海外のニュースより

政治・経済・社会の情勢について書かれた海外の新聞や雑誌の記事を選んで翻訳しています。

「輸出用の日本美術」と題する『フランクフルター・アルゲマイネ』紙の文化欄。

2005年07月03日 | 日本文化
1854年から58年までの間、日本という島国が開国を強いられて以来、150年以上の年月が経過した。日本は、今や、世界中と密接な経済的関係を維持しているけれども日本文化に対する西欧の理解はまだ特に増えてはいない。その際、その理由として持ち出される日本の鎖国政策は、完全ではなかった。それは、17世紀の30年代に不安定をもたらす宣教師やその後に続いた冒険的な商人に対して向けられていた。
東インド会社の社員であった、オランダ人やドイツ人は、将軍に敬意を表すために、長崎から江戸まで旅行しなければならなかったが、彼らは彼らの観察を記録することができた。エンゲルベルト・ケンプフェルは、1690年に江戸へ旅した。彼の報告は、今日なお基本的に信頼できると思われている。当時、彼の報告は多くの人に読まれ、ヨーロッパの知識人の書架におかれていた。開国を強いられた後、19世紀の後半には、事情も変わった。二つの世界が、考え方や意図は違っていながら、そこで出会っているように見える。17世紀にはヨーロッパ人は、多かれ少なかれお願いする者として、日本にやってきたとすれば、彼らは今度は高圧的に要求する者として現れた。だから、日本は、自分のアイデンティティと独立を維持し、文化的伝統を守るためには、自分自身を表現するように強いられたのである。更に、日本は、時代の経済的要求を満足させるためには、自分自信を国際経済に組み込まなければならなかった。外国の専門家が日本に招かれ、輸出が促進された。その際、陶磁器がよく売れることが分かった。しかし、他方では、西洋の専門家の何人かが師匠を気取った。そして、日本人によってそういう者として尊敬された。例えば、日本の文化意識の救済者だと自負したアーネスト・フェノロサがそうであった。その際、彼は、自分に示されたものを先入見なしに眺める用意は余りなかった。彼は、自分の美的判断の正しさを理由づけるのに古典古代的西欧的尺度をあてがった。そういうわけで、日本人達は間もなく、自分たちの本来の伝統的な美術が西欧では余り理解されないこと、陶磁器の輸出でもって本当に目的を達成しようとするならば、異国情緒を求める西欧の要求に答えなければならないということに気づいた。
それ故、日本人の趣味よりも西欧の趣味に迎合する過度に装飾的な陶磁器が数多くヨーロッパに運ばれた。そしてそういうものにおいて、ヨーロッパ人は、日本美術そのものを認識すると思いこんだ。しかし、このプロセスは、簡単には見破られなかった。だが、最近、ギゼラ・ヤーンは、彼女の大きな研究『明治の陶磁器---日本の輸出用磁器と薩摩焼』によって、この複雑な事情を分析的に解きほぐそうと試みた。文書や同時代人の言葉や当時の大きな博覧会を手がかりにして、彼女は、この明治の陶磁器が必然的展開の結果ではなかったことを示した。日本人は、伝統を近代が必要としているものから区別することができた。日本の陶磁器の伝統を救うのに、大衆運動は必要ではなかった。
多くの人々は、彼らに与えられた二重の課題を意識していた。つまり、一方では、特に絵画において、自分自身の伝統を守りながら、他方では、自分の伝統をヨーロッパ人に理解できるようにするという二重の課題である。そういうわけで、ギゼラ・ヤーンは、ゴットフリート・ワーグナーと重要な陶器画家であった服部キョウホとの協力について述べている。ワーグナーは、下絵と釉薬の技術に関わるだけでなく、絹や紙に描かれた日本の古典的な絵画の好みを通じて装飾に影響を与えた。
日本の絵画に対するヨーロッパの理解を目覚めさせるために、いくつかの芸術家集団がこのテーマを引き受けた。同時に彼らはそれによって、陶磁器に表面的には容易に認識できる芸術的性格を与え、沢山の金を使った植物的装飾を施した。もっとも、このことによって、西欧では長いことこの様式を本当の日本の美学だと見なすことになった。このことは、本来の日本美術に対する眼差しを今日まで歪めているのだが、西欧は、世界博覧会での日本の展示によって、自分たちの考えが裏付けられたと考えた。この美術は、ヨーロッパのビロード張りの広間には似合っても、日本の環境には合わないように見える。同時に、この美術では、もっと沢山輸出したいために、西欧に適合させようとする日本人の意図が明らかになる。
[訳者の感想]ギゼラ・ヤーンさんというのは、若手の日本美術研究家だろうと思われます。確かに、ヨーロッパの骨董屋で見かける日本の陶磁器には、これが日本製かと疑われるようなものがあります。
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