているため、「別人?」という疑問が湧いてきます。まあでも、『ロシア幽霊軍艦事件』でもそんなに変人な感じじゃなかったですね、そういえば。

事件自体は猟奇的でホラーですが、旧約聖書のモーゼの出エジプト記にあるヤーヴェ神の特性についてや、ロドニーの症状に関連して記憶についての興味深い考察があり、読み応えがあります。

筋金入りのある中・バーニーの語りもユーモラスです。

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