海外のニュースより

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「イラクの新政府は、アメリカの期待に添わない」と題する『ヴェルト』の4月29日の記事。

2005年04月29日 | イラク問題
イスタンブール発:イラクの国民議会は、昨日、新しいイラクの首相イブラヒム・アル・ジャファリの提案した閣僚名簿を承認し、それによって、イラクの最初の民主的政府を誕生させた。確かにすべての閣僚のポストがふさがった訳ではなく、議員の三分の一は出席しなかったが、やはり、歴史的な日であった。
組閣に三ヶ月かかった。特に権力と給付の大きい重要なポストは、激しく争われた。それは石油相と電力相と国防相である。最後まで一致は得られなかったが、ワシントンは、ともかくも結果が得られるのを望んだ。舞台裏では、一つの解決策が取り付けられた。問題になった五つの大臣の席は、暫定的に首相とその代理によって管理される。しかし、この人選も争いのもととなっているので、その数はまだ明らかではない。
ジャファリ首相は、最後に本来の大臣が見つけられるまでは、国防相を兼任する。「最後に」というのは、立法議会の残された8ヶ月の任期の終わりを意味している。そのときまで、この移行政府は、憲法を立案し、それに基づいて新しい議会が選挙される予定である。
あらゆる部局の中で最も重要な部局である石油省は、他の首相代理によって暫定的に指導される。この点にについてワシントンは驚いて目を擦るかもしれない。なぜならこの首相代理とは、最初はアメリカ国防省のお気に入りであったが後に権力の座を追われたアハマド・チャラビであるからだ。彼はアメリカ人によってイランとの協力関係を疑われ、暫定政権を追われ、現在は国民議会選挙で勝ったシーア派の宗教的連合と結びついている。
ジャファリは、彼の内閣を「国民統合の政府」と呼ぶが、その意味は、この内閣が、すべての民族的宗教的グループを代表しているからである。これまで決まった27人の閣僚には、シーア派、スンニー派、クルド人だけでなく、キリスト教徒も加わっている。
けれども、はっきりした空白がある。これまで政府を導いてきたイルヤド・アラウイは、加わっていない。アラウイは自分の力を過信して、石油相を含む四つの閣僚の席を要求した。もしそれが通れば、それはスンニー派とチャラビの政党を犠牲にすることになっただろう。スンニー派とチャラビの政党は、ジャファリによって重要なパートナーであると評価された。特にスンニー派については、新政府は専らスンニー派に属する抵抗運動との対話を始めなければならないからである。
 このことから、ワシントンが恐らく望んでいるよりも、ずっと世俗的でなく遥かに親米派でない政府が成立する。なぜなら、アラウイの「イラク連合」は、イラクでは、唯一非宗教的非民族的で親西欧的な政党だからである。ボリス・カルノキー記者の記事。
訳者の感想:国民の投票によって議員が選ばれ、組閣もされたが、こうした民主的手続きでできたイラクの新政府は、どうもアメリカ政府が期待していたようにはなりそうもない。皮肉な結果である。国民の大多数を納得させられるような政治家が今後出てくる可能性はあるのだろうか?
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