みちくさ茶屋

いらっしゃいませ。どうぞごゆるりと。

読書記録2006-28

2006-11-11 | book
64「都の子」江國香織 充実度★★★★★
江國さんのエッセイ集は好きなものが多いが、これはとりわけすばらしい。
「水玉模様」だけのお題で2000文字を構築し、
読者を引き込むことができる作家がどれくらいいるだろうか。
「階段は、降りるときには一段ずつが全部椅子になっていて、
上るときには(膝歩きで上るとよくわかるのだが)一段ずつ全部が
机になっている」などという発見ができる大人がどれだけいるだろか。
「雨に濡れたものは、みんなちょっとあだっぽい。
葉っぱも花も土も傘も、屋根も人も猫もみんな。」などという描写で
読み手をノックアウトさせる女性がどれだけいるだろうか。
何度もため息をつきながら読んだ一冊だった。
少女時代の思い出を綴ったものも多く、彼女がいかに豊かな(物質的なことではなく)
子供だったのか、いかにその世界を純粋にうけとめながら見つめていたのか、
よくわかる。いまさらですが、大好きな作家さんです。

65「泣かない子供」江國香織 充実度★★★★☆
「都の子」に比べて、視点が大人っぽい。
しっかり者の妹の話がいくつか出てきて、それに心底共感。
なんかうちの妹に似てるんだよなあ。
ふたり姉妹ってそれだけで特有の関係なんだなと思うし、
江國さんが描く妹への感情にシンパシィ感じまくりです。
そういえば、江國さんの感覚ってちょっと「長女っぽい」かもしれない。
父親である江國滋氏の話もとても興味深く、
「なるほど、こういうお父さんに育てられてこういう妹がいるとこういう娘に
なるのだなあ!」と感嘆せずにいられません。

66「生まれる森」島本理生 充実度★☆☆☆☆
つまんなかったです。
文章もきれいだし、きっと主人公は美人なんでしょうが、
なんだかだらだらしていて、「で、どうしたいの?」っていうのが
全然わからなかった。忘れられない過去の恋人である塾講師も、
ちっとも魅力的じゃなかったし。
テーマは「再生」らしいけど、ちゃんとリセットされた感じが伝わらず、
前向きに生きていこうという姿は見えなかった。
好き嫌いが別れるところなのかも。
個人的には、もっと躍動感がほしかった。