徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

ドイツ情報、ヨーロッパ旅行記、書評、その他「心にうつりゆくよしなし事」

書評:松岡圭祐著、『特等添乗員αの難事件 VI』(角川文庫)

2021年06月19日 | 書評ー小説:作者ハ・マ行

万能鑑定士Qの事件簿 0』同様、『特等添乗員αの難事件』シリーズの最新刊が今年の2月に発売されていたことを完全に見逃していました。
現在進行中の『高校事変』シリーズは「続刊予約」で自動購入にしていましたが、『特等添乗員αの難事件』シリーズは2014年に発行されたV巻で完結したと思っていたので、まさか7年ぶりに新刊が出るとは驚きました。
ファンにとってはV巻から時間が7年跳んでいるわけではなく、スムーズにつながっているので違和感がなく、それでもなお現在のコロナ自粛などの状況が反映されているところが「最新」という感じがします。
一方で、前作を知らない人にとってもスムーズに入りやすいように工夫されていると思います。ヒロインの浅倉絢奈が、婚約者の執事に一風変わった花嫁修業を受けていることや、その内容であるところのラテラルシンキングやロジカルシンキングの話に興味を覚えたら、シリーズ前作を読んでください的な書き方のように思いました。
適度にこれまでの設定や経緯が説明されているので、7年も経って色々忘れていた記憶が徐々に蘇って来てちょっと懐かしいという気がします。
さて、VI巻のストーリーですが、絢奈が韓流芸能観光が問題となっている韓国ツアーに添乗することになります。政治的状況から失敗が許されないツアーであるにもかかわらず、一癖も二癖もありそうな9人のツアー客を連れて行くことになります。景福宮のフリータイムで参加者の1人が倒れ、絢奈が駆け付けると別人に成り代わっていました。倒れた女性はある芸能事務所の練習生ユジョンで、病院まで付き添っていた絢奈の同僚が事情を聴く間もなく事務所の部長とやらにほとんど強制的に引き戻されてしまいます。絢奈たちは行方不明になったツアー参加者を探し続けますが、韓国警察も旅行会社も大人一人が勝手な行動をしただけと取り合わず、状況が掴めないままとりあえず他の参加者とともにツアー続行します。ところがショッピングタイムでは女性客2人が異様なほど爆買い。それが実は同じツアー参加者のK-POPファンと思われる母娘を恐喝してそのクレジットカードを使ったものだったことが判明します。後にこの母娘も失踪してしまい、ツアーバスは東南アジア系のいかにも危険な臭いのする男たちに囲まれるという感じに謎のハプニングが次々に起こって息つく暇もなくスピーディーにストーリーが展開していくところが松岡圭祐ならではの筆致というところでしょうか。
韓国の政治と芸能界の裏の腐敗を抉り出すようなストーリーですが、「人の死なないミステリー」というモットーは堅持されているので読後感もさわやかです。




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2021年06月19日 | 書評ー小説:作者ハ・マ行

2016年に『万能鑑定士Qの最終巻 ムンクの〈叫び〉』で終了したはずのシリーズから昨年最新刊が出ていたのですね。完全に見逃していました。

『万能鑑定士Qの事件簿 0』の舞台は2009年、凛田莉子がチープグッズから独立した直後で、まだ自分自身に自信が持てず万能鑑定士Qという名前の重圧に喘いでいた頃の話なので「ゼロ」の番号がついています。
都内で発見されたバンクシー作とおぼしきステンシル画の真贋判定に強引に巻き込まれてから、あれよあれよという間に舞台は熱海、グアム、そして福岡へと広がっていきます。熱海では複製博物館のようなところでなぜかゴッホの真作 と思われるものを発見し、グアムではホテルで開催されていた地元文化(の勘違い)を示す展示品の中になぜか漢委奴国王印の本物の輝きを発見し、福岡市博物館に問い合わせるものの一笑に付されてしまいます。しかし、後に本物の漢委奴国王印を保管しているはずの福岡市博物館ではすり替わった贋作が発見されます。この一連の事件の裏で糸を引いているのは誰なのか、そして何が本当の目的なのか、ワクワクするミステリーです。しかも人が死なない。
グアムでは3巻以降なかなか新刊が出ていない『グアムの探偵』シリーズのヒガシヤマ親子が登場し、莉子をサポートして事件の解決に貢献します。こちらも早く新刊が出て欲しいものですね。



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