歳時記では「百物語」が、夏の季語に分類されています。夏の夜、百本のろうそくをたてて、一人が一つずつ怪談話をしては、一本ずつ消していき、百本目のろうそくを消すと化け物が本当に出てくる……ということをやったらしいです。クーラーも扇風機もない時代の涼のとりかたのひとつです。傍題として「怪談」や「幽霊」も夏の季語だったと記憶しているのですが、今手元にある「歳時記」には、載っていません。
*中学年以上、いや高学年以上かな。本には小学中級からと書いてますがね。3、4年生じゃあ恐すぎるような……。
この集英社みらい文庫は、創刊になってからまだ1年と少しです。その短い間に森川さんは、『坊ちゃん』「注文の多い料理店』に続いて3冊目。すごいです。
11の恐い話が載っていますが、森川成美さんの『小僧の政吉』は、現代の小学生が地域のことを調べているうちに、江戸末期に盗みの濡れ衣をきせられて磔(はりつけ)になった小僧の政吉の写真と出会ってしまうという話です。その写真の描写が恐い。
はりつけは、台木に縛りつけた後、右のわき腹から左の肩にかけて、槍でぎりぎりとねじこむように串刺しにし、こんどは左のわき腹から右の肩にかけて刺し、これを三十回ほどくりかえした……。
主人公と友人は、よせばいいのに、ちゃんと調べようと今ではビルになっているその政吉が奉公していた紙問屋へと出かけていきます。そこで……。ううっ怖いです。
中央線は将門の怨念があり事故や身投げが多いとか。怨念は時代を超える。ホラー映画はどんどん凝った作りになり、私はとても観に行けませんが、文字で怖さが伝わるというのは、いいと思います。恐怖という言葉の「恐い」は対象がはっきりとしているもの。「怖い」は、対象がはっきりしていないがコワイ。ということだそうです。「怖い」の方が怖い? 「強い」と語源が一緒とも辞書にはあります。恐怖を覚えると、身体が強ばるから?
子どもは、ホントに怪談が好き。プールや海で発散すると同時にこういう怖さを味わうことも大事です。 『ちょーコワ! 怪談』には、現代版百物語も載っています。…『二度と語ってはいけない』(時海結以)。『無視できないタロットカード』(三日月シズル)は、現代ならではのスマートフォンの話。これを読んだら、簡単にネットを利用するのが怖くなるんじゃないでしょうか。夏の夜にオススメです。