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私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

北大公開講座「2030年へのシナリオ」 4

2013-08-05 22:55:08 | 大学公開講座
 近未来を展望する北大公開講座「2030年のシナリオ」も過日予定されていた8回の講座が全て終了した。私にとっては難解な講座もあったが概ね興味を抱きながら聴講できた。7回目、8回目の講座の概要をレポートする。
 

                    

 7回目、8回目の日程・内容・講師は次のとおりだった。
 ◇第7回 7月25日(木) 「2030年、そのとき北海道の食料とエネルギーは?」
                           地球環境科学研究院 准教授 藤井 賢彦 氏
 ◇第8回 7月29日(月) 「宗教とソーシャル・キャピタル」
                 ~人口減少社会における宗教の役割~
                          北大大学院文学研究科 教授 櫻井 義秀- 氏

 第7回目の藤井氏の講座は論旨が非常に整理されていて、受講する側にとっても聴きやすい講座だった。
 藤井氏はまず、2030年という年数にこだわって見せた。氏は、「2020年では近すぎる。しかし、2050年では遠すぎる」という。2030年は各々が当事者として考えられるギリギリの将来ではないか、と説いた。(この氏の説には深く頷いた私だった)
 そして2030年というと17年後であるが、氏は対比するように17年前の1996年当時を私たちに想起させ、その変化の大きさに気付かせた。
 1996年当時、携帯電話もインターネットもその普及率は低いレベルにとどまっていた。一方、食糧自給率は当時まだ40%を保っていたという。
 それから17年、日本を巡る環境は大きく様変わりしている。
 ということは、これからの社会変化のスピードは加速することはあっても停滞は考えられない。となると、例え17年後とはいえ、その予測は難しいと説明された。

          
 
 そうした中で、氏は世界の今後を占う上で4つのメガトレンドに注目したいという。その4つのメガトレンドとは、
(1)個人の力の拡大
(2)権力の拡散
(3)人口構成の変化
(4)食糧・水・エネルギー問題の連鎖
であるという。

          

 特に氏の研究分野とも関連がある(3)、(4)について、「人口問題はいつも環境問題の本丸である」とした。地球温暖化をはじめとする環境問題対策に先進国が積極的に取り組むことが食糧をはじめとする水、エネルギーの問題解決の糸口になるとした。
 氏の講義では「北海道」ということで直接の言及はなかったが、世界的な視野から示唆に富んだ考えをたくさん伺うことができた講座だった。(氏が北海道のエネルギー問題に取り組んでいることについては別な形で触れたが)


 最終講座となった第8回目の講座は「宗教とソーシャル・キャピタル」と題する講座だった。
 氏の分析によると、現代の日本の宗教は人口減少社会の問題に直面しているという。特に地方社会においては人口減少によって寺社や教団の維持が困難になるところが今後続出するのではないかということである。
 人口の減少が寺社の消滅を招き、人々の心の拠りどころを失うこととなり、地域崩壊に繋がりかねないということである。

 講座はオウム真理教の出現を例に取り、カルト・スピリチュアルの出現の要因に触れた。
 カルト・スピリチュアルの出現の要因は「日常性の裂け目を見る」ことによって、人々がカルトにすがってしまうことだという。例えば、人が生老病死に遭遇したとき「他ならぬ私がなぜ?」と思ってしまうことだという。そう思わせるのは、現代の科学、医学、教育、経済が非常に進化したことによって人間の必然性を忘れさせる時代になっていて、その日常性に裂け目ができたとき、そこにカルトが入り込んでくる可能性があるということだ。
 そして、宗教とカルトの違いは、宗教は人生・世界への問いの扱い方や答えの出し方に精神性を大切しているのに対して、カルトはその問いに対して宗教が越えられぬ壁を軽々と越えてしまうところがある、と私は解釈した。

 氏は最後に、ソーシャル・キャピタルとは、社会・地域における人々の信頼関係や結びつきを表す概念として用いられる用語であるが、そうした社会を築いていく上で「宗教」が果たす役割には大きなものがあると指摘した。そして、そのことが今後どうなっていくか、という課題を提示するような形で講座を閉じた。

 以上、8日間にわたって日本、あるいは北海道の近未来を占う公開講座「2030年のシナリオ」を受講したが、講師の先生方のお話を十分に咀嚼できたかどうかは別問題として、知的好奇心を大いにくすぐられた8日間だった。