杯が乾くまで

鈴木真弓(コピーライター/しずおか地酒研究会)の取材日記

第37回蔵元を囲むしのだ日本酒の会

2011-09-19 17:48:57 | しずおか地酒研究会

 昨日(18日)は清水マリンビル多目的ホールで、37回目を数える『蔵元を囲むしのだ日本酒の会』が開かれました。

 

 

 昨年は『吟醸王国しずおか映像製作委員会』で製作支援を呼び掛けるブースを出展させていただき、多くの参加者のみなさんに温かい励ましをいただきました。

 映画制作はさまざまな自主制作の壁にぶちあたって一進一退を繰り返しており、今年、篠田酒店でチケットを買ったときは、「どのツラ下げて行けばいいんだ」の心境でしたが、静岡県内の酒販店さんが単独で開催する日本酒の会では最も勉強になり、地酒取材を始めてからほとんど欠かさず参加している思い入れの深い会。自分にとって“初心に戻れる場”でもあるんですね。今年は真っ白な心境で、ただひたすら試飲に没頭しました。

 

 蒲原のよし川さんが特別な酒肴料理をお弁当にして用意しておられたのですが、結局一度もテーブルには着席せず、固形物を一切取らず終いでした。こ~んな呑み方をしているから、今朝は胃も肝臓も重苦しくて調子が悪い・・・(苦笑)。

 

Imgp4871
 篠田酒店が提供した酒が90種。これに参加蔵元が持参した秘蔵酒を加え、100を超える種類がそろい、すべてを試飲し尽くせたわけではありませんが、さすが篠田さん、「斗瓶囲い」「生原酒」「出品酒」「超熟成酒」などなどレアものぞろい。静岡酒ファンの方なら「食事をする時間がモッタイナイ」心境をきっと理解してくださると思います。

 

 

 今回、とくに感動したのが、國香・純米大吟醸秘蔵酒平成12年(11BY)。こんな酒を11年も保存していたなんて篠田さんらしさバクハツ(笑)。しかも目隠しして飲んだら、今年の酒かと思えるほどフレッシュでみずみずしくて、静岡酵母HD-1を極めた國香さんらしさがまったくブレず、ハッキリした輪郭を持って存在していました。

 

 長期熟成酒の中には、酒本体の力が弱く、劣化したものを、“熟成”と称して付加価値にしたものもあります。また「静岡酵母の酒は酸が低いので熟成に耐えられない」という声を聞いたこともあります。でもこの酒を呑めば、真に力のある酒とは何たるかが理解できるような気がする。完璧な低温貯蔵で國香・松尾晃一杜氏の力量を正しく伝えた篠田さんの功績にも拍手です!

 

 

 國香の隣に陣取っていた喜久醉も、純米大吟醸松下米40と純米吟醸松下米50の、それぞれ平成21BYと22BY(来月発売予定)の呑み比べというぜいたくをさせてもらいました。松下米シリーズは早春に仕込んでから秋の出荷まで7~8ヶ月熟成させるのですが、さらに1年置いたものは上質なビロードや絹織物のような肌触りを思わせるつややかさ・なめらかさが醸し出ています。

 

 

 これは何も偶然の産物ではなく、杜氏の青島孝さんは、7~8ヶ月後の味の変化、そのさらに1年後の変化を想定しながら仕込んでいるのです。松尾さんや青島さんの技術論を聞いていると、造り手当事者同士でなければ理解しえない感覚用語で語り合っていて、どこか科学的かつ芸術的な〈技の求道者〉に見えてきます。

 

 

 

 彼らのように一途で一本気な造り手には、その志を正当に評価し、支援できる売り手や飲み手がどうしたって必要です。そのことを、私自身20数年前に感じて地酒の取材を始め、しずおか地酒研究会を作り、活字や映像に残そうと突っ走ってきた。昨日のしのだ日本酒の会は、自分の活動の原点というか、エネルギーの源泉を自身で再認識したような、そんな場所でした。

 

 それもこれも、篠田さんが30年近く日本酒の会を続けてきてくれたおかげです。会場では先週行われた『静岡deはしご酒』実行委員長である山口登志郎さんと、はしご酒開催の成果や課題について少しお話しましたが、結局言えることは「とにかく続けてみること」。長く続けていく中で人は何かを発見し、改革をしていけるんだと思います。

 

 いずれにしても、しのだ日本酒の会のスタッフのみなさま、本当におつかれさまでした。お客さん有志が居残って、ホールをまっさらにしてシャッターを閉めるまで一生懸命片付けを手伝っていた姿にも感動しました。長く続く価値ある活動には、こうして黙っていても応援団がついてくるんですね。来年も素晴らしい会&“隠し酒”、期待しています!!


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中日新聞富士山特集「富士山県民講座」

2011-09-17 10:56:29 | 環境問題

 中日新聞で月1回書かせてもらっている富士山特集の第5弾が、本日(9月17日)付け朝刊8面に掲載されました。今回は10月から始まる県主催の『富士山県民講座』の紹介。10月2日の第1回講座を受け持つ静岡大学理学部の増沢武弘先生から、“文化遺産を育んできた富士山の自然と植生”について、大雑把な解説をうかがっています。

 

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 増沢先生によると、富士山って麓には杉やヒノキの人工林、600~1700メートルあたりにブナやミズナラといった山地林(天然林)、その上の亜高山帯にハイマツやシラビソ、さらにその上の高山帯にはコケ類と、標高によって植生が垂直に変化する稀有な山なんですね。それは、室町時代に描かれた富士曼荼羅図にもしっかり描かれている。植物学者にとっても貴重な研究対象なんだと解ります。

 

 

 600~1700メートル周辺の山地帯にあるブナ林は、今から500年ぐらい前(室町末期から戦国時代)に突然現れたそうです。なんでもこの頃、日本は小氷河期だったそうで、各地で飢饉が頻発した(・・・政情不安の世になるのもうなづけますね)。本来、白神山地のような場所に代表されるブナ林が、富士山の、しかも太平洋側だけに現れた。まさに気候変動の現れです。そのブナ林が、県東部の函南~伊豆天城へと植生を広げ、今も太平洋側では貴重なブナの森が残っているというわけです。

 ちなみに、天変地異が身近に感じられる昨今ですから、取材時に恥を承知で思い切って増沢先生に「大震災の影響で地殻変動が起きたりして、富士山が爆発する可能性もありですか?」と訊いてみました。・・・だって、せっかく世界文化遺産に登録されたと思ったら爆発・・・な~んて哀しいじゃないですか。先生曰く「富士山が噴火するときは、周辺で1年ぐらいの間に300~400回以上の地震が頻発する。その予兆はないから、当分は心配なしというのが専門家の共通認識」とのことです

 

 自然環境によって、あるいはその環境の変化次第によって、生まれてくる文化のカタチや質も変わってくると思います。富士山をこういう角度から見てみるというのも面白いですね。興味のある方はぜひ県民講座にいらしてください。いずれも参加無料です。

 

 

 

富士山を知る

 「学び」、「考え」、「想いを寄せる」富士山の自然と文化<o:p></o:p>

 

<o:p> </o:p>富士山の世界文化遺産登録推薦書草案が今月末までにユネスコ世界遺産委員会に提出され、いよいよ“本選”を迎える。提出された登録推薦書は精査を受け、2012年3月から約1年をかけて現地調査も行われる。調査のポイントはハード面もさることながら、地域住民の富士山に対する“熱度”。県ではさまざまな事業を通して、登録への気運醸成に努めている。<o:p></o:p>

 

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 県学術委員による富士山県民講座<o:p></o:p>

  2009年9月、富士市、裾野市、静岡市清水区の3カ所で『富士山県民講座』という公開セミナーが開かれた。富士山の文化的価値を県民に広く理解してもらおうと、県学術委員会委員が講師となって3回シリーズで企画したもの。第1回は土隆一静岡大学名誉教授が「富士山の自然の特性」と題し、<o:p></o:p>

 ●1700万年前、フィリピン東方の熱帯火山群だった伊豆半島が、フィリピン海プレートとともに北進し、200万年前までに本州と衝突。その際、南海トラフが折り曲げられ、大量の玄武岩マグマが供給され、富士山ができた。<o:p></o:p>

 ●富士山の主な湧水は標高1千メートル以上で降った雨が1015年かかって湧き出たもの―等、富士山の成り立ちについて解りやすく解説した。<o:p></o:p>

   ◇<o:p></o:p>

  第2回は中村羊一郎静岡産業大学教授が「富士山の歴史と信仰」をテーマに、<o:p></o:p>

●富士山は漁師や航海者にとって位置確認の目印「ヤマアテ」であり、海上安全と豊漁を祈る神でもあった。<o:p></o:p>

 ●富士山には原始的な山岳信仰の形態が残り、世界でも稀な精神の象徴として位置づけられる―等と分析。<o:p></o:p>

  第3回は片桐弥生静岡文化芸術大学准教授が伊勢物語や鎌倉以前・以降の富士山の絵画を題材に、「富士山はいかに描かれたか」を解説した。<o:p></o:p>

  さらに受講者を対象に行った現地学習会では、富士宮本宮浅間大社とその周辺を視察し、参加者から「富士山について新たな発見があった」「詳しい説明で非常に勉強になった」等の意見が多数寄せられた。<o:p></o:p>

   ◇<o:p></o:p>

  翌2010年の講座は4回シリーズで、建部恭宣県文化財保護審議会委員が「富士山信仰と浅間神社の社殿について」、中村羊一郎氏が「富士山の歴史と文化について~海からの視点」、山田辰美富士常葉大学教授が「命の山・富士山」、東惠子東海大学教授が「富士山と景観」について、それぞれ学術研究家の立場から興味深い講義を行った。<o:p></o:p>

 

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 文化遺産を育む富士山の自然を再考する<o:p></o:p>

  今年も10月に開講する『富士山県民講座』。4講座のうち、自然をテーマにしたプログラムが3つそろった。<o:p></o:p>

  第1回講座「世界文化遺産を護る~富士山の自然」を担当する増沢武弘氏(静岡大学特任教授)は、極地植物研究の第一人者。富士山が初めて世界遺産登録を目指した30数年前から、登録に向けたさまざまな調査や提言を行ってきた。県が世界遺産登録を自然遺産から文化遺産へと切り替えた後も、理系の専門家ではただ一人、県学術委員に残って、登録の重要ポイントである世界遺産の包括的保存管理計画づくりに尽力している。<o:p></o:p>

 

曼荼羅図に描かれた富士山の植生<o:p></o:p>

  室町期の作とされる『絹本着色富士曼荼羅図』(富士山本宮浅間大社所蔵)を、「古い時代の植物垂直分布が描かれた貴重な史料」と説く増沢氏。山麓の富士山本宮浅間大社一帯は、スギやヒノキの人工林が神殿の屏風のように広がり、600~1700メートルあたりの山地帯にはブナやミズナラ等の天然林、1700~3000メートルの亜高山帯にはシラビソ、ハイマツ等、3000メートル以上の高山帯にはいヒゲハリスゲやコケが植生する。曼荼羅図には山頂まで続く岩と砂の荒涼とした斜面をジグザグと登っていく人々の姿が描かれている。<o:p></o:p>

  今回の講座では山地帯のブナ林に着目し、「東北や日本海側にしかないブナの群生が、500年ほど前の小氷河期をきっかけに、富士山の静岡県側から函南、伊豆天城へと突然分布が始まった。富士山から伊豆へとつながる貴重な樹林帯であることを知ってもらいたい」と力を込める。<o:p></o:p>

 

今年の講座のみどころ<o:p></o:p>

  第2回講座では静岡文化芸術大学教授の片桐弥生氏が富士山と文学について解説する。主催の県文化・観光部総務企画課では「県西部地区の方にも、富士山の世界文化遺産登録活動について関心を深めてもらえれば」と期待を寄せる。<o:p></o:p>

  第3回は「富士山に生息する動物」、第4回は「富士山の自然と災害について」という時機を得た内容が組まれた。<o:p></o:p>

  富士山に特化した専門性の高い講座を、県民だれもが無料で受講できる貴重な機会。今年のプログラムは、県民の秘めた“富士山熱”をさらに熱く掘り起こしそうだ。<o:p></o:p>

(文・鈴木真弓)<o:p></o:p>

 

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 〈取材協力〉<o:p></o:p>

 静岡県文化・観光部総務企画課(富士山総合調整担当)、静岡大学理学部増沢研究室<o:p></o:p>

 

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 富士山県民講座2011年度プログラム(参加無料)<o:p></o:p>

 

●「世界文化遺産を護る~富士山の自然」<o:p></o:p>

 日時/10月2日(日)14時~16<o:p></o:p>

 場所/修善寺総合会館大研修室(伊豆箱根鉄道修善寺駅よりバス約10分)<o:p></o:p>

 講師/増沢武弘氏(静岡大学理学部特任教授・世界遺産県学術委員)<o:p></o:p>

 申込締切/9月22日(木)<o:p></o:p>

 

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●「描かれた富士山~文学との関係を中心に」<o:p></o:p>

 日時/10月9日(日)14時~16<o:p></o:p>

 場所/浜松労政会館大会議室(JR浜松駅よりバス約10分)<o:p></o:p>

 講師/片桐弥生氏(静岡文化芸術大学教授・世界遺産県学術委員)<o:p></o:p>

 申込締切/9月29日(木)<o:p></o:p>

 

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 ●「富士山の動物たち」<o:p></o:p>

 日時/1022日(日)14時~16<o:p></o:p>

 場所/清水テルサ大会議室(JR清水駅より徒歩10分)<o:p></o:p>

 講師/三宅 隆氏(NPO法人静岡県自然史博物館ネットワーク副理事長)<o:p></o:p>

 申込締切/1013日(木)<o:p></o:p>

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●「富士山の自然と災害」<o:p></o:p>

 日時/1030日(日)14時~16<o:p></o:p>

 場所/富士市交流プラザ会議室1(JR富士駅より徒歩5分)<o:p></o:p>

 講師/吉栁岳志氏(国土交通省富士砂防事務所所)<o:p></o:p>

 申込締切/1020日(木)<o:p></o:p>

 

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 *受講希望者は①住所②氏名③年齢④電話番号⑤希望参加回次(複数可)を記入し、郵便・FAX・メールで申し込む。<o:p></o:p>

 ○申込先 〒420-8601 静岡市葵区追手町9―6 静岡県文化・観光部総務企画課(富士山総合調整担当)<o:p></o:p>

  電話054-221-3776   FAX 054-221-2980   Bunkakankou-kikaku@pref.shizuoka.lg.jp<o:p></o:p>

 

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「富士山を詠んだ短歌」募集<o:p></o:p>

 『富士山百人一首』『富士山百人一句』を選定した県文化観光部では、このほど富士山を詠んだ自作の短歌を募集している。小中学生は「こども歌」部門、高校生以上は「おとな歌」部門で審査。作品は未発表のもので一人2首まで。<o:p></o:p>

 

○応募方法 はがき・FAX・メールにて、作品の漢字には必ずふりがなを明記し、住所、氏名、電話番号を添えて応募。小中学生は学校名と学年も明記。<o:p></o:p>

 ○選考委員 中西進(国文学者・池坊短期大学長)、馬場あき子(歌人・文芸評論家)、佐佐木幸綱(歌人・国文学者)、田中章義(歌人・元国連WAFUNIF親善大使)<o:p></o:p>

 ○『ふじのくに百人一首』への掲載を持って発表に代える。<o:p></o:p>

 ○募集締切 平成231031日(月)消印有効<o:p></o:p>

 ○応募先 静岡県文化・観光部総務企画課(富士山総合調整担当)*連絡先は富士山県民講座と同じ<o:p></o:p>

 


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 東京・日本酒市民講座&しずおか地酒研コラボ

2011-09-16 13:11:32 | しずおか地酒研究会

 ご報告が遅くなりましたが、9月10~11日にかけて、『第38回しずおか地酒サロン・日本酒市民講座共同企画~酒米&酒蔵探求ツアーIN静岡』を開催しました。プログラムは以下の通り。

 

■9月10日(土) 
13時 JR袋井駅集合。タクシー相乗りで静岡県農業技術研究所三ケ野圃場訪問。静岡県の酒米『誉富士』ほかさまざまな米の試験栽培状況を見学。酒米担当の研究員・外山祐介さんが解説。見学終了後、JRで静岡へ移動し、17時30分~21時まで『静岡deはしご酒』に参加。

静岡deはしご酒 ・・・静岡市街の6店舗=湧登(静岡駅南銀座)、MANDO(呉服町)、華音(呉服町)、狸の穴(七間町)、のっち(七間町)、たがた(常磐町)で開催。各店1000円で特別出品の地酒1杯と特製おつまみ1品を味わう。各店には静岡県の蔵元が1人ずつ待機。*参加蔵元=白隠正宗、臥龍梅、磯自慢、杉錦、志太泉、小夜衣

■9月11日(日) 
9時30分 JR由比駅集合。10時より『正雪』神沢川酒造場(静岡市清水区由比)の蔵見学。終了次第、蒲原の『よし川』 で昼食・交流会。

 

 

 

 

 お天気に恵まれ、10日の県農技研三ケ野圃場では素晴Imgp4806らしい見学ができました。研究員外山祐介さんが、貴重な「交配実験」のデモンストレーションを見せてくださったり、米の新品種は最低でも8年かかってさまざまな条件で実験栽培を行い、選抜を繰り返すなど、大変な手間暇がかかることを、実際の圃場で解説してくださいました。

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 ふだん、圃場に視察に来るのはほとんど稲作農家の方らしく、一般の酒呑みがこんなにニッチでディープな話を聴く機会はほとんど初めてだそうです。外山さんも「酒米に携わる者は、蔵元さんや消費者の顔を見て研究するのが本筋だと思う。自分にとっても得難い機会でした」と喜んでくださいました。

 

 

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 訪問した10人のうち、東京の参加者が6人で静岡が4人。・・・東京の参加者の意識の高さを改めて実感させられました。地元の米や酒のことなのに、もうちょっと地元からも来てほしかったな・・・。しずおか地酒研究会を始めた頃のマイノリティ感覚を思い出しちゃいました 

 

 

 もっとも東京の参加者は松崎晴雄さん(日本酒研究家)&典子さん(ライター)夫妻、ジョン・ゴントナーさん(酒ジャーナリスト)、里見美香さん(別冊dancyu編集長)はじめ、日本酒の先端情報の担い手ぞろいで、しかも米の育種の研究機関をご覧になるのは初めてとか。そういう方々に静岡県の酒米づくりの先端現場を見ていただけたのは、本当にラッキーでした。

 またImgp4824しずおか地酒研から参加してくれた『若竹』の日比野哲さんが、県内では唯一の「誉富士」40%精米の純米大吟醸と50%純米吟醸を、特別に試飲用に差し入れてくださいました。40%精米の純米大吟は少し熟成させてみると、面白い酒になりそうな気がしました。

 高性能の精米機を持っている蔵元さんは、「誉富士」のポテンシャルを確かめる意味でも、いろんな精米歩合や熟成期間を試してみてもいいんじゃないでしょうか。

 

 

 

 

 

 夕方から静岡市街で開催された『静岡deはしご酒』は、各店とも200人を超える参加者で大賑わいでした。

 

 

 

 当初、松崎さんたちは「はしごできるのは、せいぜい3軒かなあ」とおっしゃっていましたが、1軒あたりの待ち時間が結構あって、お店に入れても滞在時間が20分程度というあわただしさ。「呑まずにいられないImgp4826」みなさんたちは、結局5軒を回ってタイムオーバー。松崎さんは「駅周辺の徒歩範囲内で、これだけの店が集積している静岡の酒呑みは、本当に恵まれている」としみじみ感心しておられました(写真は1軒目の「たがた」さんで、磯自慢の長島さんと)。

 

 

 

 21時以降は私のほうで用意した二次会場・『たべものや』さんに、喜久醉の青島孝さんをわざわざお呼びし、23時過ぎまで“はしご酒番外編”を楽しみました 東京組の男性陣がはしご酒の途中で“ナンパ”した飛び入りの若い女性が「まさか喜久醉まで呑めるなんて!」と大喜びしてました(笑)。私は私で、若いのに一人ではしご酒に参加する女性もいるんだなあと感心してしまいました・・・。

 

 静岡新聞で以前、酒の記事(こちら)を書かせてくれた橋爪充記者が、東京でお仕事をされていた時代に松崎さん夫妻にお世話になったという不思議な縁もあって、橋爪さんも飛び入り合流し、楽しい二次会になりました。

 

 東京から遅れて参加の山本洋子さん(エッセイスト)夫妻が、はしご酒の途中で合流したお客さんと別のお店で二次会をされているということで、東京組はさらにそちらへはしご。かなり遅くまで盛り上がったようです。さすがにタフですねえ~

 

 

 

Imgp4830

 翌11日は(寝坊して)あやうく遅刻しそうになりましたが、なんとかJR由比駅9時30分集合で、20人の参加者を『正雪』と『よし川』にご案内することができました。『正雪』では蔵元の望月正隆さんが、本当に丁寧に、米選びや酵母選定に対する考え方を説明してくださいました。

 

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 この日は、静岡から初参加の会員さんが多かったのですが、「酒造りの詳しいことはよくわからないが、あんなに真摯な姿勢を見たら、自分も仕事でしっかりしなきゃと思えてきた」としみじみ語っていたのが印象的でした。

 蔵見学の後で、「お酒を大事に呑まなきゃ」という感想は今までもよく聞きましたが、「自分がしっかりしなきゃ」という感想は、何か琴線に触れる感動があったのかなあと嬉しくなりました。

 

 

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 『よし川』 さんも、この日のために、オール地産地消メニューをそろえてくださいました。「うなぎの白焼き・正雪の酒粕漬け」なんて特別なメニューまで作ってくださって、東京の名だたる酒通・食通のみなさんの前で誇らしかったです!本当にありがとうございました。

 

 

 ちゃんと報告記事をかかなきゃと思いつつ、今回は幹事役として気を遣うことが多く、訪問先できちんと“取材”ができなかったので、松崎晴雄さんからのメッセージをご紹介させていただきます。松崎さん&日本酒市民講座&しずおか地酒研究会員のみなさま、本当にありがとうございました!

 

 

 

 

 先日は2日間にわたりまして、大変お疲れ様でございました。鈴木さんがしっかりと準備をしていただきましたおかげで、非常に充実した会になりましたことを、東京から参加したメンバーを代表いたしまして、あらためてお礼を申し上げます。
 

 

 好天にも恵まれ、たっぷり美酒も堪能し、皆様大いに満足されたのではないかと思います。私も外山さんや望月さんの話を聞いている時以外は、大概飲んでいたか、酒が残っていたかで(苦笑)、静岡から参加された皆様ともあまりお話ができず失礼いたしました。

 

 

 さて2日間の感想ですが、稲の品種改良の現場を見たのは初めてですが、あらためて時間と労力のかかる大変な仕事だと感じました。技術的なことだけでなく、体力や精神力も不可欠で、相撲の言葉に例えますと「心・技・体」で取りくまなければいけないものなのですね。

 それでも自然相手のことなので天候に左右される面も大きいようですし(フェーン現象で乾いた風を受け白くなった穂を見て感じました)、まさに酒造りと同じ、といいますか、酒が米作りと一緒ということになるのでしょうか。

 

 

 

 「はしご酒」イベントは想像していた以上に盛況で驚きました。移動する時の街中を眺めていると、他にもいろいろとおいしそうなお店が多かったので、今後参加店が増えていくことを期待しています。

 ただし1000円という価格に対して、内容は店によってまちまちという感じがしました。ツマミもさることながら酒はもう少し限定品らしいものがあってもいいと思いました。「小夜衣」の古酒はよいと思いましたが、大吟醸クラスが1、2店あると期待していました・・・。

 

 3店回ると3000円で景品がもらえるというのは妥当な感じがしますが、5軒回ると5000円ですから、それなりのコストに見合った満足感が得られるかどうかが、ポイントですね。私たちがいただいた景品は割れ物でしたので(はしごして持ち歩くのに心配で)、後日受け渡す等、受け取り方法を一考された方が良いのではないか、また各店共通の食事券(たとえば3店回ると500円、5店回ると1000円)にしても良いのでは、と思いました。

 

 

 

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 『正雪』は、酒米に「誉富士」と「吟ぎんが」を用いたものが良かったですね。特有のメロンとバナナを合わせたような香りが切れ込んでくる感触が心地よく、静岡吟醸の中でも1つのスタイルを持っている蔵だということを、あらためて実感しました。山影杜氏が高齢でもうすぐバトンタッチするような話でしたが、うまく継承されていくことを望みます。今春の県知事賞は、継承が順調だという兆しですね。

 

 つれづれに勝手なことを申し述べましたが、ぜひまたこのような機会を設けてまいりましょう。3年前に外国特派員協会で『吟醸王国しずおか』をテーマにした講座や試飲会を実施し、好評でしたので(こちらを参照)、また静岡をテーマにした講座や会を東京でも企画したいと思います。
 あらためまして、関係のみなさまに心より感謝申し上げます。ありがとうございました。(松崎晴雄)


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ハーバード流白熱教室静岡版

2011-09-13 11:20:03 | 国際・政治

 9月8日(木)は上川陽子さんの後援会企業部会が主宰するAPCセミナー『米国ハーバード大学~世界の視点で日本を見直す』が県もくせい会館で開かれました。陽子さんが80年代に日本人女性として初めてハーバード大学政治経済学大学院に留学されたときの経験をもとに、今の政治家や企業家に求められるものをケーススタディをまじえて語りました。

 

 政治も経済も、テレビやネットのニュース報道で伝えられるレベルのことしか理解できない私には、途中で頭がこんがらがってきましたが、たまに小難しいことを考えるというのも、老化防止にはいいかもしれません(苦笑)。

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 陽子さんが紹介してくれた、米国シンクタンク・ユーラシアグループが2010年に発表した『世界の10大リスク』。ネットで調べてみたら、①米中関係、②イラン情勢、③欧州財政危機、④アメリカの金融規制、⑤日本の政治、⑥世界の気候変動、⑦ブラジルの経済、⑧インド・パキスタン情勢、⑨東欧諸国の政権不安、⑩トルコ情勢という順位でした。

 

 ちなみに同グループを率いるイアン・ブレマー氏(41)は、12年前にたった一人で起業し、100人近い専門家に世界の隅々の地政学的リスクをリサーチさせる気鋭のコンサルタントだそうです。

 

 

 ・・・にしても、国際的にみて、日本の政治が地球規模の気候変動よりもリスクが高いなんて、さすがにまずいんじゃないでしょうか。ブレマー氏によると「日本は政権が変わり、一党支配から無党状況になり、日本病(=問題の先送り、将来を見据えた政治判断が出来ない)に陥った」とのこと。これに震災と原発事故が加わって、今年2011年にはどんなランキングになるのか戦々恐々とさせられます。

 

 

 参加者が後援会の企業部会ということもあり、陽子さんのお話は経済が中心でした。「想像以上に日本企業の海外シフトが進んでいる」とのことで、

 

●自動車産業は過去30年で生産量のほぼ半分を輸出。

●造船プラントは韓国に大負け状態。

●建設業界は国内市場がピーク時84兆円から半減。

●海外シフトは想像以上に進んでいる。某大手化学メーカーは7年も前倒しで海外シフト50%目標を達成した。門外不出とされた重要素材の量産施設も中国へ移した。

●紙パルプ産業も大手O社が中国での生産規模を10%から20%へ。

●東京都水道局が水インフラのアジア10カ国への輸出に乗り出した。

 等などのデータを紹介し「内需の外需化」が必要だと説きます。詳しい意味はよくわからないのですが、“内需”という枠をアジア圏に広げ、日本のモノもアジアのモノも、積極的に売り買いして消費を回していくということでしょうか。確かに人口減少&高齢化の日本の中だけで“内需・内需”と唱えても先が見えていますよね。

 

 第2部のケーススタディでは、変化の兆しを見逃さず、生産マネジメントの国際基準ISO27001やCMMを導入し、いち早いリスク対応を果たしたシステムソフィアの事例を紹介してもらいました。お話の内容は難解でしたが、リーダーの分析力や判断能力の重要性はしかと認識できました。

 

 

 

 ある専門家によると、「リーマンショック後の世界経済の変化というのは、山の色が緑から紅葉に変わった程度ではなく、山がいきなり海になってしまったというくらいの激変」だとか。これに、日本には東日本大震災と原発事故が重なり、多くの価値観の転換を迎えています。それは、政治や経済のマクロ的な動きのみならず、自分たちの身の回りの小さな意識の変化からも、その兆候がうかがえるのだと思います。

 

 変化に気が付くか、気が付いても見過ごすか、気付いた時点で即応するか、周囲の動きを探ってから動くか・・・経済は難しいけど、人間の行動心理の根本は案外単純なものかもしれません。

 

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第1回茶道に学ぶ経営哲学研究会開催

2011-09-10 09:20:39 | 駿河茶禅の会

 9月7日(水)18時から、静岡県男女共同参画センター・あざれあ3階にある茶室「和敬庵」で、『茶道に学ぶ経営哲学研究会』を開催しました。私が広報業務を担当する(社)静岡県ニュービジネス協議会の会員有志による自主研究会として発足したものです。

 

 

 

 この会、そもそもは、ニュービジネス協議会の7月定例会で“ニュービジネスと温故知新~茶道から得るヒント”という講話をしてくださった望月静雄さん(裏千家茶道准教授)のお話が大変心に残り、そのまま希望者が集まって望月さんを囲む勉強会をやることに。

 私自身は、茶道はまったくの未経験者ですが、過去の取材(こちらこちら)を通してその精神を探求したいと思っていたところだったので、会の運営事務を引きうけ、知人・友人にも声をかけ、20人を超える人が参加の意向を寄せてくれました。7日の第1回目は16人が集まり、定員12人の茶室にぎゅう詰めになりながらも、望月Imgp4776さんのお話に耳を傾けました。

 

 

 定員オーバーだったため、実際にお茶を点てることはできませんでしたが、そのかわりに、茶室の構造、和室での立ち振舞いといった基礎知識や基本マナーを教えていただき、みなさん終始「目からうろこ」状態・・・。和室の宴席に招かれたとき、玄関で靴はどう脱ぐのか、ふすまをどう開けるのか、開けたらどんな姿勢で入るのか、挨拶のタイミングは? 名刺の出し方は?どこへ座ったらいいのか?等など、いいオトナが今更聞けない基本マナーも実演を交えて丁寧に教えてくださいました。

 

Imgp4780
 望月さんは日頃、裏千家インターナショナルアソシエーションの運営理事として、外国人に教えたり、海外で茶道指南をされているので、教え方がわかりやすく的確です。

 フツウの茶道教室の先生なら、作法の一つ一つにどんな意味や哲学があるかなんて、いちいち教えないし、生徒も聞かないみたいですが、外国人は素直で素朴に聞いてくるから、教えるほうも面倒がらず、ちゃんと教える。そんな雰囲気を醸し出してくださるので、いい年齢をした私たちでも気負わずに、初歩的な質問・疑問をぶつけることができるんですね。

 

 

 中でも心に残ったのは、千利休が残した「利休百首」という和歌の教え。仕事でも習い事でも何にでも通じる、学びの心の基本中の基本といった教えです。お茶をやっている方から見れば「何を今更」と思われるでしょうが、私はこれらの言葉が、過去に取材で出会った賢人や達人の方々が語っていた修業時代の姿勢にドンピシャリと重なったので、本当に心に染み入りました。500年も前から説かれていた基本じゃないかと・・・。

 

 

 

 

 

その道に 入らんと思う心こそ わが身ながらの師匠なりけり」

 

 

「習いつつ見てこそ習へ 習はずに よしあしいふは 愚かなりけり」

 

 

「心ざし深き人には いくたびも あはれみ深く 奥ぞをしふる」

 

 

 

 

「はぢをすて 人や物とひ習ふべし これや上手の基ゐなりけり」

 

 

 

 

 

 

これらの教えを一句ずつ身体で覚えながら、これから毎月2回、茶道の教養を深めていこうと思っています。次回は21日(水)の予定。興味のある方は私のアドレスまでご一報ください。msj@quartz.osn.ne.jp

 

 

 


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