海外のニュースより

政治・経済・社会の情勢について書かれた海外の新聞や雑誌の記事を選んで翻訳しています。

「過激派の憎悪は、英国とパキスタンとの絆にひびを入れ始めた」と題する記事。

2005年07月15日 | テロリズム
『シドニー・モーニング・ヘラルド』紙7月15日号の記事です。筆者は、アーメド・ラシドという人です。
 過去数日間、パキスタンの首都ラホールのディナー・パーティや市場や新聞編集局では会話の話題はただ一つであった。それはロンドンの自爆テロがパキスタン人の仕業であるだという恐れと期待であった。
 大抵の人が確信していたのは、それは正しいだろうということであり、真実が明らかになったとき、彼らは携帯電話でニュースを広め、次のように繰り返した。「俺が言ったとおりだ。これは本当にケーキの上の糖衣になるだろうぜ。」
多くの人々は、Tシャツやスーフィ音楽やマンゴーと一緒に一握りのテロリストを輸出する国民と呼ばれると考えて憂鬱になった。
 火曜日までは英国におけるパキスタン人居住区域に対する右翼英国人の反発の恐れが新聞の見出しに踊っていた。その理由は、パキスタン人自身がつまり、イスラム原理主義か民主主義か、という独立後58年経っても彼らの国民の本性について意見が一致しないからである。
 ブラッドフォードやリーズに二世代の間、住んできた人たちもなお結婚やパーティや休日や宗教的お祭りのために帰国するのだ。
 ロンドンとパキスタンとの間の往復旅行は、夏には集団で行われる。
 スニーカーと最新流行のジーンズを履いた少年達が、休暇中、ラホールのショッピング・モールでヨクシャー訛りでしゃべっているのが耳に入る。
 ヨークシャーに住んでいるもっと保守的な両親達は、彼らのティーンエイジの息子達の学校休暇を手配し、数学期の間の勉強のために彼らをパキスタンに送る。彼らは宗教学校か宗教と無関係な学校に入学して、ウルドウ語とコーランを学び、友達を作る。寄宿制の宗教学校に入る少年達は、しばしば原理主義的な見解を教え込まれて、人が変わって、ヨークシャーに帰ってくる。そして、姉妹達にスカーフを被るように要求し、友達と規則正しく礼拝するようになる。
 自爆テロリストの内、1人か2人が最近パキスタンを訪れ、ひっとしたら過激派のグループと一緒に訓練を受けたということはすでに明らかである。
 過去20年間に、少数の戦闘的な連中は、イスラム教やさまざまのイスラム宗派の名において、また「男の名誉」という勝手につけた概念を使って仲間の市民を殺したり、不具にしたりした。
 イスラムの名前を使ったこれらの殺人者達は、彼らの仲間の市民から嫌われ、外国に送り出された。そこではパキスタンの武装集団がカシミールやアフガニスタンや中央アジアやチェンチェンやかってのユーゴスラビアでは過激派によって支持されていた。
 パキスタンの過激派は、パキスタン軍と密接に結びついており、軍は彼らの中にインドを食い止めるための安上がりで自分たちの責任を問われない機会を見ている。さらに軍は彼らの中にパキスタンのイスラム的影響を海外で維持し、国内の市民的民主主義のチャンスを取りつぶす機会だと見なしている。
 多くのパキスタン人は、2001年9月11日の事件が軍にその不幸な政策を変え、イスラム法学者との同盟を終わらせる機会を与えるだろうと期待した。
 パキスタンのムシャラフ大統領の軍事政権は、アフガニスタンおよびインドと平和を結ぶことに成功し、武装集団を厳しく取り締まり、過激派に背を向けた。ムシャラフ大統領は、啓蒙的で穏健な政策を約束したが、余り実行されなかった。何千もの宗教学校は、いまなお、非イスラム教徒に対する憎悪をぶちまけており、武装集団の指導者は、なお国中で説教して回っている。ムシャラフ大統領は、9.11以来、アメリカとイギリスによって与えられている気前の良い援助をばらまいた。過激派は、繁栄し続けている。今月広く読まれている雑誌『ヘラルド』は、9.11の後で閉鎖されていた1ダースほどの軍事訓練キャンプが、今年5月、公に祝福されて再開されたと報告している。
 先月、カリフォルニアでテロの理由で逮捕された数名のパキスタン系アメリカ人は、このようなキャンプでの訓練を受けたことを認めた。ロンドンの自爆テロリスト達も、アルカイダよりもパキスタン・グループと接触した可能性がある。
 パキスタン人は、非難の目に曝されることにうんざりし、普通の生活を送りたいと思っている。彼らは故郷における暴力と海外での悪いイメージが終わることを望んでいる。しかし、いつそれが終わるかは、誰も予測できない。
[訳者の感想]筆者はパキスタンの国内事情に非常に詳しい人のようです。私はオサマ・ビン・ラディンが4年近く経っても捕まらないのは、どうもパキスタン軍に原因があるのではないかと疑っていましたが、ロンドンの自爆テロの背後にもパキスタンの過激派の影が見え隠れしているようです。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする