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私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

美術映画 横山大観の「海山十題」を観る

2024-03-31 10:53:29 | 映画観賞・感想
 横山大観といえば日本画の巨匠として名高いが、氏の画には西洋画のエッセンスも含まれているためか、絵画にはからきし弱い私が観ても魅力的である。そんな横山氏が氏の画業50年を記念して描いたのが「海山十題」だという。ところが、その「海山十題」が後世になって物議を醸したそうだ?
     

 絵画や美術品にはとんと関心のない私である。しかし、作品を解説する講演会とか、美術品等の背景を描く映画などにはけっこう足を運んでいる。今回も ‟横山大観の映画” と聞いて観てみようと思い立った。
 映画は3月28日(木)午後、札幌市民ギャラ―リーで映写会が開催されたので参加した。
 映画は「海山十題」の他の作品もいくつか取り上げたが、主題は横山氏が画業50年(1940年)を記念して描かれた「海山十題」についてだった。
 その「海山十題」は時代の波に翻弄され、その一部は所在不明となって “流転の名画” とも呼ばれ、後世になってから横山大観の評価を左右するほどの話題になったという。

   
   ※ 大観は富士山を題材とした画を数多く描いたという。

 されは「海山十題」が制作年に関わってくる。「海山十題」の制作年は前記したように1940年である。1940年というと太平洋戦争前夜である。国全体は軍国主義一色に染まっていたと伝えられている。そうした中、横山が積極的に軍国主義に関与したのか?あるいは有名画家故に体制に利用されたのか?
 海を主題に描いた十作品と、富士山を主題に描いた十作品の計20点が「海山十題」とされているが、その中に数点に真紅の太陽が描かれていることが物議を呼んでいるようだ。さらにはその「海山十題」の20点は即売にかけられ、その売上金が陸海軍両省に献納され4機の戦闘機が購入されたそうだ。
 つまり戦前の横山大観は当時の軍国日本に積極的に関与したという評価なのである。

 
 ※ こちらは「海十題」の一枚です。真紅の太陽が印象的な一枚です。

 映画はその横山大観の評価について、元NHKアナウンサーの山根基世さんの質問に答える形で、映画監督の吉田喜重氏と横山大観記念館々長の横山隆氏(横山大観の孫)の二人が語っている。(横山氏についてはあるいは私の記憶違いの恐れもある)
 二人の横山大観の「海山十題」に関する評価は若干違っているように私には映った。吉田氏は横山大観の画家としての力量を認めながらも軍国日本を後押しする結果となったことに対する横山大観の姿勢に疑義を呈するニュアンスだったのに対して、横山隆氏は戦争と「海山十題」の関連について直接は言及せず、純粋に絵画としての価値を認めてほしいというニュアンスに映った。

     
     ※ 横山大観の晩年の一枚だと思われます。

 このことについて横山大観自身がどのような発言をしたのか知る由もないのだが、彼の功績は1937年に文化勲章を授与され、戦後の1952年には文化功労者に叙せられたことからも、彼の画家としての存在は日本画壇においては欠かすことのできない大きな存在であるということを示しているのかもしれない。

※ 使用した写真は全てウェブ上から拝借したものです。


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