10月19日、何の気なしにニュースを見ていたら、大阪・吹田市にある万博記念公園の色とりどりのコスモスが今を盛りと咲いている美しい画面が映し出された。翅が少し傷んだアサギマダラが吸蜜に訪れていた。
「・・・ん? 少し翅の模様がおかしい!」 蝶を追い続けてきたせいで、普通の人よりはかなり鋭敏になっていると自負している僕の動体視力はわずかな異常も見逃さなかった。翅の裏面に文字が書かれている。
マーキングとは捕獲した個体に油性フェルトペンで翅にマーク(標識)を書くことで、この蝶を放して移動の調査をする。標識として放した人が特定できるような記号、個体番号やマーキングした日付などを書き込むことになっている。これによって再捕獲された個体の寿命や移動分散の距離を知ることができる。
現在は日本鱗翅学会を始めとしていろいろな団体がこの調査に加わっているが、もともと大阪市立自然史博物館学芸員の故日浦 勇氏によって1980年代にスタートしたプロジェクトで、アサギマダラが非常に長距離の渡りをすることがわかってきた。移動の最長距離記録は2000kmを超えるとのことである。
漁師が海上に横たわって漂っているアサギマダラを見つけ、船を近づけると舞い上がって飛び去ったという話を聞くと、海面を漂うことによって休息を取りながら移動を続けている可能性があり、まだまだ最長距離記録は更新されそうで大変興味深い。