海外のニュースより

政治・経済・社会の情勢について書かれた海外の新聞や雑誌の記事を選んで翻訳しています。

「ヨーロッパは、異質なものの恐怖に直面している」と題する『ガーディアン』紙の論説。

2005年11月09日 | 国際政治
11月9日付け『ガーディアン』紙に掲載されたサイモン・ティスダルの論説です。
フランスで起こった暴動を恐怖と「いい気味だ」という気持ちが入り交じって観察することによって、ヨーロッパの支配者達は、二つの結論に到達した。一つの結論は、暴力はフランスに特有の出来事であり、肌の色に目をつぶる共和制と接触しないエリートによる失策の産物である。もう一つの結論は、あんな暴動は自分の国では起こらないだろうというものである。どちらの結論も疑わしい。
「フランスの条件は、われわれがドイツで持っているものとは異なる。われわれには巨大なアパート群はない」とドイツの外交顧問のヴォルフガング・ショイブレは言った。フランスの警察の戦術を非難して、英国のトニー・ブレア首相も、「英国はフランスとは違う」と述べた。イタリアの野党党首ロマーノ・プロディが「次の番は、イタリアだ」といったとき、彼は脅かし屋だと非難された。
だが、「差別と青年の失業、--逮捕された暴動参加者の半数は18才以下である--人種的偏見、宗教的不寛容、テロリズムとグローバル化によって生み出された外国人嫌いとは、たいていのヨーロッパ諸国で揺るぎないものとなった」と「ヨーロッパ改革センター」のオロール・ワンリンは述べた。それらの事柄は、もっと多くの爆発を引き起こす潜在力である。
「どの社会でも、少数民族や移住者、特に経済的に困難な時代には、未熟練労働者をどうして統合するかについて議論される」とワンリン女史は言う。「だが、何をしたらいいかについては意見が一致しない。だから、この議論は普通余り活発でない。フランスで騒動が起こるまで、問題についての透明度が欠けている。それは避けがたい。だから、このような暴動は他では起こらないだろうと言うことは出来ない。」
 反感の下層流は、ヨーロッパ中で認められる。オランダでは、昨年11月に映画監督のテオ・ファン・ゴッホが街頭で殺されて以来、トラウマになった。「この殺人は、人口の20%が外国人である国で、国際的テロリズムに対する恐怖と国民的アイデンティティの問題を結晶化した。その結果、モスクに対する襲撃が行われた。」
ドイツは、260万人に上るトルコ人移民に対する統合的アプローチを自慢している。だが、移住者共同体における失業は、全国平均の2倍に達している。若年労働者の30%は職がない。今年初めにベルリンにショックを与えた「名誉殺人」(トルコ人女性がドイツ人と恋愛関係を持ったために、兄弟に殺された事件。)のように、緊張状態があることは、明白である。
 ヨーロッパがその主要な少数民族をどのように処遇するか、彼らにどのように話しかけるかについて同意に成功しなかったことは、「欧州連合」自体に及んでいる。ワンリン女史は次のように言う。「欧州連合は統合について指針を展開しようとしているが、この問題は非常に敏感なので共通の土台を見つけることが困難だった。」
 ヨーロッパの政府が手探りしている間に、極右政党は、別の傾向を代表し、それがトラブルの引き金を引いている。「極右の前進は、ヨーロッパにおける人種主義の程度の現れだが、それは異質なものを何でも恐れるというもっと深い社会的不安の現れだ。」
[訳者の感想]フランスの暴動は、ヨーロッパ全体が抱えている社会問題ということが良く分かります。
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