徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

ドイツ情報、ヨーロッパ旅行記、書評、その他「心にうつりゆくよしなし事」

ドイツ:世論調査特別版(2016年8月26日)~メクレンブルク・フォアポンメルン州、AfD支持率21%

2016年08月26日 | 社会

ZDFの世論調査ポリートバロメーター特別版が8月26日に発表されましたので、以下に結果を私見による解説を加えつつご紹介いたします。

メクレンブルク・フォアポンメルン州では9月4日に州議会選挙があります。日本の不在者投票に相当する郵便投票(Briefwahl)は既に始まっています。

もし次の日曜日が州議会選挙ならどの政党を選びますか?:

SPD(ドイツ社会民主党)  28%
CDU(キリスト教民主同盟) 22%
Linke(左翼政党) 13%
Grüne(緑の党) 6%
NPD (ドイツ国家民主党) 3%
AfD(ドイツのための選択肢) 21%
その他 7% 

今回の世論調査で出た政党支持率の分布は、州議会選挙での得票率と概ね一致していると見て間違いありません。そのため、右翼政党であるドイツのための選択肢(AfD)が21%の支持率を獲得しているのは心配の種です。一方、現在州議会入りしている古くからの右翼政党NPDは5%以下になっており、このままだと州議会入りを果たせません。NPD票はAfDに流れた、と見ていいでしょう。

メクレンブルク・フォアポンメルン州はメルケル首相の支持基盤であるにもかかわらず、CDUの支持率がAfDのそれと1ポイントしか変わらないことも彼女の弱体化に貢献しそうです。現在州議会与党であるSPDも支持率の低下は著しいのですが、それでも何とかトップを維持している感じです。

州首相には誰を希望しますか?:

エルヴィン・セレリング(Sellering、SPD) 64%
ローレンツ・カフィエ(Caffier、CDU)18%

どちらでもない 7%
分からない 11% 

 

州首相候補者の評価(スケールは+5から-5):

セレリング +2.3 (SPD支持者:+3.6)
カフィエ +1.2 (CDU支持者:+2.3)
ホルター +0.7 (左翼政党支持者:+2.8)

 

州政権と野党の評価(スケールは+5から-5):


政権

SPD +1.3
CDU +0.9

野党

左翼政党 -0.2
緑の党 -0.5
NPD -3.9

 

投票先は決まってますか?:

はい 58%
いいえ 42%

 

最も重要な問題は?: 

失業問題 38%
難民問題 25%
学校・教育 12%
家族・青少年政策 8%
費用・物価 8% 

メクレンブルク・フォアポンメルン州は2016年7月の失業者統計によると、全国第4位の高失業率(9%)を示しているので、失業対策が最重要課題と見られているのは当然の帰結と言えます。もちろん9%の中にはいわゆる隠れ失業者(55歳以上の失業者、労働局の斡旋する職業訓練等に参加中の者、失業届けを出していない無職者)は含まれていません。拙ブログ記事「ドイツ:貧富の格差はヨーロッパ最大」で紹介しましたが、メクレンブルク・フォアポンメルン州は貧困率が全国で2番目に高い23.6%です。隠れ失業者を含めた貧困率はおよそ11%弱ですから、残る12.6%が全世帯の所得を多い順に並べて真ん中に来る【メディアン所得】の60%以下の所得しかない世帯ということになります。もちろん家賃やその他の物価も全国平均以下ですので、数字から想像されるほど多くの世帯が貧困にあえいでいるというわけではないのでしょうが、それでもドイツが好景気に沸いている中で、「取り残されている」という感覚はより強くあると考えられます。


どの政党が各分野での専門知識・能力があると思いますか?

雇用
SPD 27%
CDU 29%
左翼政党 4%
AfD 2%

経済

SPD 31%
CDU 26%
左翼政党 2%
AfD 1% 


難民問題
SPD 19%
CDU 21%
左翼政党 9%
AfD 12%

社会正義

SPD 34%
CDU 13%
左翼政党 24%
AfD 3% 

この政党別分野別の能力判断で分かることは、21%いるはずのAfD支持者たちが、特にAfDのの政策能力を買って支持しているわけではないということです。よく言われることですが、いわゆる「反抗政党(Protestpartei)」へ既成政党への反発を示すために投票する人たちによってAfDが得票率を伸ばしているわけです。

ちなみに、このような投票の仕方をする人たちは反抗的投票者(Protestwähler)と呼ばれています。NPDも前回の州議会選挙でこのような反抗的投票者たちによって議会入りを果たしました。彼らは日本でいうところの「浮動票」に相当し、気分によっては無投票になる層でもあります。

どの連立政権がいいと思いますか?

SPD/CDU: いい 44%、悪い25%

CDU/SPD: いい 31%、悪い38%

SPD/左翼政党/緑の党:いい 30%、悪い 48%

 

難民数はメクレンブルク・フォアポンメルン州にとって処理可能?

はい 63%
いいえ 30%
分からない 7% 

メクレンブルク・フォアポンメルン州は人口も少なく、財政状況も悪いため、難民受け入れ数はそれに比例してかなり少なくなっています。それでも「処理できない」と考えている人が30%いるのは、閉鎖的・排他的な土地柄の影響もあるでしょう。

 

メルケルの難民政策について

いい 41%
悪い 51%
分からない 8% 

メルケル氏の地元とはいえ、排他的な土地柄。彼女のオープンな難民政策があまりいい評価を受けないのは当たり前と言えば当たり前です。

 

この世論調査はマンハイム研究グループ「ヴァーレン(選挙)」によって行われました。インタヴューは偶然に選ばれた有権者1.020人に対して2016年8月23日から25日に電話で実施されました。

次の世論調査は2016年9月23日ZDFで発表されます。その前に、ベルリン州の特別版世論調査が9月9日に公表される予定です。

 

参照記事:
ZDFポリートバロメーター、2016.08.26、「ポリートバロメーター特別版
Statista、2016年7月州別失業率統計
ディー・ヴェルト、2015.2.19、「ドイツの貧困についての真実