みちくさ茶屋

いらっしゃいませ。どうぞごゆるりと。

種の保存

2009-10-12 | television
先週のZEROで宇宙飛行士の若田さんが出演していて、
「我々が宇宙へ行くのは、人類の種の保存の一環」というようなことを
話していて、ちょっと驚いた。

「宇宙=種の保存」という発想。
なんというスケールのでかさ。
「気の遠くなるような未来に、地球は消滅してしまうだろう。
そのときに人類が宇宙で生き延びることができないか、
今はそれをひとつひとつ模索している」というようなことだったと思う。

もちろんそのころに、若田さんご本人が生きているわけではない。
それこそ気の遠くなるほど先にいる子孫たちのことを考えながら、
彼(彼ら)は命をかけて空へ旅立つ。

若田さんのご家族とも、そういうことは話し合っているらしく、
お互いに「覚悟」はできているらしい。

私のような凡人には、ちょっと受け入れられないことだと思う。
「人類」というあまりにも大きな括りの(しかも遠い未来の)存続のために
今目の前にいる大切な家族の危険を容認するなんて。

ところで、若田さんが宇宙に持参していた勝海舟の本に
村尾さんがやたら食いついていて(村尾さんも愛読しているらしい)
若田さんも勝海舟の思想について少し語っていた。
それで私もちょっと興味を持って、本を買ってみようかなと思っていたところ
昨日、観るつもりも前情報もまったくなかったドラマ「JIN」が
思いがけず面白かったので観ていたら、勝海舟が小日向文世の姿で登場。
ええっ、このタイミングでなんで?
勝海舟がいったい私に何を伝えたいわけ?
ということで、今の私の検索ワードトップは勝海舟でございます。
5月、6月あたりはなぜか(Y150の影響もあってか)ペリーが
やたら目の前に現れてたんだよな。で、気になって調べちゃったりして。
昨日のドラマでも一瞬だけど「黒船は来ましたか?」ってセリフがあったし。

歴史に名を、功績を、言葉を残すということも、
人類の種の保存のひとつかもしれないなと思う。
人間は知恵やら言葉やらを与えてもらってしまったばっかりに、
何も考えずにただ生きるにはあまりにも長い一生を送らなくてはならないのだ。

話それましたが、「JIN」、やたら面白いです。
日曜日のお楽しみができました。



処世術

2009-10-09 | kid
TSUBAKIのCMの、
集団で歩いてて振り返る
滝川クリステルが可愛い。
すっごい可愛い。

テレビに向かって「かわいい、かわいいよ~」と言っていたら、
こうたろうが

「お母さんのほうが可愛いじゃん」

お、おまえ~~~。
いったい何が欲しいんだ、言ってみろ。


消費者のつぶやき

2009-10-06 | monologue
スーパーでホッケを買おうとしたら、
腹の部分に白い粉のようなものが少しついているのに気が付いた。
よくわかんないけど、こういう魚の開きについているぶんには
見たところそんなに不自然な感じではない……んだけど、
やっぱり気になったので、念のため店員さんに「これ、なんですか」と訊いてみた。

そしたら、裏から鮮魚担当のおじさんが出てきて、

「発砲スチロールの粉っすね!」

と、かる~く言われました。

え、えーと。
それは、その、普通によくあるコトなんでしょうか?
戸惑っていると、

「うちのバイトが、ちゃんと取るの忘れてたんですね!」

と、あかる~く言われました。

…………。
………………。

ちょっと待て。

最初に出てくるべき言葉を聞いていない気がするのは
私が「うるさいおばちゃん客」なんでしょうか?


発砲スチロールだぁ?
普通、干物の腹なんか調理するとき誰も洗わないんだよっ。
そのまま焼いて食べちゃうとこだったでしょうが~~っ!!

実際、食べちゃった家庭がいくつもあると思う。
このとき、私が見たホッケのパックにはみんなこの白い粉が
くっついていたのだ。

そりゃぁ、それくらいで死んだりはしないだろう。
でも、熱で溶けた発砲スチロールが無害だとは私は思えない。
「大丈夫」って範囲にせよ、消費者として笑える話じゃないと思う。
100歩譲って「気付かずに店頭に並べてしまった」というところまでは
仕方ないとしても(いや、それだって仕方ないじゃすまないけど)、
それを客に指摘されて、なんなの、そのへっちゃら感は。
しかもバイトのせいにしておしまいって、なにごと?

「これ、どうしたらいいんですか。洗って取るんですか?」と私が言ったら
「新しいの出しますよ!」と、裏にいったんひっこんで
まだ解凍しきれていないようなホッケをパックして持ってきた。

「他のパックにも、みんな粉ついてましたよ」と伝えて
私はその場を後にしたけど、結局そのおじさんからは
「すみませんでした」のひとことが聞けなかった。

ただ謝れって話じゃない。
私はそのおじさんに、悪いと思って欲しかったのだ。
これからここで魚買うときはちゃんとチェックしないとだなぁ。


週末、森で

2009-10-02 | book

「週末、森で」
益田ミリ


久々、読書記録。
感想を書きたい本がたくさんあるんですが、珍しく出たばかりの新刊を読んだので即アップ。

益田ミリさんとの出会いはショーゲキだった。
私が最初に読んだ彼女の著書は「結婚しなくていいですか? すーちゃんの明日」だったんだけれど、こんなほのぼのした絵であんなに泣かされたりグサグサ突き刺されたり(良い意味でね)、ううう~~んと唸らされたりするなんて思わなかったので、腹の底から驚いた。以来、大ファンです。「ああ、この絵だからこそ、こういう話が活きるんだな」とすぐに納得も。

さて、今回の「週末、森で」。(漫画です)
森(のそば)で生活しよう、と思い立った早川さん。東京で仕事にいそしむ友人マユミちゃんとせっちゃんが、時々週末遊びに来て、早川さんの生活からいろんなことを感じ、学んでいく。
面白いのが、どう見ても主人公は「早川さん」なのに、早川さんの胸のウチはぜんぜんといっていいほど表面化していないこと。たんたんと、すごく深いコトを、ぽそっと言ったりするだけ。でも、多くを語らない彼女の背景にいろんなものが見えてくるから不思議だ。
3人は、30代半ばの独身女性。彼氏なし。この設定はミリさんのお得意とするターゲット層だけれど、この本に描かれていることは、この世代の女性が今の日本をどう生きていったらいいのか、というテーマからは少し外れている気がする。

私がこの本を読み終わって強く感じたのは、スローライフは都会でも実行できる、ということ。
それから、経験というのは、人を通してでも得られる、ということ。

早川さんは、森(のそば)に住みながらも、畑を耕したりしない。お取り寄せで各地の名産品などを楽しんだりする。そしてミリさんのすごいのは、ここで「イナカ暮らしを選びながら、なぜ自給自足をしないのか?」ということを、早川さんに語らせないところだ。
「東京に戻るときに困るから」と言って、猫を飼ったりもしない。鳥の名前や、食べられる木の実を覚えたりしている。つまり、早川さんは、「いつかは東京に戻る」前提で、森の生活を「ただ、今、選んで味わっている」という状況なのだ。その身軽さがすごくいい。何も捨てていないし、気負っていないし、べつに自分探しもしていないし、何より、「自然の中で生きることこそが人間の正しいありかた」的なおしつけがましさが、まるでない。
森といっても、彼女が住んでいるのは「駅前」らしい。「散歩がてらスーパーに買い物に行く」こともあるそうだし、「豆腐屋のおじさん」とか出てくるし、着付けの技術を活かして美容院にお手伝いに行ったりもするというので、森といっても、そこそこ「町」なんだろうと思う。
つまり、それくらいが、都会育ちの30代女性にとって適切なイナカ暮らしなのではないか。それ以上「不便」な僻地へ行ってしまうと、逆にストレスのほうが多くなってしまうと思う。だからこそ、早川さんの生活はリアリティを持って「自然っていいよ」「スローライフってこんなことだよ」と私たちに教えてくれるのだ。

マユミちゃんとせっちゃんは、仕事先やら日々の生活の中で、しょっちゅうイライラし、しょっちゅう煩わされ、しょっちゅう歯軋りしている。そして、ふと、早川さんと過ごした週末を思い出す。そのときのことが、今自分を乱している出来事への対処法として変換されていく。
早川さんが女友達に投げかける言葉が、ひとつひとつ重い。気付けば、私も「早川さんの女友達」になって、彼女の話に耳を傾けている。

私が一番、好きだなと思った早川さんの言葉は、「人は目的地に行くだけのために歩いているのではない」というもの。本当にそうだ、目的地に行く途中にだって、すてきなことはたくさん転がっているし、もっといえば、目的地なんかなくても、自分がどこへ向かっているのかわからなくても、ただ歩くだけだって、いっぱい価値があるんだと思った。
ラストでせっちゃんが知り合ったばかりの男性にカイツブリについて話しているとき「詳しいですね」と言われて、「うけうりなんです」と答えるところがあるんだけれど、これもいいなぁ。そう、「うけうり」っていうのも、すごく素晴らしいこと。自分を世界を広げてくれる人やモノとの出会い。それがいかに人生を豊かにしてくれるか。私はこうたろうの「うけうり」で、だいぶ昆虫博士になりました(笑)。

誰もが早川さんのような生活ができるかといったら、それは違う。
彼女の「フリーの翻訳家」という職業がこの暮らしを確立させているところは大きい。
「仕事は減ったよ」というものの、生活していけるくらいの経済力はあるようだし。
早川さんのようなことができるのははっきり言ってごく少数派で、マユミちゃんやせっちゃんのように、「会社(職場)に行く」ということが仕事のうちという人が大多数だ。
だからこそ、こんな友達がいるってこと自体、マユミちゃんやせっちゃんの財産だなと思う。

あと、ちょっと笑ってしまったのが、マユミちゃんが道に転がっている空き缶を、素通りしようとしたものの引き返して拾ってゴミ箱へ捨てる場面。「誰も見ていないところで咲く花もある」とマユミちゃんは思い、胸を張って歩く。……のですが、「あ~、今の、石油王が見ていて、求婚してくれないかな」なんて思ったりもしちゃうんですね。こういう「女のホンネ」を描くのがミリさんってホントにうまい。彼女の本はどれもお勧めです。