田舎おじさん 札幌を見る!観る!視る!

私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

宮澤・レーン事件を考える

2021-12-22 14:27:00 | 講演・講義・フォーラム等

 中国やロシアの人権問題が取りざたされている昨今だが、我が日本においても戦前には幾多の人権問題があったと伝えられている。その中の一つとして北海道大学で生起した「宮澤・レーン事件」を考える機会があった。

        

 今から1週間以上前になる。北大総合博物館において「宮澤・レーン事件」80周年記念特別展が開催されていてそれを観覧し、併せて同日開催された「宮澤・レーン事件を考える集い」に参加した。

   

※ 北大総合博物館内の特別展の会場の様子です。

 参加はしたが、それをどうレポートするか今日まで迷っていた。それは人権問題という極めてセンシティブな問題で私の手には余ると考えたこと。また、どのようなスタンスでレポすべきかについても迷いがあった。迷いは未だ解決していないが、見て・聴いて今の思いを素直に文章にしてみたいと思った。

       

※ クラーク像の前に立つ宮澤弘幸君(右側の人物)です。

 私の「宮澤・レーン事件」に対する知識は、「戦時中に北大生だった宮澤という学生がスパイ容疑で検挙された」という程度のことで、その背景や彼のその後については何も知らなかった。

 今回博物館の特別展を覗き、宮澤弘幸という学生は非常に好奇心旺盛で、特に海外のことに深い関心を持った学生だったようだ。彼は英語はもちろんのこと、ドイツ語、フランス語、イタリア語などの習得に熱心だったという。だから彼は北大で教鞭をとる外国人と積極的に交流を図ったようだ。彼は好奇心が旺盛なだけではなく、優秀な学生でもあったようだ。ロシア鉄道に関する論文に応募して当選し、ロシア鉄道に乗車した体験記を「大陸一貫鐵道論」という長文の論文を北大新聞に寄稿したりしている。

   

※ 宮澤君が著した「大陸一貫鐵道論」です。

 彼が不運(?)だったのは、特に私淑していた米国人英語教師のレーンが本国において「良心的兵役拒否者」であったことだ。レーンと親しく交際していた宮澤は特高から要注意人物としてマークされ、開戦と同時に宮澤もレーンも検挙、拘束されてしまったということだ。

 レーンは米国との捕虜交換によって本国に送還され自由を得たが、宮澤は戦争中ずっと拘束され厳しい尋問に耐える生活を送ったことで身体を壊し、戦後釈放されたものの1947(昭和22)年、27歳という若さで没してしまった。

 そして今なお「宮澤・レーン問題を考える会」が活動を続けているということは、宮澤弘幸氏の名誉が、国によっても、大学によっても未だに回復されていないということのようなのである。ただ、今回80周年記念特別展の会場として北大博物館の提供を許可したということは、あるいは今後に新たな展開がある兆しなのかもしれない。

 私の僅かな知識でこの事件に対して言及することは避けるべきと考えるが、一点だけ感想的なことを述べるならば、「戦争直前という特異な風潮の中で宮澤君はもう少し慎重な行動を取ることはできなかったのか?」という疑問である。しかし、そんなことを当の宮澤君に問うたとしたら、「そんな小市民的なことを…」と嘲笑されるのがオチのような気がする。彼は若者らしい理想に燃えて未来を見ていたのだろうから…。

 いずれにしても北大当局も、国も、コトの真相を追求して真相を突き止め、遺族や考える会の問いに答える必要があると思うのだが…。  



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2 コメント

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Unknown (おなら出ちゃっ太)
2021-12-22 18:52:49
戦時中の日本では英語が話せるからスパイ、英語に興味を持てばスパイ、軍港を見たからスパイなどと、過剰反応というよりもヒステリーの狂騒状態だったのでしょうね。
昨今のコロナ禍での「自粛警察」「マスク警察」も、日本人のメンタリティとして、「スパイ呼ばわり」の延長線上にあるんじゃないか、という気がします。

「戦争直前という特異な風潮の中で宮澤君はもう少し慎重な行動を取ることはできなかったのか?」というのも、もっともな部分もありますね。空気読め、とでもいうのでしょうか。
ただ、この考え方(宮澤君はもう少し慎重に)を推し進めると、性犯罪やいじめ問題などよく言われる「被害者にも落ち度がある」的な強弁に繋がりかねません。難しい問題ですね。
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出ちゃっ太さんへ (田舎おじさん)
2021-12-23 16:45:45
 最もコメントをいただきたくない投稿にコメントをいただきました。
 私はブログ上やコメント欄で論争することは避けたいと思っています。
 ですから出ちゃっ太さんのように考える方もいらっしゃるんだなぁ、というふうに受け止めさせていただきます。
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