徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

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書評:松岡圭祐著、『水の通う回路 完全版 上・下』(角川文庫)

2016年08月16日 | 書評ー小説:作者ハ・マ行

松岡圭祐の『水の通う回路 完全版』上・下巻を眠い目をこすりつつ一気に…というわけにはさすがにいかず、二晩かけて完読しました。

『水の通う回路』(幻冬舎、1998)は著者の『催眠』に続く第2作目だったそうですが、後に徳間書店で『バグ』と改題された時も、著者本人にとって「不完全な作品」という感が否めなかったらしく、全面書き直しされて2009年に「完全版」が上梓されました。この「完全版」が著者曰く、1998年当初の作品の「あるべき形」だったとのこと。新人ミステリー作家は真犯人も自分の思うように決められないこともあるらしいですね。そのようないきさつが完全版の「前書きに代えて」で書かれていました。

『水の通う回路 完全版』のあらすじは、千葉県佐倉市で小学6年生が自らの

腹部をナイフで刺したことに始まった、次々に起こる子どもたちの異常事態の真相究明です。異常をきたした子どもたちの共通点は前日発売された『シティ・エクスパンダー4』というゲームを買って遊んだことと、「黒いマントの男に追われた(襲われた)」という証言をしていること。ゲーム製造元であるフォレスト社長、桐生直人は最初に開発部長であり、『シティ・エクスパンダー4』の開発責任者でもある津久井智男が不審なデータのやり取りをしていた痕跡を見つけ、それを手掛かりに調査を始めますが、それがどんどん意外な方向へ繋がっていきます。『シティ・エクスパンダー4』に一体どんな細工が?!と思いきや、結論は全然違う、明後日の方向にあってとても面白かったです。

最大の謎は:「水の入った袋」と「水の通う回路のサージ」という二つの短いメール。意味不明。発信元不明。

途中哲学的、観念的な議論も含まれていて、なかなか興味深い作品です。

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