29「愛人(ラ・マン)」M.デュラス 充実度★☆☆☆☆
映画化されたときに買った文庫がずっと本棚にあったので読んでみた。
そういえばあの映画ってR指定だったっけ……ということを19ページあたりでやっと気が付いた。
でも、翻訳モノのエロチズムって、どうしても美しくならざるを得ない気がする。
同じようなシーンでも、日本人の書くエロを、日本人が日本語で読むのとは違うのだ。
ただし、デュラスがこれを「官能小説」として書いたかどうかはわからない。
映画で話題になったほどの性描写はそんなになかったし。
自伝ともいわれ、もともとは写真集につける文章だったという説もあるから、
妄想のまじった日記というか、モノローグのようなものだったのかもしれない。
そう捉えて読むと納得がいく。
逆に、ふつうの物語としてストーリーを追っていくと、
一人称と三人称が混在しているし、時代も前後しているのでこんがらがるかも。
フランス領だったころのベトナムに暮らす、白人としては貧しい家庭。
勉強のできない兄、母親との確執を抱える美しい娘。
テーマは愛人でも性でもなく、「家族」のような気がした。
そして、おそらくデュラス本人であろう主人公の一番の欲望は、
実はお金でも性でも美貌でもなく、「書くこと」だったのだと思う。
おもしろいかおもしろくないかといえば、はっきり言って私はおもしろくなかったけど、
世界的ベストセラーとなった理由はなんとなくわかる気がした。
30「広き迷路」三浦綾子 充実度★★★☆☆
三浦綾子の作品の中では特異な一冊。仕事で読みました。
三浦綾子といえばキリスト教だが、この本にはイエスも牧師も出てこない。
登場するのは、どうしようもない人間ばかりである。
特に、物語の要となる町沢加奈彦。こいつがホントにろくでもないヤツで、
恋人である冬美が出世のジャマだからといって殺そうとしたり、
友達の義姉とねんごろになっていつまでもツバメになってたりするのだ。
そして、加奈彦に執着する冬美。
なんで冬美があそこまで加奈彦に夢中になるのか最初はわからなかったが、
ふと、でも若い時って、こういうしょうがない男を好きになっちゃう
おバカな時期ってあるのよねえ……といろいろ思い出したり。
「もしかしてこうなるのかな?」という展開がほぼよめてしまって
ミステリーとしてはちょっと物足りない感はあるものの、
最後まで人間の心理の深さ、複雑さをよく突いていたと思う。
ラストは「えー?」って思ったけど、冬美がどういう人間かということを考えると
納得のいく結末かも。
まともな人が一人も出てこない小説だったけど、
なまめかしく「私は悪いことが好き」と言ってホントに悪いことをする
瑛子のキャラは個人的に好きでした。
映画化されたときに買った文庫がずっと本棚にあったので読んでみた。
そういえばあの映画ってR指定だったっけ……ということを19ページあたりでやっと気が付いた。
でも、翻訳モノのエロチズムって、どうしても美しくならざるを得ない気がする。
同じようなシーンでも、日本人の書くエロを、日本人が日本語で読むのとは違うのだ。
ただし、デュラスがこれを「官能小説」として書いたかどうかはわからない。
映画で話題になったほどの性描写はそんなになかったし。
自伝ともいわれ、もともとは写真集につける文章だったという説もあるから、
妄想のまじった日記というか、モノローグのようなものだったのかもしれない。
そう捉えて読むと納得がいく。
逆に、ふつうの物語としてストーリーを追っていくと、
一人称と三人称が混在しているし、時代も前後しているのでこんがらがるかも。
フランス領だったころのベトナムに暮らす、白人としては貧しい家庭。
勉強のできない兄、母親との確執を抱える美しい娘。
テーマは愛人でも性でもなく、「家族」のような気がした。
そして、おそらくデュラス本人であろう主人公の一番の欲望は、
実はお金でも性でも美貌でもなく、「書くこと」だったのだと思う。
おもしろいかおもしろくないかといえば、はっきり言って私はおもしろくなかったけど、
世界的ベストセラーとなった理由はなんとなくわかる気がした。
30「広き迷路」三浦綾子 充実度★★★☆☆
三浦綾子の作品の中では特異な一冊。仕事で読みました。
三浦綾子といえばキリスト教だが、この本にはイエスも牧師も出てこない。
登場するのは、どうしようもない人間ばかりである。
特に、物語の要となる町沢加奈彦。こいつがホントにろくでもないヤツで、
恋人である冬美が出世のジャマだからといって殺そうとしたり、
友達の義姉とねんごろになっていつまでもツバメになってたりするのだ。
そして、加奈彦に執着する冬美。
なんで冬美があそこまで加奈彦に夢中になるのか最初はわからなかったが、
ふと、でも若い時って、こういうしょうがない男を好きになっちゃう
おバカな時期ってあるのよねえ……といろいろ思い出したり。
「もしかしてこうなるのかな?」という展開がほぼよめてしまって
ミステリーとしてはちょっと物足りない感はあるものの、
最後まで人間の心理の深さ、複雑さをよく突いていたと思う。
ラストは「えー?」って思ったけど、冬美がどういう人間かということを考えると
納得のいく結末かも。
まともな人が一人も出てこない小説だったけど、
なまめかしく「私は悪いことが好き」と言ってホントに悪いことをする
瑛子のキャラは個人的に好きでした。