私にとってちょっと思い込みのある与那国の海を題材とした映画「老人と海」である。淡々と描く老漁師の姿から「自然と共に生きる」ことの尊さを改めて教えられた気がする。
日本の最西端「与那国島」の海に一人の漁師がいた。
彼の名は糸数繁。82歳だ。
サバニという小舟を操り200キロもの巨大カジキを追い続ける姿を追った映画だった。
「老人と海」というと、文豪ヘミングウェイを思い出す。
映画プロデューサーもヘミングウェイの世界を日本に求めて、与那国島の糸数さん出合ったという。
糸数さんは島の人々に支えられ、ばあちゃんを愛して海に行き、海を愛して漁に出た。
しかし糸数さんの仕掛けに巨大カジキはかからない。
長い不漁に苦しみながらも、自然への敬意と漁師の誇りを忘れない糸数さん。
そんな糸数さんの仕掛けに1年後ついに巨大カジキがかかった!
木の葉のように揺れる小舟の中で、巨大カジキと格闘しついに打ち勝つシーンはとても82歳とは思えない逞しさだった。
映画は20年前に撮り終え、一度公開されたものを「ディレクターズ・カット版」としてリニューアル公開されたものだ。
したがって主人公の糸数さんはすでに鬼籍に入ってしまっている。
ドキュメンタリータッチの映画でありながらナレーションはいっさいなく、ところどころで島言葉が翻訳された字幕が出る程度である。
映画は淡々と糸数さんや周りの人、島の行事などの情景を追い続けるだけなのだが、かえってそのことが糸数さんをはじめ島で生きる人たちが「自然と共に生きる」ことの素晴らしさを伝えてくれているように思った。
自然を前にして、シンプルに、しかも真っ直ぐに生きる糸数さんの姿から、島で生きることへの誇りが滲み出ているように思えた映画だった。
私がちょっとした思い込みがあると言ったのは、昨年2月末与那国島を旅して、映画の舞台になった久部良港にも寄った経験があったからだった…。
映画はシアターキノで10月1日までロードショー公開されている。
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確かに撮影したのは20年前です。しかもその際劇場公開もされています。
今回はそのとき撮影したフィルムを使用していますが、そのときの構成とは多少違ったディレクターズ・カット版として再構成され公開されたということです。
映画界のことについて私も詳しくはありませんが、いわゆるシネコン系の映画はメジャーな映画を上映する場合が多いようです。
対して、メジャーではないためシネコン系では上映がなかなかされない上質の映画もたくさんあります。
シアターキノの場合は、そうした映画を発掘する館主のセンスと、そうした映画を好むファンに支えられて現在があるのではと私は思っています。