みちくさ茶屋

いらっしゃいませ。どうぞごゆるりと。

富士サファリパークの巻

2008-09-30 | kid
土曜日、相方のお友達家族と一緒に
富士サファリパークに行ってきました。

相方からその企画を持ちかけられたとき、
まず課題だったのがこうたろうの車酔い。
「友達の住む静岡まで、レンタカーを借りて行く」ということに
なったのだが、なにしろこうたろうは、タクシーで家から駅まで
(徒歩だと15分)の距離でも酔うことがあるくらい。
相方は「大丈夫だって~」と言い張っていたが、
私にはけっこうなチャレンジだった。
(だいたい、世話するの私じゃんか!)
「朝早く、眠った状態のまま車に乗せる」というのが
一案だったんだけど、
こういうときって子供は早起きなのよね……

そこで、初めて酔い止めの薬を購入。
少し弱めの液体タイプと、少し強めのチュアブルタイプの
2種類用意しておいた。
こうたろうに選ばせたら、液体タイプがいいというので、
当日の朝お試し。

最初はものめずらしさで喜んでいたこうたろう、
途中で「これ、まずい……」と言って返却。
えー、弱いほうの薬だし、
半分じゃ効かないかもしれないじゃん……
だからといって、半分は飲んでいるわけなので、
強いほうのチュアブルも
すぐには与えるわけにいかず、そのまま走行。

案の定、「……きもちわるい……」と言い出したものの、
横にならせたらあっさり入眠。よかったよかった。

そして無事、お友達の家に到着し、
今度はワゴン車に乗り換えて1台でサファリパークへ。
現地はかなり寒いということだったので、
私もこうたろうもパーカーを着込んで乗車。
こうたろうのパーカーは、おニューのかわいいやつ♪
お友達(女性です)は結婚式でお目にかかって以来だったんだけど、
今では彼女も2児の母。上のお兄ちゃんはこうたろうと同じ年で、
いろいろとお話しできて楽しかったです。

ありがたいことに、お友達の家からサファリパークまでわずか10分くらい。
こうたろうは、ぎりぎりのところで
「きもちわるい」と言い出したものの、
なんとかなだめすかして到着。
おおー、よかった、ケロンパしないで
とりあえずサファリパークまで来られた……。


が。


事件は、昼食後、私がトイレに行っているときに起きた……

トイレから戻ってくると、こうたろうが飴を持っている。
お友達(子供)にもらったらしい。
今までこうたろうに飴を食べさせたことは
ほとんどないのだが、もう口に入れかけていたし、
特に止めることもないかとそのままにしていた。

口に入れてすぐ、こうたろうが軽く咳をした。
そのとき、あろうことか、うっかり飴を飲み込んでしまったのだ。

「うぐっ……」と顔をしかめるこうたろう。
うわー、飲んじゃった? 飲んじゃった?
私は幼少のころ、飴を飲み込んで
死にそうに苦しかった経験があるので一気に青ざめた。
どうも、親子して気管が狭いらしい。
私は今でも、バファリンが大きすぎてそのままでは喉につかえ、
割らないと飲めない。
テーブルに残っていたジュースを飲ませたり、
胸をとんとん叩いたりしてみる。
ホントは逆さまにして背中を叩くのがいいらしいけど、
食事の直後なので、さかさの状態で
吐嚼物が喉につまるのも危険だし。

こうたろうは、いやな顔をしながらも
普通に呼吸はできているようだが、
たまに「ああああああ~~~~!!!!」
叫んで首を押さえるのでそれがこわかった。
これはどう見ても喉に飴が引っかかっているのだ。

なのに、なのにですよ、きいてくださいよ、
うちの大らかな相方君ときたら、
「そんなに苦しがってないから大丈夫じゃない? 
もう喉は通り過ぎてると思うよ。
ハッカの味だったから、喉がスーッとしてイヤなんだよ。
喉につまってたら、息できないじゃん」
などと、などと、のたまうのである!!
久しぶりに、相方のこののんきさに殺意を覚えました。
これのどこが苦しがってないっていうのさ!!!

まあ、飴をくれたお友達の手前もありましょう。
そのへんはそう解釈して、許容する。
私も、お友達には笑顔で
「飴は溶けるから、時間がたてば降りると思う」と言ってたし。

しかし、飴が自然に溶けるのを悠長に待っているのも
いかがなものか。
レストランを出て、相方にあったかいお茶を
買ってきてもらうことに。

相方が自動販売機を探しに行っている間に。

こうたろう、

リバース!!

うおおお~、食べたばっかりのモノが全部出たよ!
そして、その中に飴玉が光っているのを発見。
出たー、よかったーーー!
異物を出そうとする体のメカニズムに軽く感動した。
ありがとう、こうたろうの正常な体の機能さん。
店内から出て外にいたのも不幸中の幸い。
スタッフの人を呼んだら、さすが動物園、
手際よく汚物処理の道具を持ってきて処理してくれました。

そして不幸中の幸いその2は、
こうたろうが万が一車酔いしたときのために、
着替えをワゴンの中に置いてあったこと。
駐車場に行って車内で着替えさせるものの、
しかし上着までは持ってきていない。
パーカーが一番汚れてしまっているのだが、
長袖Tシャツ一枚では寒い。
(気温が16度くらいしかなかったうえ、小雨もぱらついていた)
「こういうところなら、お土産屋さんに
パーカーとか売ってるかも」と思い立ち、
急いでお土産屋さんへ。

そして物色するが、
……高い。

しかも、値段のわりには薄手なトレーナーばっかりで、
胸にでっかく「富士サファリパーク」とか入ってるし。
かろうじて、一枚だけ、ロゴも小さめで、フード付きの
厚手パーカー風トレーナーを見つけたのだが、これが、
……白い。

こんなに真っ白な服、子供が着たらどう考えてもワンシーズンである。
値段を考えるとものすごくコストパフォーマンスが悪い。
でも、この寒さを考えたら、背に腹は変えられない……。

出すものを出してすっきりしたこうたろうは、
新しい服をうれしそうに着て、
「さふぁりぱ~~く♪」などと歌いだした。
ま、無事でよかったよかった。

そして、いよいよメインイベント、
ジャングルバスである。
金網付きの専用バスに乗って、
車に近づいてきたライオンや熊に餌をあげることができるのだ。
所要時間は50分から1時間ということで、
ここで車酔いさせるわけにはいかない。途中下車できないし。
(まあ、さっき全部出ちゃったから吐くものもないだろうけど……)

ということで、少し強めのチュアブルを与える。
こちらはお気に召した様子。
サイを形どったバスに乗り込み、いざ、サファリゾーンへ!

バスはかなり揺れたのでちょっと心配したけど、
酔い止めの効果はてきめん。
薬のおかげで、



爆睡。




ねえ~~、ライオン来るよ、ライオンだよ、
らくだも来るよ、こんな近くで見られる機会はそうないよ、
ほらっ、餌あげて、餌!!

動物のスポットが訪れるたび、なんとかたたき起こすが、
普通の眠気とはわけが違うようで、
どうにもこうにも目が覚めないらしい。
ぼんやりした顔でライオンに肉をやっていた。
(こわいな~~~、薬って)

バスから降りて、みんなでお土産屋さんへ。
こうたろうは相方に抱っこされて半分寝ていたが、
虫のおもちゃをめざとく見つけてリクエストし、
相方に買ってもらっていた。

帰りにこうたろうに
「今日は何が楽しかった?」と聞いたら、
「虫のおもちゃ買ってもらったこと~!」
と元気のいい返事。

……そんなの、コンビニにも売ってると思います。


いろいろあったけど、トータルで楽しかったし、
友達とも仲良くなれたし、全員無事に帰ってこられたし。
いろんな意味で忘れられない1日となりました。

眼科の巻

2008-09-26 | kid
夕方、保育園から電話があり、
「こうたろうくんが、お友達に顔を蹴られてしまって、
目の縁を切ってしまいました。
見たところ皮膚だけだと思うのですが、目は心配なので
念のため病院に行こうと思います」
という連絡。
たまたま、在宅で仕事中だった私。
10分後、最寄の総合病院で落ち合うことに。

あわてて駆けつけると、
もうこうたろうは担任のA先生と一緒に受付にいて、
拍子抜けするくらい元気だった。
歌舞伎役者みたいに目尻が切れてはいるけど、
見たところ白目もきれいなので安心。
A先生が受付で状況を話し、
何科を受診すればいいのかきいてくれ、眼科へ。

眼科はちょうど診察時間が終わったところだったのだが、
受付の方が内線をしてくれて診てもらえることになった。
待合室には誰もいなくて、
女医さんと、看護士さんが3人待っていてくれていた。

「お友達に顔を蹴られて……」とA先生が話すと、
女医さんが眉をひそめた。
「蹴られたの? それは聞いてなかった。切っただけとしか。
○○さん(看護士さん)、△△と□□の検査の用意して。
それと、※※の点眼と」
と、てきぱき、てきぱきと指示。
皮膚の傷自体は小さくて浅いものだったけど、
眼球に損傷がないか、角膜に傷がないか、
目の奥で出血していないか、視力に問題はないか……などなど、
ありとあらゆる方向から、1時間近くかけて
すごくていねいに検査してくれた。
ここの総合病院はいつもすごく混んでいて、
さんざん待たされたあげくあんまりちゃんと
診てもらえなかった、という経験があったので、本当に驚いた。
いや、驚いた、というのを通り越して、感動すらしてしまった。

検査のうちのひとつに、
女医さんが、鉛筆を一本、こうたろうの目の前に掲げて
「これ、何本に見える?」というのがあった。

しかしこうたろう、にそにそ、にそにそ、
笑っているだけで答えない。
「こうたろうくん? こうたろうくん、これ、何本?」
女医さんが何度か聞いたあと、やっと答えたのが
「わかんな~い」

ええっ!??
や、やばくないか、それ!
うちどころが悪かったか?

……いいえ、こうたろうと5年のつきあいになる私には、
ちゃんとわかっていました。

この女医さん。


こうたろうの、モロ好みのタイプ……。


だめなのだ、こうたろうは、
好みのタイプの女性に話しかけられたり、
好きな女の子が可愛らしい格好をしていたりすると、
でへでへの酔っ払いみたいになっちゃうのだ。

「いつもこんな感じですか? テレ屋さんなのかな」
女医さんが私に尋ねたので、
「いえ、あの、先生が美人なので……」
と答えると、女医さんに「いえいえ」と軽く流されてしまった。
先生……冗談じゃなくて、マジなんです……。

結局、私とA先生の必死の質問(というかほとんど誘導尋問)により、
鉛筆は1本に見えているらしいということになり、
その検査は終了。

そのあと、中の状態を見るために瞳孔を開かせるという
目薬を何度かさす。
これが一番てこずったが、
瞳孔が開いたこうたろうの顔……忘れられないわ。
瞳孔開いてると、ちょっと不思議な表情になるんですね。
「こうちゃん、なんかひと味ちがうわ!」と
A先生も顔をのぞきこんでいた。

もろもろの検査の結果、切れているのは皮膚だけで、
角膜に傷もないし、視力もすごく良いし、
目の動きも正常なので大丈夫でしょうとのこと。
ただ、脳に近い場所なので、あとから症状がくることもあるから
数日は様子を見てください、ぐったりしていたり、
吐くようなことがあれば脳外科に救急で
行って下さいとのことでした。
場所的に、縫うほうがかえって危険なので、
縫うのはやめましょうとの判断。

「明日、傷を見せにきてください」と言われ、
会社を休むか遅刻していくかだな~と思っていたら、
A先生が
「保育士が連れてきますから、
お母さんはお仕事に行ってください」。


えーっ、いいの? いいの?
園内で起きたことだと、保育園ってそこまでやってくれるの?

ケガはするよりしないほうがいいんだけれど、
今回のこの件で、私が落ち着いていられたのは、
いろんな好条件がそろっていたからだ。

1.A先生が迅速に病院へ連れて行くという判断をしてくれたこと
(あと10分遅かったら、お医者さんが帰ってしまって
診てもらえなかったかもしれない)
2.私がたまたま在宅の日だったこと
(前後の日だったら、神保町まで行っていたので
戸塚に戻るまで1時間以上かかった)
3.家と保育園と病院が、近距離だったこと
(バスで通っている親子も何組かいます)
4.その総合病院で午後に眼科が開いている日だったこと
(翌日だったら午前のみだった)
5.診療のあいだ、ずっとA先生がそばにいて
一緒にお医者さんの話を聞いていてくれたこと

本当に、A先生には感謝。
彼女は私も大好きな保育士さんなので、
一緒にいてもらって心強かった。
保育園でこれくらいのことが起きても、子供が元気なら、
「こういうことがありましたので様子をみてください」とか、
「心配だったら病院に行って下さい」とだけしか
言われなくても仕方ないような傷だったのに、
A先生が「目だから、念のため」と
すぐに動いてくれたことに誠意を感じた。

病院に行く前にbanaちゃんに
状況を説明した短いメールを送っていたのだが、
受診後こうたろうが無事だったことを知らせ、
そのあと帰りに会ったときに、banaちゃんが
「こうたろう! よかった、無事で。大丈夫でよかった」
と言って目に涙をためているのを見て、私も泣いちまいました。

子育てって、たくさんの人の手が加われば加わるほど、
幸せなことが多いです。逆も然り。
私も、誰かにとってその「手」のひとつになれたら……と思います。

スポットライト

2008-09-19 | people
このブログに何度か書いている、友人Cちゃんのこと。

彼女は、10年前に私がOL雑誌の編集をしていたころの同僚である。
といっても、一緒に机を並べていたのはわずか1ヶ月だけ。
Cちゃんは某大手出版社に転職し、
ビジネス書を主に手がける書籍編集者となった。

彼女は私が知る中で最も有能な編集者だが、
そんなCちゃんが、このたび書店で大きくスポットを浴びることに。

場所は文教堂渋谷店。
そこで「この編集者が凄い!」というフェアをやっており、
なんと、「Cちゃんの棚」があるのである!
「この編集者が凄い!」というコンセプトがまず凄い!
文教堂さん、やりますね。

Cちゃん本人がよく言っていることだけれど、
編集者というのは、本来、黒子的存在。
「私が! 私が!」という目立ちたがり屋さん人は、
実は編集者には向かない。
本がすごく売れたとして、
注目されるのはそのタイトルであり、著者である。
だから、Cちゃんのように、編集者がクローズアップされるというのは
相当のこと。
「この人が手がけた本は必ず売れる!」と
世の中がよっぽど認めたという証なのだ。

早速、訪れてみた。
Cちゃんの棚には、一番上に彼女の履歴書(フェア用に作成されたもの)と
本のリスト冊子が置かれ、
彼女が編集した10タイトルほどの書籍が並んでいた。
それぞれの本の近くには、Cちゃん自ら書いたポップがついている。
字がきれいだし、色使いもいいのでとても見やすかった。

作家だってこんなふうにコーナー作ってもらえる人は少ないのに、
「○○C子」だけの棚があるなんて、本当になんということだ、Cちゃん!
履歴書を読んだり、並んでいる本を立ち読みしたり、
彼女のパワーを受け、ぽーっとなって立っていたら、
いつのまにか一時間が過ぎていた。
その間に、何人もの人が、Cちゃんが作った本を手にとっていた。
Cちゃんの棚以外のところでも、「書店ランキング」の棚に
Cちゃん担当の本が……
すごいよ、ハリー・ポッターより夢ゾウより上にランクされてるよ!

彼女のフルネームでネット検索してみると、たくさんヒットする。
今までも、あちこちのメディアで取り上げられてきた人なのだ。
インタビューだったり、コメントだったり、名前だけ紹介されていたり、
いろいろな形で。
中でも印象的だったのが、有名な作家さんが書かれた、
「この本は面白いなと思って奥付を見た2冊の本が、両方とも、
僕の本を担当してくれたCさんの編集したものだった」
という記事。
本当に、ため息が出るような話だ。
黙っていても、有能な人物は有能な人物によって発見されてしまう。

Cちゃんが本当にすごいのは、こんなふうに脚光を浴びても、
ちっともえらそうにしないところだ。
そして、さらにもっとすごいのは、
不必要にいやらしい謙遜をしないところ。
いつも、堂々としている。
賞賛を、きちんと真正面で受け止める。
かつ、鼻にかけるようなところがぜんぜん、ない。

同じ部署で、同じことをやっていたはずの彼女が、
バキバキと音を立てるように大物になっていくのを、
沿道で旗を振って応援している私です。

このフェア、10月5日までやっています。
機会があれば、ぜひみなさんも足を運んでみてください。


セミ物語・その2

2008-09-17 | kid
セミ(の死骸)を大事に大事に持って帰ってきたこうたろう。
相方の説得により、
「お外で寝かせてあげようね」ということになった。

翌日は土曜日で、久しぶりにファミレスでランチ。
店に行く途中、マンションの外周に植えてある桜の木の
添え木のあたりに「寝かせて」あげる。
私は土に埋めたかったのだが、こうたろうはそこまで
ちょっと納得できなかったようだ。
こうたろうに聞えないように、相方が
「カラスに食べられちゃうかもな」
と言った。

そして食事を終えて戻ってくると、
まっさきにセミのところに走っていくこうたろう。

「あ……」

絶句して立ち止まる。
私も寄ってみると、
セミに、無数のアリがたかっていた。

「……カラスじゃなかったか」と
相方がつぶやいた。

「アリは、セミさんを食べてるの?」
意外にも、冷静に理解しているこうたろう。
それで私もちょっと安心した。

「そうだよ。それでアリは生きられるんだよ。
こうたろうも、豚とか牛とか鶏とか、
生き物を食べて生きてるでしょう。それと同じだよ。
生き物は生き物を食べて、そうやって命をまわしていくの。
だから、悲しいことじゃないんだよ」

こうたろうは無言のままうなずいて、
黙って家の中に入った。
そして、しばらくしんみりしていた。
どこまでわかっているのだろう。
自分が豚や牛や鶏を食べて生きているなんて、
実のところ、なんのことやら、なのかもしれない。
私だって、実感はない。
というより、実感しないようにしているのかもしれない。

某お笑い芸人がバラエティ番組で
食事のときに「エビにもらったこの命!」とか
「鶏にもらったこの命!」などと言うのが私は好きで、
私もときどき、そんな気持ちで食べている。
エビや鶏は、私に食べられて、私になる。

だけど、私の命は、他の生き物にはまわっていかない。
そういうことがまったくないとは言い切れないけど、たぶん。
納骨されれば土の養分になることもない。
「そうやって命をまわしていくの」。
自分でそう言っておきながら、
人間とは、なんと無益な、ただ有害なだけの生き物なのだろうと
少し考えてしまった。


セミ物語・その1

2008-09-12 | kid
こうたろうは虫が苦手だ。
私はずっとそう思っていた。
私が、本当にすっっごく虫がダメなので、
遺伝だと信じていた。

でも、遺伝ということで言えば、
こうたろうには、虫好きの血も半分流れているのでした……

こうたろう、
この夏、虫にめざめる。


家の中とちがって、保育園は虫を思う存分観察できる場所。
小さなケースに、クワガタとカブトムシとかたつむりがいる。
どうかすると、カミキリムシとかもいる。
こうたろうは、給食室の先生に
「かたつむりのごはんくださ~い!」
などとエサをもらいに行き、お世話係を買って出ているらしい。

お散歩で見つけたセミの抜け殻を大事に大事に持ち歩き、
親戚の集まりにさえ持っていって披露する始末。
前はミニカーオンリーだったのになあ。
お絵かきといえば車ばっかり書いていたのに、
このごろは夢中になってカブトムシやクワガタを書いている。
それがだんだん、うまくなっていくので面白い。
最初はクワガタの足をいっぱい書いていたのが、
今ではちゃんと6本書く。
足の節までていねいに書き込む。スゴイ。

そして先日のこと。
私がひとりでお風呂に入っていたら、
こうたろうがドアのところで

「もー、お母さん、早く出てきてよ~。
見せたいものがあるんだから~」

と、うずうずしている。
急いで出ていくと、こうたろうが笑顔で
お菓子の空き箱をハイっと渡してくれた。

「なあに~?」とふたを開けると、

中からセミの死骸が!!!

思わず「キャー!」と悲鳴を上げてしまった私。
だって、いきなりセミが出てくると思わなかったし。
それに、セミの死骸って、
生きてないのに目が真っ黒でつぶらで
それが逆に怖いのだ。

好意的な反応を見せなかった私を見て
こうたろうの顔がみるみるゆがみ、
うえっ、うぇっ……うわーーーん!
と泣き出してしまった。

しまった……。
なるべくこわがってる姿を見せちゃいけないと
思っていたのに。
泣き声を聞きつけて、相方が
「だから、お母さんには見せないほうがいいよって
言ったのに……」と苦笑している。

こうたろうにしてみれば、大事なセミさんだったのだ。
箱にしまった宝物を、お母さんに見せたかったのだ。
好きな女の子にカエルをあげて
いやがられる男の子の話とかって
昔から聞くけど、そんな感じなんだろうなあ。
本人にとってはすごいイイモノだから、
好きな人に見せたいんだよね。

ごめんね、ごめんね。
いっぱい謝って抱っこしたけど、
こうたろうはぜんぜん泣き止まなくて、
私にしがみついたまま眠ってしまった。

夏の終わりの、ちょっとせつない話。
「セミ物語・その2」に続きます……。