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徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

ドイツ情報、ヨーロッパ旅行記、書評、その他「心にうつりゆくよしなし事」

書評:松岡圭祐著、『高校事変 VI』(角川文庫)

2020年03月31日 | 書評ー小説:作者ハ・マ行


高校事変の最新刊が出たました。
忙しくてもついついがーっと読んでしまうのが松岡作品です。
今回は結衣が同級生の何人かによるいじめを甘んじて受けているところから始まります。今までテロリストの娘として、また武蔵小杉高校事変を始めとする凄惨な事件に関わってきたという黒い噂(真実)のせいで恐れられ、同級生からも敬遠されていたのですが、公安に殴られている動画があまりにも広く出回ってしまったため、「優莉結衣は恐れるに足らず」のようなイメージが逆についてしまい、いじめにつながったようです。
彼女は警察の執拗な疑いを逸らすためにも騒ぎを起こさないように我慢していたわけですが、修学旅行でよりによっていじめグループと班が一緒になっていまい、ぶちっとブチ切れてしまったようですね。
最もそれだけではなく、彼女の敵として登場したベトナムからの帰化人が作り上げた組織がこれ以上力をつけないようにするため、彼らとつながりがあると思われる沖縄の裏社会を牛耳る反社会勢力と、規律を失い暴走する民間軍事会社を潰しにいくことになります(少々ネタバレですが)。
どんどん話が大きくなっていきますね。
でも、彼女は前回に続いて徐々に仲間意識というのか、心の成長をしています。
独特の正義感と問題のある親から受けた教育によってどんどんバイオレンスに巻き込まれていくというか自分で突っ込んでいくというか、そういう感じなので、今後の展開がすごく気になりますね。

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書評:ジャック・フットレル著、『十三号独房の問題』(世界推理短編傑作集1、創元推理文庫)

2020年03月13日 | 書評ー小説:作者ハ・マ行


江戸川乱歩編『世界推理短編傑作集1』の最後に収録されている作品は、ジャック・フットレル著、『十三号独房の問題(原題: The Problem of Cell 13)』(1905)です。

「思考機械(Thinking Machine)」というヴァン・ドゥーゼン博士を主人公とする短編集のうちの一つで、くだらないきっかけからヴァン・ドゥーゼン博士が牢獄から1週間以内に脱獄できるかどうかを賭けることになり、「実験」と称して当局の許可を得てチェザム刑務所の十三号独房に収容されてから脱獄するまでのあれこれが語られます。
最初は脱獄などできるはずもないと高をくくっていた所長も、博士の奇怪な行動や不可解な現象にだんだん悩まされることになります。
この短編は、トリックそのものはむしろつまらないものなのですが、博士の攪乱作戦がユーモラスで楽しめます。😄 

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書評:アーサー・モリスン著、『レントン館盗難事件』(世界推理短編傑作集1、創元推理文庫)

2020年02月09日 | 書評ー小説:作者ハ・マ行

江戸川乱歩編『世界推理短編傑作集1』の4番目の作品としてアーサー・コナン・ドイル著の『赤毛組合(The Red-Headed League)』が収録されていましたが、これは原文で読んだので飛ばして、5番目の収録作品アーサー・モリスンの『レントン館盗難事件』を読みました。
ジェイムス・ノリス卿の館で1年弱の間に3件も盗難事件が起こったので、秘書のロイドが探偵のマーチン・ヒューイットに事件解決を依頼します。
3件の盗難事件にはマッチの燃えカスが残されていたという共通点があり、それをヒントに現場検証と聞き込みで一見不可能に見えるトリックを解き明かすことになります。
短編なのでちょっとあっけない感じもしますが、ソコソコ意外性とユーモアがあっていいですね。

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書評:松岡圭祐著、『高校事変』IV+V(角川文庫)

2020年01月29日 | 書評ー小説:作者ハ・マ行


仕事が立て続けに入ってきて結構忙しいというのにそういう時に限って読みたいシリーズの最新刊が出たりして、ついつい読んでしまい困ったものです😅 

『高校事変』の4巻はすでに11月に発売されていたのですがそれは新刊発売通知を見逃してしまったらしく、1月23日の5巻の新刊発売通知で気が付いて2冊いっぺんに買って一気読みしてしまいました。


4巻では戦うヒロイン優莉結衣の腹違いの弟・健人(中2)が登場しますが、スキー場に向かう中学生たちを乗せたバスが新潟県の山中で転落事故を起こし、健人はその運転手を殺して自殺したという知らせが結衣のもとに届きます。弟と運転手の死体を見て状況を把握した結衣は弟が正当防衛であったことを訴えますがもちろん相手にされなかったため、運転手の背後関係を調査しだします。その中でかつて父の組織と敵対していた半グレ集団「パグェ」の末端による未登録銃器とガソリンの違法販売を突き止め、そのアジトである外国人学校に突入し、1巻の武藏小杉高校事変以来の殺るか殺られるかの戦場と化した閉鎖空間でのサバイバルゲームとなります。そこでなぜか結衣についていた公安の刑事たちとも鉢合わせ!敵側が結衣の行動を先読みしていたため事態はより絶望的でしたが、まあ、ヒロインが死ぬはずはありませんよね。ただ、彼女が実際に大量殺人をするだけの能力を持っていることは公安側にばれてしまうのですが…
校内でパグェ関係者の子どもが数人虐待されて閉じ込められていたので、結衣はその子たちを守り、救い出すためにも活躍します。
結衣が虐待被害児たちに自分の子供時代を重ねて彼らの望む言葉を紡ごうとするあたりはなかなかグッとくるシーンです。
ラストに意外な人物が敵として登場します。


5巻は結衣の過去、彼女の父・匡太が起こしたテロ事件、そしてその事件で両親を目の前で亡くした梶沙津希の回想で、これまで断片的にしか言及されていなかった過去の忌まわしい事件が様々な視点から詳細に語られます。
また、武蔵小杉高校事変で優莉結衣に命を救われた濱林澪は、多くの死に直面したショックから不登校になっており、両親の勧めで編入試験を受けるための下見に来た農業高校で梶沙津希に出会います。農業高校の教師たちの振る舞いに異様な気配を感じた澪は、沙津希の身を案じてあの事変以来ずっと連絡を取っていなかった結衣を呼び出します。
優莉匡太亡き後の秩序再編をもくろむ半グレ組織、そして匡太の子たちを追い込むためには非常手段を辞さない公安警察。国家規模の陰謀が新たな戦いを引き起こし、「事変」と言うにふさわしい事態が展開していきます。
結衣は誰も信用しない「孤高のヒロイン」でしたが、この5巻でそれが変わり、真の友情を得て、また助けを求めることも覚えます。その意味でこの巻は大きな転換点とも言えます。
これまでちりばめられていた伏線もこの巻で回収され、真の敵が明確になって今後新展開することを予感させます。


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エドガー・アラン・ポー著、『盗まれた手紙』(世界推理短編傑作集1)

2020年01月24日 | 書評ー小説:作者ハ・マ行


江戸川乱歩が編集したという『世界推理短編傑作集』が全面リニューアルされて創元推理文庫から5巻発行されたので購入したのはいいのですが、数か月放置してしまいました。
最近はドイツ語サイトの立ち上げやYouTubeチャンネルの創設などで忙しくあまり読書できていないのが残念。1日ってどうして24時間しかないんだろうと思いつつ慢性睡眠不足になっています。
さて、この第1巻の最初を飾るのはポーの『盗まれた手紙』。前書きによると江戸川乱歩の時代の推理小説ランキングリストの数々でトップに上げられる作品だったそうで。タイトルの通り盗まれた手紙を探すのがお題なのだけど、単純なだけに簡単ではないというお話です。某警視総監がその手紙をありとあらゆる手段で隅々まで探してちっとも見つからないと嘆き、書き手とその友人デュパンがその話を聞きつつ推理する感じなのかと思いきや、かなり違う展開で、かなりパンチのきいたオチでした。
短編の割にうんちくが長いような気もしないでもないですが、なかなか面白かったです。
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書評:Ostfried Preußler著、『Krabat』(Thienemann)

2019年09月29日 | 書評ー小説:作者ハ・マ行
この前読んだ『Das kleine Gespenst(小さなゆうれい)』に続いて、1972年度ドイツ青少年図書賞(Deutscher Jugendbuchpreis)を始めとする様々な文学賞を獲得した作品『Krabat』を読んでみました。ハードカバーで256ページの長編で、August der Starke アウグスト強健王として知られるザクセン選帝侯アウグスト1世兼ポーランド国王アウグスト2世の治世(1694~1763年)の時代の話のため、今では使わなくなった言葉やザクセン方言・スラブ語の要素が混じり(Kantorka = KantorinやFöhre = Kiefer「松」など)、調べることが多く、自分のドイツ語の語彙力が乏しいのではないかと疑いましたが、中にはドイツ人のダンナも首をかしげるものがあって(dritthalb = zweiundeinhalb 「2½」、Scholta = Schulze 「町長」など)、ちょっと安心しました😅 児童文学と侮るなかれ、ですね。

両親を亡くした後乞食として暮らしていた14歳の Krabat クラーバットが夢のお告げ(?)に従い、好奇心から Koselbruch コーゼルブルッフにある水車小屋に行き、そこで製粉マイスターの弟子入りします。1年目、2年目、3年目と3章にわたって水車小屋での出来事、友情と死別の悲しみ、そして秘めた恋が語られます。
クラーバットは最初、嫌になったらやめて出て行けばいいと軽い気持ちで弟子入りしましたが、実はマイスターは魔法使いで一度弟子入りした者はマイスターの命じる用事で以外で敷地を出ることができないと判明します。1年で Lehrling 弟子から Geselle 職人となったクラーバットはその日から毎週金曜日の夜にカラスに変身して仲間たちと一緒にマイスターの魔法の授業を受けることになります。年末が近づくと仲間たちみんながナーバスになり、クラーバットの世話をしてきた Tonda トンダは「みんな怖がっているのだ。理由はいずれ分かる」と説明しますが、当のトンダが大晦日の日に死んでしまいます。彼の埋葬が終わるころ、新しい弟子が入ってきます。そして、その翌年も Michal ミヒャルという仲間が同じように唐突に死亡します。その後に同じように新しい弟子が入ってきます。このおどろおどろしいミステリーが1つの魅力です。もう1つはクラーバットの秘めた恋の話です。トンダが「好きになった女の子の名前を仲間の誰にも、ましてやマイスターに知られてはならない」と警告されていたこともあり、クラーバットは彼女の本名を尋ねることなく Kantorka カントルカ(先唱者)と呼びます。知らなければ秘密を洩らしようがないからですが、結局最後まで彼女の本名が明かされないのはどうなんでしょうね😒 
なにはともあれ、どうやってクラーバットがマイスターから解放されるのか、そこに至る命がけのサスペンスが読みどころです。

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書評:Ostfried Preußler著、『Das kleine Gespenst(小さなゆうれい)』(Thienemann-Esslinger)



書評:松岡圭祐著、『高校事変Ⅲ』(角川文庫)

2019年09月23日 | 書評ー小説:作者ハ・マ行
『高校事変』シリーズの第3弾がもう書き下ろされて著者の執筆スピードに驚嘆するばかりです。😲 
犯罪史に残る凶悪な半グレ連合リーダーを父に持つ優莉結衣を全寮制の矯正施設・塚越学園への転入を薦めるために同施設のトップが訪ねてきますが、見学に出発した未明、突如として武装集団の襲撃に遭い、結衣の記憶はそこで途切れて、ふたたび目覚めたときには熱帯林の奥地にある奇妙な<学校村落>の建物の一室に寝かされていました。前巻の最後に登場した結衣の妹もそこに収容されていました。同じく日本から来た少年少女ら700人が生活しながら通学する、要塞化された校舎の謎。その構造はISやボコハラムに倣った恐怖支配で、すでに処刑された生徒も何人かいました。結衣は状況把握のために様々なことを試みますが、監視がきつい上に相手が結衣の手口を知り尽くしており、監視要員も元軍人であるため、隙をつくこともまともに張り合うこともかなわず絶体絶命の危機に陥ってしまいます。結衣は誘拐された少年少女らとともに脱出することができるのか!?とハラハラします。
これまで結衣が直面してきた課題よりさらにレベルアップしています。これに対処するために結衣は孤高の存在を貫かず、仲間を作り、彼女と脱出劇で活躍する仲間たちが一種の人間的成長を見せるところが読みどころですね。


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書評:松岡圭祐著、『高校事変』1&2(角川文庫)

2019年09月16日 | 書評ー小説:作者ハ・マ行

松岡圭祐の令和に入ってからの新シリーズ『高校事変』は、久々に若い特殊能力を持つ女性キャラが主人公となっていますが、17歳の少女である点と、純粋に正義の味方的なヒロインでないところがこれまでと違って新鮮です。

 

商品説明より:優莉結衣(ゆうり・ゆい)は、平成最大のテロ事件を起こし死刑となった男の娘。事件当時、彼女は9歳で犯罪集団と関わりがあった証拠はない。今は武蔵小杉高校の2年生。この学校に支持率向上を狙った総理大臣が訪問することになった。総理がSPとともに校舎を訪れ生徒や教員らとの懇親が始まるが、突如武装勢力が侵入。総理が人質にとられそうになる。別の教室で自習を申し渡されていた結衣は、逃げ惑う総理ら一行と遭遇。次々と襲ってくる武装勢力を化学や銃器のたぐいまれなる知識や機転で次々と撃退していく。一方、高校を占拠した武装勢力は具体的な要求を伝えてこない。真の要求は? そして事件の裏に潜む驚愕の真実とは? 人質になった生徒たちと共に、あなたは日本のすべてを知る! 

上の説明では言及されていませんが、武装勢力の侵入により生徒たちのほぼ半数と抵抗したSPたちが瞬く間に殺される凄惨を極めた事変であり、それに対抗するヒロイン優莉結衣も総理や他の人質となっている生徒を助けるために動いてはいるものの、父から仕込まれたあらゆる武器の製造・使用法や殺人の技術を活かして暴力をふるうこと自体に喜びを感じている面もあり、「敵」と見なした者たちに対する情け容赦しない冷徹さと17歳という若さに戸惑いと新鮮味を感じます。公安の監視と人権派の保護の狭間で自分の自由と生き方を探る結衣の立ち位置は、偏見の塊の大人を代表する公安とその偏見と闘う人権派のどちらからも正しく理解されず、そのこと自体が一種の社会風刺となっている一方で、結衣の特殊性と孤独を浮き彫りにします。

自分の立場をよく理解している結衣は、それを利用して自分の殺人行為をうまくカモフラージュし、絶対に罪に問われないように立ち回りますが、彼女に助けられた人たちと深い関係にならないように事変後は転校し、施設も変わることになります。

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IIでは「武蔵小杉高校事変」から2か月後、新たな高校と施設で公安の監視下大人しく過ごしていました。結衣と同じ養護施設に暮らす奈々未が行方不明になり、また、多数の女子高生が失踪していたことも判明します。結衣は奈々未の妹理恵に懇願され調査に乗り出すことになりますが、1巻のように混乱のさなかというわけではないため、公安の監視の目をくぐり抜け、様々なアリバイ工作をしながらの行動となります。JKビジネスの業者も買う側のモラルのなさに対する義憤を彼女の特殊能力を使って思いっきり敵にぶつけていくため、理恵と奈々未を救うまでに死体の山を築くことになります。

交通事故で人命を奪ったにもかかわらず逮捕もされなかった「特権階級」などタイムリーな話題が盛り込まれ、そうした社会の闇にダークヒロイン結衣の鉄槌が下されるのは、ある意味溜飲が下がりますが、結衣の行いは違法であることはもちろん、相手がどうあれ殺人であるため、単純にカタルシスを感じることもできません。そのあたりの苦々しさがこのシリーズの特徴なのかもしれません。

最後に学校・施設を奈々未が高校卒業するまで変えないことを約束するところが前回とは違う展開になっています。

また、彼女の異母妹が登場したところで終わっているので、次巻では彼女の過去がこの妹関連でもう少し詳しく判明するのかなと期待しています。

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書評:松岡圭祐著、『マジシャン 最終版』&『イリュージョン 最終版』(角川文庫)

2019年09月15日 | 書評ー小説:作者ハ・マ行
松岡圭祐は文庫化された作品も改訂する作家で、この『マジシャン』『イリュージョン』の連作も2002年の単行本発行、2003年文庫化、2008年再文庫化「完全版」を経た「最終版」とのことです。たまたま合本版でセールになっていたので買い置きしておいたのをスペインでのバカンス中に読み終えました。
『マジシャン 最終版』では、「金が倍になる」という奇妙な噂の事件性を疑う舛城刑事が、両親を失い里親は詐欺事件で逮捕されたために施設で育ったプロマジシャンを目指す里見沙希(15)の協力を得て詐欺師のトリックを暴いて事件を解決するというマジック関連の探偵ものですが、同時に里見沙希の成長物語でもあり、舛城刑事の学びの物語でもあります。マジックの専門的な考察の他、里見沙希の生い立ちや孤独感が掘り下げられており、ただの探偵ものには終わらない感動的な作品となっています。
続編である『イリュージョン 最終版』の時間軸は『マジシャン』の1年後になっており、両親に絶望した少年・椎橋彬が、趣味のマジックの知識を使い万引きGメンとして脚光を浴びるようになる一方、自らもマジックを駆使し、万引きGメンとして得られた信頼を悪用しながら万引きをし、ついに舛城刑事に追われることになりますが、証拠が不十分なために逮捕もままならずに逃走に成功します。舛城刑事は惟橋のトリックを見破るために里見沙希に協力を要請します。彼女は最初は協力を拒否したものの心境の変化から結局協力することになります。
椎橋彬の生い立ちから家出して年を偽り警備員の仕事に就き、万引きGメンとして脚光を浴びるまでの経緯や彼の心情、社会の理不尽さに対する怒りや親の愛情に対する飢え、マジシャンとしての驕りなどが深く掘り下げられています。
舛城刑事と里見沙希は椎橋彬は彼の犯罪を暴き、彼を追い詰めはしますが、同時に彼に対する深い理解を示し、彼の心からの反省を引き出すところが魅力的です。
 

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書評:Ostfried Preußler著、『Das kleine Gespenst(小さなゆうれい)』(Thienemann-Esslinger)

2019年08月18日 | 書評ー小説:作者ハ・マ行

ドイツ語の児童文学とは今まで縁がなかったのですが、FB友達のお勧めでOstfried Preußlerの『Das kleine Gespenst(小さなゆうれい)』を読んでみました。

Eulenbergという小さな町の上に立つ古いEulenstein城に住む小さなゆうれいのお話で、市庁舎の鐘が夜中の12時を打つと起き出して1時の鐘が鳴るとまた眠る習性を持っていて、みみずく(Uhu)のSchuhuと友達で、彼と昼の世界はどんなだろうと話していたら、ある日突然昼の12時に目覚めてしまい、Eulenbergの町中を昼日中に彷徨って騒ぎを起こします。ストーリーは単純で微笑ましく、思わずニヤリとしてしまうよなユーモアがあります。

ドイツ語学習者の視点で見ると、児童文学とはいえなかなか侮れない高度な表現があります。私はもうちょっと言葉の面でも子供向けの単純なものを想像していたのですが、結構知らない表現があって意外でした。知らなくても意味は文脈からくみ取れるようなものでしたが、興味深いものでした。例えば jemanden ins Pffererland wünschen(誰かが遠くに(コショウの育つ土地)いなくなることを願う)や mit Holterdiepolter(大慌てで)などが表現として面白いですね。別れる意味での「失礼する」のニュアンスで sich empfehlen が使われているのもなかなか文学的です。

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