よく図書館にリクエストして読みたい本を取り寄せてもらうのですが、引き取りに行ったときに、あっ、これも読みたい、これも、これも、となってしまい、そんなつもりじゃなかったのにたくさん本を抱えて帰ることがあります。
貸出期間2週間で読み切れるかなー?と思ったのですが、なんだか狂ったように2日で読んでしまいました。
食べるのが好きなひとがストレスでつい食べ過ぎてしまうような感じで、現実逃避したくてつい一気に読みすぎた。胃もたれみたいに、脳もたれしてしまったので、ちょっとここで消化。
あんまりいい読み方じゃありませんね。気を付けます。
1.「三面記事小説」角田光代
おもしろかった! ある意味ホラー。ぞくぞくします。
実際の事件をもとに紡ぎ出された角田ワールド。
6つの短編から成り立っているのですが、それぞれの扉にベースとなった事件の新聞記事が90度角度を変えて薄く載っており、1話目は新聞記事を読んでから小説に入ったのですが、それだとオチがわかってしまってつまらないので次からは最後に読むようにしていました。
犯罪者たちのそれぞれの事情や心情、状況……
角田さんは本当にうまい。
登場人物の狂気の中で、「本当に悪いのは誰なんだろう?」と考えさせられました。
2.「七十歳死亡法案、可決」垣谷美雨
3月に図書館にリクエストして、やっと番がまわってきました。
近未来、政府が「日本国籍を持つ者は全員70歳になったら安楽死させる」という法案を出し、それが2年後にせまっている…というところから物語は始まります。
テーマはずいぶんとブラックなのですが、内容というか、テンポがかなり軽くて登場人物の言動に首をかしげることが多く、「これはどうなの?」と疑問出しの附箋をぺたぺた貼りたいような箇所がところどころにありました。
ネットでの書評を読むと「読後感はさわやか」という意見がよく見られますが、私は、「えーっ、そんなぁ」ってドッチラケでした。あの法案にふりまわされた人々の不幸を思うとやりきれません。破産した人も自殺した人もいるはず。主人公家族それぞれの行く末も、「そんなにうまくいきまっかいな」と鼻白んでしまった。
期待値が高かっただけに、ちょっと残念な作品でした。
3.「きよしこ」重松清
吃音症の先生が主人公の「青い鳥」という小説が良かったよ、と友達に勧められてリクエスト中なので、その前にこちらを読みました。
本文もしみじみとしたけれど、プロローグとエピローグの「君」に宛てた手紙がとてもいいです。
重松さんご自身が吃音症で、「かきくけこ」が言いづらく、子供のころ自分の名前「きよし」を発音するのも苦労されていたそうです。
吃音症の息子を持つ母親から「吃音症なんかに負けるなと手紙を書いてやってほしい」という、返信用封筒入りの手紙をもらったときの、重松さんの心のうちが胸にささりました。
「吃音症なんか」の「なんか」が悲しかった、と。
息子を愛すればこその母親の気持ちと、重松さんが背負った痛み。どちらにも、いろんなことを感じました。
4.「ヘヴン」川上未映子
いじめについての小説だとは知らずに手にとってしまい、残酷なシーンが現れたときに思わず本を閉じそうになりました。でも川上さんの文章はやっぱり魅力的で、もしかしたら最後に晴れ晴れするような展開が待っているのかもしれないと思い、つらい場面はななめ読みしながら完走。
うう、すっごく重かった。大好きな川上さんの小説でしたが、読んだことをちょっと後悔しているくらいです。
途中、いじめにあっている主人公が、いじめサイドの百瀬という少年と1対1で会話する、けっこう長いシーンがあり、ここだけは何度も読み返してしまいました。
いじめられている人間のいいぶんを書いたお話はたくさんあるけれど、いじめる側からの理路整然とした意見(?)をここまで披露しているのはあまりないと思う。
目をそむけながら読んだ小説でしたが、川上さんが、真正面からいじめを「きちんと」描いているのが伝わってきて、作品としては素晴らしいと思います。
でも、ほんとつらい気持ちになるから、読まないで(泣)。
5.「いつから、中年?」酒井順子
「ヘヴン」で相当しんどい思いをしたあとだったので、このコラム集にはずいぶんほっとさせてもらいました。
「おふくろからオカンへ」と「聖子ちゃんという職業」が特におもしろかったです。
ユーモアのある人は、常に冷静な観察眼を持っているんだなぁ。酒井さんに脱帽です。
貸出期間2週間で読み切れるかなー?と思ったのですが、なんだか狂ったように2日で読んでしまいました。
食べるのが好きなひとがストレスでつい食べ過ぎてしまうような感じで、現実逃避したくてつい一気に読みすぎた。胃もたれみたいに、脳もたれしてしまったので、ちょっとここで消化。
あんまりいい読み方じゃありませんね。気を付けます。
1.「三面記事小説」角田光代
おもしろかった! ある意味ホラー。ぞくぞくします。
実際の事件をもとに紡ぎ出された角田ワールド。
6つの短編から成り立っているのですが、それぞれの扉にベースとなった事件の新聞記事が90度角度を変えて薄く載っており、1話目は新聞記事を読んでから小説に入ったのですが、それだとオチがわかってしまってつまらないので次からは最後に読むようにしていました。
犯罪者たちのそれぞれの事情や心情、状況……
角田さんは本当にうまい。
登場人物の狂気の中で、「本当に悪いのは誰なんだろう?」と考えさせられました。
2.「七十歳死亡法案、可決」垣谷美雨
3月に図書館にリクエストして、やっと番がまわってきました。
近未来、政府が「日本国籍を持つ者は全員70歳になったら安楽死させる」という法案を出し、それが2年後にせまっている…というところから物語は始まります。
テーマはずいぶんとブラックなのですが、内容というか、テンポがかなり軽くて登場人物の言動に首をかしげることが多く、「これはどうなの?」と疑問出しの附箋をぺたぺた貼りたいような箇所がところどころにありました。
ネットでの書評を読むと「読後感はさわやか」という意見がよく見られますが、私は、「えーっ、そんなぁ」ってドッチラケでした。あの法案にふりまわされた人々の不幸を思うとやりきれません。破産した人も自殺した人もいるはず。主人公家族それぞれの行く末も、「そんなにうまくいきまっかいな」と鼻白んでしまった。
期待値が高かっただけに、ちょっと残念な作品でした。
3.「きよしこ」重松清
吃音症の先生が主人公の「青い鳥」という小説が良かったよ、と友達に勧められてリクエスト中なので、その前にこちらを読みました。
本文もしみじみとしたけれど、プロローグとエピローグの「君」に宛てた手紙がとてもいいです。
重松さんご自身が吃音症で、「かきくけこ」が言いづらく、子供のころ自分の名前「きよし」を発音するのも苦労されていたそうです。
吃音症の息子を持つ母親から「吃音症なんかに負けるなと手紙を書いてやってほしい」という、返信用封筒入りの手紙をもらったときの、重松さんの心のうちが胸にささりました。
「吃音症なんか」の「なんか」が悲しかった、と。
息子を愛すればこその母親の気持ちと、重松さんが背負った痛み。どちらにも、いろんなことを感じました。
4.「ヘヴン」川上未映子
いじめについての小説だとは知らずに手にとってしまい、残酷なシーンが現れたときに思わず本を閉じそうになりました。でも川上さんの文章はやっぱり魅力的で、もしかしたら最後に晴れ晴れするような展開が待っているのかもしれないと思い、つらい場面はななめ読みしながら完走。
うう、すっごく重かった。大好きな川上さんの小説でしたが、読んだことをちょっと後悔しているくらいです。
途中、いじめにあっている主人公が、いじめサイドの百瀬という少年と1対1で会話する、けっこう長いシーンがあり、ここだけは何度も読み返してしまいました。
いじめられている人間のいいぶんを書いたお話はたくさんあるけれど、いじめる側からの理路整然とした意見(?)をここまで披露しているのはあまりないと思う。
目をそむけながら読んだ小説でしたが、川上さんが、真正面からいじめを「きちんと」描いているのが伝わってきて、作品としては素晴らしいと思います。
でも、ほんとつらい気持ちになるから、読まないで(泣)。
5.「いつから、中年?」酒井順子
「ヘヴン」で相当しんどい思いをしたあとだったので、このコラム集にはずいぶんほっとさせてもらいました。
「おふくろからオカンへ」と「聖子ちゃんという職業」が特におもしろかったです。
ユーモアのある人は、常に冷静な観察眼を持っているんだなぁ。酒井さんに脱帽です。