みちくさ茶屋

いらっしゃいませ。どうぞごゆるりと。

イニシエーション・ラブ

2012-03-20 | book
「イニシエーション・ラブ」乾くるみ著

職場の人からおすすめされたミステリー小説です。
最初に言いますが、私もおすすめです!

「この本を教えてくれた友達が、『最後の2行でだまされたー!って思うよ』って言ってたの。
私も読んで、やっぱりだまされた!」
と、熱く語っていたので、私も読んでみました。

ここからしばらくはネタばれなしです。
ネタばれするときはちゃんと表記しますので安心して読んでください。

そもそもミステリーを読み慣れていない私。
「絶対だまされないぞ!!」と心に決め、一語一句、逃さないように
注意深く読みました。場所とか、名前とか、設定とか、時間とか。
でも、心のどこかでは「でも、だまされた!って歯ぎしりしてみたい」とも思いつつ。
内容としては、静岡と東京を舞台にした若い恋人たちのラブストーリーです。


で、最後の2行にわくわくしながらたどりつき。


というか、最後の13行目から「ん? あれ?」と思いながら読み進め、
最後の2行を読み終わったときには、私の場合は「だまされた」というより
「え? なに? どういうこと??」
と、ぽかんとしてしまいました。意味がわからなかったんです。
ここで瞬時に「だまされた」という結論に至る人は頭いいです!
いや、私が頭の血のめぐりが悪いのか。

オチの解明をしたくて速攻でインターネットで調べたら、
いるいる、謎解きしてくれてる人がわんさかと。
「な、なるほどっ、そうだったのか!!」と、
私は最後の2行ではなく本を閉じてからパソコン画面の前でうなりました。
はい、そこでようやく「だまされた!」と言えました。


あと、これは個人的な話なんですが、私は結婚してから4年間静岡に住んでいたので
超ローカルな地名やお店が出てくるのがもう、楽しくて。
戸田書店とか谷島屋とか、アピアとかシャンソン化粧品とか。
大浜海岸なんて、私、結婚式挙げた場所ですからね、涙出そうでしたよ。

蛇足ですが相方の旧姓がこのお話に出てくる「僕」と同じ「鈴木」で、
「すーさん」と呼ばれていたのです。
「僕」も途中から「すーさん」と呼ばれ出して笑ってしまいました。
ちなみに、「鈴木」は静岡で大変に多い苗字です。
のっけから出てくる「僕」の友人、「望月」というのも
鈴木と競る多い名前でしょう。このあたりの地元感がリアルでおもしろかった。
(作者が静岡の出身なんですね)

時代設定も「男女7人」がリアルタイムで放映されていたころで、
これまたなつかしさがいっぱい。
携帯なんて誰も持ってなかったころです。
このあたりは、若い人より我々世代以降の人のほうが共感が持てるかもしれません。

ラストまでは「ふつうの恋愛小説」という感じなのですが、
完全なるミステリーだったことに驚愕。
読み慣れてる人はすぐわかっちゃうのかなあ。
でもほんとにおもしろかったので、ぜひ。
読み終わってから
「あっ、あれはこういうことか」「あそこのアレはソレだったのだ!」
と、いろいろ確認してまた楽しめます。

はい、ここまでネタバレなし。
以後は、読まれた方のみ、よろしければおつきあいください。


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いいですか、ここからはネタバレというかネタのみですよ。
この本まだ読んでない人は、この先行っちゃだめですよ。












じゃあ、いきますよ。








以下、ネタバレあり!!!!



まず最初に、「タック」が出てくるのが唐突すぎて、夕樹を「たっくん」というのが
すごく無理があるなあと、まあここまでは私でもわかりました。
つまり、夕樹以外の本物の「たっくん」という別の男性の存在はかなり初期のほうで
意識しながら読んでいたわけですが、元彼なのかな、二股なのかな、くらいの感じで
まさかその本物がB面から登場し続けていたなんて、これは予想できませんでした。

A面でひっかかっていたのは、この名前のことと、
「なんで土日じゃなくて平日の夜にデートするのだろう?」ということ。
ふたりとも日曜日あいてるはずなのに、なんで?って。

で、B面では、鈴木くん、酔って殴る癖なんてあったっけ?
というのが不思議でしたが、そこでは別人だと気づきませんでしたねー。
B面の鈴木がやたらいやな奴なのも、「東京で人が変わっちゃったのね」くらいにしか
思っていませんでした。
実際、東京に出なくたって、童貞捨てて彼女できたら急にえらそーになっちゃう男っているし。

B面鈴木がマユの部屋で、俺は金を切り詰めておまえに会いに来てるのに、
お前はハードカバーの本を買いやがってと言って本を床にばらまくシーンがありますが、
このハードカバーの本って、A面鈴木が貸した本ですよね。ううむ、なるほど。

この手の「なるほど」はいっぱいあったのですが、私が一番「ああっ!」と思ったのは
「クリスマス・イブのホテル」。
B面鈴木がキャンセルしたところにちょうどA面鈴木が予約を入れたと、
こういうわけですね! すごい!
「じゃあ、どこかで今日、失恋したカップルがいたってことね」
というマユのセリフを読み返すとさらにすごい。あんただよ!

謎解きのサイトを読んだりして、だいたいのことは腑に落ちたのですが、
私がちょっとわからなかったのが以下4点。

その1.石丸さんはバリバリの東京人なのに、一度「だもんで」と言っている。
だもんで、って、東海のほうの方言だと思うんだけどこれはなぜ?
私はここが伏線だと思っていたのですがぜんぜん違いました。

その2.北原の手品シーンがなんだか詳しすぎるというか、意味ありげすぎ。
マユのカギを使う手品あたり、何かあったのでしょうか?
「何かある?」と思わせて何もない、というのがミステリーなのか。

その3.B面鈴木が具合悪くなる一方だったのは、単に新生活で疲れてたっていう、
それだけのそれだけの話だったのですか?
私はどこかで毒でももられたのかと……。

その4.これは謎解きでもなんでもないんだろうけど、私が個人的に納得いかなかったこと。
中絶してすぐのマユは、なぜA面鈴木の「コンドームは持っていないけど大丈夫だから(させて)」という
申し出にゴーサインを出したのか。ほんとに、反省しろよ。しかも相手童貞だよ。


乾さんの本、他にもいろいろ出てるので、また読んでみたいと思います!
おもしろい本に出会うとそれだけで免疫上がります



化石発掘

2012-03-15 | kid

相方とこうたろう、お出かけの際に、
「恐竜の化石発掘キット」なるものを買ってきまして。



化石発掘。
最初から「トリケラトプスが出てくる」とわかっていながら掘る掘る。


私は愛知県の瀬戸市出身で、ここは「せとものの町」として歴史が長いため、
高校時代は山を掘ると土器のようなものを発掘することができました。
(そういう授業やイベントがあった)
これはなかなか味わい深い作業で、
かけらを壊さないように、そうっと土をこまかくけずっていくのが
とても楽しかったのです。心が静まるというか。

が、やっぱり男子…。

ガンガンガンガン!!!

と、親の仇を討つような勢い。
子供ってそういうもんか。仕方ないなぁ。

しかし帰ってきた相方も、さらに強く

ガンガンガンガン!!!

とやってくれまして、トリケラトプスの前足がぽきりと折れてしまう結果に。
この人たち、考古学者には向いていないようです。

意外に時間と手間のかかるこのキット、
私が一日外出しているあいだに男2人の手によって
ばらばらの化石たちがすべて発掘され、
アロンアルファでくっつけられ、




見事な化石標本になりました


「共喰い」ネタバレあり

2012-03-13 | book

「共喰い」田中慎也


今さらですが感想です。
ネタバレ満載です。


ストーリーとしては、本当にむごい。
絶対に映像化してほしくありません。
いくら芝居でも、演じる女優陣がどの人もかわいそうすぎる。
女の人には特にきつい話だと思う。
だから、私はこの本、誰にもお勧めしません。
性的にえぐい場面を受け付けない方は、この先のレビューも
読まないほうがいいと思います。
概要だけ聞いていたら私も絶対に手を出さなかったであろう、
忌むべき内容です。


が、

私はなぜか、読んでしまったのです。
「うへえ、なんてひどい話だ」と思いながらも、
途中で放り出すことなく、結末を知りたくて最後まで読まされてしまったのです。
そこが、田中さんの作家としての才覚なんだろうなと思いました。


ひとことで言って、「ぬらぬらした小説」。
ぬらぬらしたものばっかり出てきます。
うなぎもカタツムリも、殴られて血を流す女たちも、お父さんや17歳の主人公の性器も、
みんなぬらぬらしています。
そして締めくくりに生理の話。

お父さんは女の人を殴ります。DVというより、性癖です。
私は「どうして琴子さん(現妻)も仁子さん(元妻)もそれを受け入れているんだろう」
ということがずっと不思議でした。そのあたりはあまり心理描写がないので
私にはよくわかりません。そういう人もいるのかもしれない、と思います。


琴子さんは妊娠をし、お父さんから逃亡します。
子供を守るためです。
仁子さんは二度目の妊娠をしたときに堕胎していますが、
これも、人間に触られた赤ん坊を食べてしまうウサギみたいな、
母親の本能のような行動に感じます。
「あいつの子供としてこの世に生を受けないように」葬ってしまうのです。

仁子さんは、最終的にお父さんを殺してしまいます。
きっかけは、お父さんが主人公のガールフレンドに手をかけたことです。
仁子さんは、自分にされた仕打ちよりも、ずっと許せなかったのだと思います。
全世界の女を代表して、仁子さんはお父さんを「成敗」したのです。


私はこの小説の誰にも感情移入ができませんでしたが、
読み終わってから数日のあいだ、登場人物それぞれの気持ちを
思い巡らせていました。
それくらい、あとを引く小説でした。
読後感がさわやか、とかいうのではぜんぜんないのですが、
読書をしたな、という充実感がありました。



35歳

2012-03-06 | television
「最後から二番目の恋」というドラマを観ていて、ふと気が付いた。
中井貴一演じる50歳の兄が、坂口憲二演じる35歳の弟に諭す。
「おまえも50歳になって、50歳を味わえ」。
病持ちで、いつ命を落とすかわからない弟に、生きろと言っているのである。

私がアテンションしたポイントはそこではない。
中井貴一は、その昔、「Age35」というドラマで35歳を演じていたのだ。
彼は大手企業の課長だかなんだかで、2人(双子の幼稚園児)の子持ちだった。
田中美佐子が妻役で、瀬戸朝香と社内不倫していた。
田中美佐子にはかつての恋人が出現し、なんとなくいいムードになっていき、
瀬戸朝香は中井貴一の子供を妊娠して会社を辞めた。
と、まあ、35歳の主人公はずいぶんといろんなものをしょっていたのである。

ところが、「最後から二番目の恋」での坂口くんといえば、
いろんな女性に愛を与える天使と呼ばれた、鎌倉のカフェのオーナー。
現在はキョンキョンと恋人関係にあるのだが、
かっこよくて優しくて、なにしろ「若い男の子」というキャラが強調されている。

思えば、中井貴一はもうずーーっと何年も「おっさん」を演じているのだ。
(いえ、あんなステキな50歳もなかなかいないですけどね)
かたや、坂口くんはいつまでも「青年」を演じている。

ふたりの俳優がどうのこうのということではない。
つまりね、今の30代って、昔に比べて若者である期間が長いんだよ。
だから、「もう35だし」とか、ぜんぜん思わなくていいの。
今の35歳って、ひと昔前の25歳くらいなの。

という話です。
オチなし。
「Age35」の主題歌「いいわけ」はシャランQの名曲で、
当時カラオケでよく歌ったなあ。