インディオ通信

古代アメリカの共感した者の備忘録8年。

相手の立場

2013-10-05 17:20:24 | 身の回り
  雅太は朝早く起きて、獲れたての新米を、父親援助の下、軽自動車いっぱい乗せた。軽乗用車のスプリングは荷の重しで悲鳴を上げた。車は小雨の山道を走り続け、雅太がアパートを借りている備後の小都会に向かう。駐車場など都合のいい待ち合わせの場所に、予定通り周り、縁故米を引き渡した。玄米10キロ2500円。雅太は妥当な値段だと思った。中元のビールをつけてやり、相手も喜んだ。雅太は相手の立場に立って、出来る限り、早く、都合を配慮し、引き渡す。カネを頂いて感謝されるのは実に心地よい。本当は実際に生産している雅太の親が享受すべき感覚なのだろう。的確に銘柄や植える時期などを選び、上手に作る。だが、生産者は、無機的な買取業者、農協の顔しか見ない。間接的に感想を伝えるため、雅太は親にCメールを書いて送った。

  コメ農家も、旨いコメを作り、ダイレクトに売れば、商売になるだろう。直接農家と契約する消費者は少ない。それは縁がないからだし、農家に営業力がないからだろう。雅太は主婦の口コミは恐ろしいものだとも思った。友人・知人・職場の仲間のネットワークで、雅太が働きかけなくても相手から申し込んでくるケースもある。前年の実績は、来年にも影響し、安くて美味ければ当然購入は続くのである。仮に最低一人15000円分購入するとして、200人の主婦の名簿をそろえれば、農業の年収は300万円、多ければ500万円くらいになるのではないか。もっとも雅太の親は年だし、JAに売ることを前提としており、それだけ生産する体制でもない。ただやり方次第であり、オプションとしてタマネギやらジャガイモなども直販できれば、ますます売り上げは増えるであろう。今のご時世、消費者は安全で安く、美味い農作物を求めているのである。

  不惑の年を迎えた雅太は、入金した通帳を見ながら、今は親から仕入れた金を少し上回っている程度だが、これからの利益というか、可能性というものも考えてみる。相手は切実に農家から直接買いたがっているわけで、その相手を見つけるのは早い者勝ちである。中には、取引していた農家がいたけれど、高齢化などが原因で廃業したから、という人もいた。割に合わないから後継者がいない。リアルな話、雅太とて、保証がなければ農業に投資しようとは思わないだろう。保証というのは、絶対に買ってくれる相手か。小説とかの出版物でもそうであろうが、新規に参入しようとする者は、相手の立場を考えず、自分の作りたいものをとにかく作ってみたりするのかもしれない。かくして雅太は今回の新人賞も選考に漏れたのではなかろうかと、思考が発展するのであった。

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