徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

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書評:松岡圭祐著、『催眠 完全版』(角川文庫)

2016年08月22日 | 書評ー小説:作者ハ・マ行

松岡氏はよく古い作品の焼き直しをするようですね。『千里眼』、『煙』に続く完全版第3弾、『催眠 完全版』(2008)。

商品説明:

インチキ催眠術師の前に現れた不気味な女性。突然大声で笑い出しては、自分は宇宙人だと叫ぶ彼女が見せる予知能力は話題となり、日本中のメディアが殺到した。その頃、二億円もの横領事件の捜査線上には、ある女性が浮かび上がっていた。臨床心理士・嵯峨敏也が、催眠療法を駆使して見抜いた真実とは?衝撃のどんでん返しの後に感動が押し寄せる、松岡ワールドの原点が、最新の科学理論を盛り込んで完全版となって登場。

この作品は『千里眼 完全版クラシックシリーズ』2巻の『ミドリの猿』に少しリンクしています。あちらでも嵯峨敏也は主人公岬美由紀の先輩として登場しますし、『催眠』の方に登場する≪緑の猿≫は『千里眼』の方では一症例として言及されています。

題名からもお分かりのように主題は臨床心理学における催眠療法です。上述の商品説明における【不気味な女性】も横領事件の容疑者として浮かび上がってきた【ある女性】も同一人物ですが、多重人格です。嵯峨敏也はこの女性を助けようとちょっと蒸気を逸したことを次から次へとやって、かなりの顰蹙を買いますが、揺るがない正義感でもって状況を打破して行こうとするところは松岡ワールドお馴染のキャラ傾向が強く出ています。彼の人気シリーズの主人公はどれも女性ですが、この作品では珍しく男性。だけど『被疑者04の神託』のような冴えない中年男ではなく、若々しく結構持てそうな優男、という設定です。

ストーリー構成はパズルのようです。それほど細かいピースに分かれているわけではありませんが、いくつかのピースは全体像にどう嵌るのか最後まで分かりません。心理学の催眠療法に関してはかなり詳しい蘊蓄が作中で語られていますが、そこさえクリアすれば、あとはハラハラするいいエンタテインメントです。

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