学校教育を考える

混迷する教育現場で,
日々奮闘していらっしゃる
真面目な先生方への
応援の意味を込めて書いています。

信頼関係ということ

2007-02-19 | 教育
教師と生徒のあいだの信頼関係ということについて,
考えてみたい。

よく生徒は中学生ぐらいになると,
「先生は,私のことを信用していないんですか?」などと
言うことがある。
この言葉は,教師に生徒が投げつける言葉としては,
かなりとげのある言葉である。

なぜなら,
教師は生徒を信頼すべきものだと
教師自身が考えているであろうことを想定して
自己防衛的に言っていることが多いからである。

こんなときは,
「あなたが,私(教師)のことを信用しているのと同じぐらい,
 私はあなたを信用していますよ。」
と答えてやるのもひとつの方法であろう。

本来,教師と生徒との間の信頼関係というものは,
対等の人間関係におけるものではないので,
双方向的なものとしては成立しないからである。

生徒が教師を信頼するとか信用するというのならわかるが,
教師が生徒を信頼するとか信用するとかいうことは本当は
成り立たないのである。

なぜなら,生徒は信頼するに足りない存在だからこそ,
学校に来て学んでいるのであるし,
教師の仕事は,信頼するに足る存在ではない生徒を,
信頼するに足る存在へと成長させることだからである。

教師は,生徒の今を信頼しているのではなくて,
生徒がよりよく成長するであろうこと,つまり生徒の将来を
信頼しているのである。

本当は,あの生徒は信頼できる人物だというふうに
教師が判断できるのは,
その生徒が,一人前になってからのことなのである。


しかしながら,教師は,
「あなたがたのことを信用していますよ」
と,自分のクラスなどで言いたくなるものである。

「よし,先生が私たちのことを信用してくれているんだから,
 その信用を裏切っちゃいけない。しっかりしよう」
と思ってくれる年齢の子どもまではある程度有効であろうが,
それにしても,教師は,
いつかどこかの段階で生徒への信用というものを
自ら否定するような言動をしてしまうものである。

「なあんだ。先生はやっぱりわたしたちのことを
 信用なんてしていなかったんだ」
と子どもに思われることもまた多いのである。

そうなってしまえば,それこそ教師に対する子どもたちの
信頼そのものが崩壊する。

そのようなことをも考えに入れれば,
「信頼関係」を口にすることには
くれぐれも慎重でなければならないと思うのである。