ご報告が遅くなりましたが、9月10~11日にかけて、『第38回しずおか地酒サロン・日本酒市民講座共同企画~酒米&酒蔵探求ツアーIN静岡』を開催しました。プログラムは以下の通り。
■9月10日(土)
13時 JR袋井駅集合。タクシー相乗りで静岡県農業技術研究所三ケ野圃場訪問。静岡県の酒米『誉富士』ほかさまざまな米の試験栽培状況を見学。酒米担当の研究員・外山祐介さんが解説。見学終了後、JRで静岡へ移動し、17時30分~21時まで『静岡deはしご酒』に参加。
◎静岡deはしご酒 ・・・静岡市街の6店舗=湧登(静岡駅南銀座)、MANDO(呉服町)、華音(呉服町)、狸の穴(七間町)、のっち(七間町)、たがた(常磐町)で開催。各店1000円で特別出品の地酒1杯と特製おつまみ1品を味わう。各店には静岡県の蔵元が1人ずつ待機。*参加蔵元=白隠正宗、臥龍梅、磯自慢、杉錦、志太泉、小夜衣
■9月11日(日)
9時30分 JR由比駅集合。10時より『正雪』神沢川酒造場(静岡市清水区由比)の蔵見学。終了次第、蒲原の『よし川』 で昼食・交流会。
お天気に恵まれ、10日の県農技研三ケ野圃場では素晴らしい見学ができました。研究員外山祐介さんが、貴重な「交配実験」のデモンストレーションを見せてくださったり、米の新品種は最低でも8年かかってさまざまな条件で実験栽培を行い、選抜を繰り返すなど、大変な手間暇がかかることを、実際の圃場で解説してくださいました。
ふだん、圃場に視察に来るのはほとんど稲作農家の方らしく、一般の酒呑みがこんなにニッチでディープな話を聴く機会はほとんど初めてだそうです。外山さんも「酒米に携わる者は、蔵元さんや消費者の顔を見て研究するのが本筋だと思う。自分にとっても得難い機会でした」と喜んでくださいました。
訪問した10人のうち、東京の参加者が6人で静岡が4人。・・・東京の参加者の意識の高さを改めて実感させられました。地元の米や酒のことなのに、もうちょっと地元からも来てほしかったな・・・。しずおか地酒研究会を始めた頃のマイノリティ感覚を思い出しちゃいました
もっとも東京の参加者は松崎晴雄さん(日本酒研究家)&典子さん(ライター)夫妻、ジョン・ゴントナーさん(酒ジャーナリスト)、里見美香さん(別冊dancyu編集長)はじめ、日本酒の先端情報の担い手ぞろいで、しかも米の育種の研究機関をご覧になるのは初めてとか。そういう方々に静岡県の酒米づくりの先端現場を見ていただけたのは、本当にラッキーでした。
またしずおか地酒研から参加してくれた『若竹』の日比野哲さんが、県内では唯一の「誉富士」40%精米の純米大吟醸と50%純米吟醸を、特別に試飲用に差し入れてくださいました。40%精米の純米大吟は少し熟成させてみると、面白い酒になりそうな気がしました。
高性能の精米機を持っている蔵元さんは、「誉富士」のポテンシャルを確かめる意味でも、いろんな精米歩合や熟成期間を試してみてもいいんじゃないでしょうか。
夕方から静岡市街で開催された『静岡deはしご酒』は、各店とも200人を超える参加者で大賑わいでした。
当初、松崎さんたちは「はしごできるのは、せいぜい3軒かなあ」とおっしゃっていましたが、1軒あたりの待ち時間が結構あって、お店に入れても滞在時間が20分程度というあわただしさ。「呑まずにいられない」みなさんたちは、結局5軒を回ってタイムオーバー。松崎さんは「駅周辺の徒歩範囲内で、これだけの店が集積している静岡の酒呑みは、本当に恵まれている」としみじみ感心しておられました(写真は1軒目の「たがた」さんで、磯自慢の長島さんと)。
21時以降は私のほうで用意した二次会場・『たべものや』さんに、喜久醉の青島孝さんをわざわざお呼びし、23時過ぎまで“はしご酒番外編”を楽しみました 東京組の男性陣がはしご酒の途中で“ナンパ”した飛び入りの若い女性が「まさか喜久醉まで呑めるなんて!」と大喜びしてました(笑)。私は私で、若いのに一人ではしご酒に参加する女性もいるんだなあと感心してしまいました・・・。
静岡新聞で以前、酒の記事(こちら)を書かせてくれた橋爪充記者が、東京でお仕事をされていた時代に松崎さん夫妻にお世話になったという不思議な縁もあって、橋爪さんも飛び入り合流し、楽しい二次会になりました。
東京から遅れて参加の山本洋子さん(エッセイスト)夫妻が、はしご酒の途中で合流したお客さんと別のお店で二次会をされているということで、東京組はさらにそちらへはしご。かなり遅くまで盛り上がったようです。さすがにタフですねえ~
翌11日は(寝坊して)あやうく遅刻しそうになりましたが、なんとかJR由比駅9時30分集合で、20人の参加者を『正雪』と『よし川』にご案内することができました。『正雪』では蔵元の望月正隆さんが、本当に丁寧に、米選びや酵母選定に対する考え方を説明してくださいました。
この日は、静岡から初参加の会員さんが多かったのですが、「酒造りの詳しいことはよくわからないが、あんなに真摯な姿勢を見たら、自分も仕事でしっかりしなきゃと思えてきた」としみじみ語っていたのが印象的でした。
蔵見学の後で、「お酒を大事に呑まなきゃ」という感想は今までもよく聞きましたが、「自分がしっかりしなきゃ」という感想は、何か琴線に触れる感動があったのかなあと嬉しくなりました。
『よし川』 さんも、この日のために、オール地産地消メニューをそろえてくださいました。「うなぎの白焼き・正雪の酒粕漬け」なんて特別なメニューまで作ってくださって、東京の名だたる酒通・食通のみなさんの前で誇らしかったです!本当にありがとうございました。
ちゃんと報告記事をかかなきゃと思いつつ、今回は幹事役として気を遣うことが多く、訪問先できちんと“取材”ができなかったので、松崎晴雄さんからのメッセージをご紹介させていただきます。松崎さん&日本酒市民講座&しずおか地酒研究会員のみなさま、本当にありがとうございました!
先日は2日間にわたりまして、大変お疲れ様でございました。鈴木さんがしっかりと準備をしていただきましたおかげで、非常に充実した会になりましたことを、東京から参加したメンバーを代表いたしまして、あらためてお礼を申し上げます。
好天にも恵まれ、たっぷり美酒も堪能し、皆様大いに満足されたのではないかと思います。私も外山さんや望月さんの話を聞いている時以外は、大概飲んでいたか、酒が残っていたかで(苦笑)、静岡から参加された皆様ともあまりお話ができず失礼いたしました。
さて2日間の感想ですが、稲の品種改良の現場を見たのは初めてですが、あらためて時間と労力のかかる大変な仕事だと感じました。技術的なことだけでなく、体力や精神力も不可欠で、相撲の言葉に例えますと「心・技・体」で取りくまなければいけないものなのですね。
それでも自然相手のことなので天候に左右される面も大きいようですし(フェーン現象で乾いた風を受け白くなった穂を見て感じました)、まさに酒造りと同じ、といいますか、酒が米作りと一緒ということになるのでしょうか。
「はしご酒」イベントは想像していた以上に盛況で驚きました。移動する時の街中を眺めていると、他にもいろいろとおいしそうなお店が多かったので、今後参加店が増えていくことを期待しています。
ただし1000円という価格に対して、内容は店によってまちまちという感じがしました。ツマミもさることながら酒はもう少し限定品らしいものがあってもいいと思いました。「小夜衣」の古酒はよいと思いましたが、大吟醸クラスが1、2店あると期待していました・・・。
3店回ると3000円で景品がもらえるというのは妥当な感じがしますが、5軒回ると5000円ですから、それなりのコストに見合った満足感が得られるかどうかが、ポイントですね。私たちがいただいた景品は割れ物でしたので(はしごして持ち歩くのに心配で)、後日受け渡す等、受け取り方法を一考された方が良いのではないか、また各店共通の食事券(たとえば3店回ると500円、5店回ると1000円)にしても良いのでは、と思いました。
『正雪』は、酒米に「誉富士」と「吟ぎんが」を用いたものが良かったですね。特有のメロンとバナナを合わせたような香りが切れ込んでくる感触が心地よく、静岡吟醸の中でも1つのスタイルを持っている蔵だということを、あらためて実感しました。山影杜氏が高齢でもうすぐバトンタッチするような話でしたが、うまく継承されていくことを望みます。今春の県知事賞は、継承が順調だという兆しですね。
つれづれに勝手なことを申し述べましたが、ぜひまたこのような機会を設けてまいりましょう。3年前に外国特派員協会で『吟醸王国しずおか』をテーマにした講座や試飲会を実施し、好評でしたので(こちらを参照)、また静岡をテーマにした講座や会を東京でも企画したいと思います。
あらためまして、関係のみなさまに心より感謝申し上げます。ありがとうございました。(松崎晴雄)