04年5月13日生まれ・93年3月16日死去、享年88歳。
熊本出身。
小津映画における笠智衆(りゅう・ちしゅう)さんって、黒澤映画における志村喬のポジションなのかな・・・。
などと、18歳のころの映画小僧は思っていました。
18歳までに黒澤映画は制覇していたのに、「動」の黒澤に対して、小津は「静」なので、いくら名作といわれても「取っつきにくい」ところがあったのです。
映画の学校に通うようになって、それじゃあいけないと小津映画を連続して観ました。
世界の映画のベストワンと評されることもある『東京物語』(53)には凄みを感じましたが、『晩春』(49)にしろ『麦秋』(51)にしろ、同じような物語を同じようなタッチで撮っていると感じ、正直、退屈だなぁと思いました。
山田洋次と同様、映画監督としての小津の才能に気づき始めたのは、じつは30歳を過ぎてからです。
それはともかく。
後期の小津映画には、「いつも」といっていいほど笠智衆さんが居ます。
そして、「いつも」といっていいほどお父さんを演じています。
まだ若かったにも関わらず、やや年老いたお父さん。
だから「老け役の名手」と評されているわけです。
ところで黒澤は笠智衆さんを何度か起用していますが、三船は小津映画に出たことがありません。
落ち着きがない、「動」の俳優だからでしょうか笑
でもちょっと、観たかったなぁと思いません?
どんな演出をしたのだろうかと。
<経歴>
住職の家に生まれ、少しの期間ですが父の仕事を継いだときもありました。
大学を中退し、松竹蒲田撮影所の俳優研究所第一期研究生として俳優の世界に入る。
映画出演は途絶えませんが、あくまでもそれは端役としてで、第一線で活躍出来ない日がつづきます。
そのころに顔を出していた映画は・・・
『若人の夢』(28)、『学生ロマンス 若き日』(29)、『落第はしたけれど』(30)、『その夜の妻』(30)、『大人の見る絵本 生れてはみたけれど』(32)、『青春の夢いまいづこ』(32)、『東京の女』(33)、『母を恋はずや』(34)、『浮草物語』(34)、『東京の宿』(35)。
小津の映画が、いくつかあります。
小津も最初から、笠智衆さんを高く買っていたわけではなかったのでしょうか。
36年、小津の『大学よいとこ』で初めてメインどころを演じる。
これが、実質的な映画俳優デビュー作になるのかもしれません。
同年、小津の初トーキー映画となる『一人息子』に出演。
実年齢32歳であるにも関わらず、初老の役を器用にこなして脚光を浴びる。
『風の中の子供』(37)、『荒城の月』(37)、『奥様に知らすべからず』(37)、『兄とその妹』(39)。
【40年代】
41年…『みかへりの塔』『戸田家の兄妹』『櫻の國』
42年…『父ありき』
43年…『海軍』
44年…『陸軍』
47年…『象を喰つた連中』『長屋紳士録』
48年…『面影』
49年…『森の石松』『晩春』
【50年代】・・・日本映画黄金期に重なっている、というのもあるのでしょうが、壮観な10年間のキャリアです
50年…『宗方姉妹』
51年…『善魔』『カルメン故郷に帰る』『自由学校』『麦秋』『命美わし』
52年…『お茶漬の味』『人生劇場 第一部』
53年…『人生劇場 第二部』『東京物語』『君の名は 第一部』『君の名は 第二部』
54年…『君の名は 第三部』『風立ちぬ』『二十四の瞳』
55年…『生きとし生けるもの』『くちづけ』『野菊の如き君なりき』
~『サラリーマン目白三平』シリーズ~
『サラリーマン目白三平』(55)
『続サラリーマン目白三平』(55)
『サラリーマン目白三平 女房の顔の巻』(60)
『サラリーマン目白三平 亭主のためいきの巻』(60)
56年…『早春』
57年…『満員電車』『東京暮色』
58年…『無法松の一生』『彼岸花』
59年…『風花』『私は貝になりたい』『お早よう』『浮草』
【60年代】
60年…『銀嶺の王者』『悪い奴ほどよく眠る』『大菩薩峠』『秋日和』
61年…『小早川家の秋』
62年…『秋刀魚の味』
64年…『愛と死をみつめて』
65年…『赤ひげ』
66年…『暖流』
67年…『青春の海』『日本のいちばん長い日』
68年…『肉弾』『スクラップ集団』
69年―山田洋次の代表作『男はつらいよ』シリーズにレギュラー出演、御前様を好演する。
(遺作となる92年の『寅次郎の青春』まで、全作品に登場)
70年以降の代表作に・・・
『家族』(70)、『故郷』(72)、『花と龍』(73)の『青雲篇』『愛憎篇』『怒濤篇』、『宮本武蔵』(73)、『砂の器』(74)、
『海峡』(82)、『お葬式』(84)、『それから』(85)、
ポール・シュレイダーが演出した米映画『MISHIMA:A Life in Four Chapters』(85)、
『キネマの天地』(86)、『国士無双』(86)、『マルサの女2』(88)、
小津狂を自称するヴィム・ヴェンダースの『東京画』(89)と『夢の涯てまでも』(91)、
黒澤の『夢』(90)では「葬式は祝いごと」という名言を放つ老人を元気に演じ・・・ていましたが、このころ膀胱がんを患い、闘病をつづけつつ俳優活動も展開するようになります。
そして93年3月16日、帰らぬひととなりました。
享年88歳。
この歳になって、やっと、笠智衆さんや森雅之のよさが分かってきた感じです。
ガキで、すいません汗汗
…………………………………………
明日のコラムは・・・
『にっぽん男優列伝(351)リリー・フランキー』
熊本出身。
小津映画における笠智衆(りゅう・ちしゅう)さんって、黒澤映画における志村喬のポジションなのかな・・・。
などと、18歳のころの映画小僧は思っていました。
18歳までに黒澤映画は制覇していたのに、「動」の黒澤に対して、小津は「静」なので、いくら名作といわれても「取っつきにくい」ところがあったのです。
映画の学校に通うようになって、それじゃあいけないと小津映画を連続して観ました。
世界の映画のベストワンと評されることもある『東京物語』(53)には凄みを感じましたが、『晩春』(49)にしろ『麦秋』(51)にしろ、同じような物語を同じようなタッチで撮っていると感じ、正直、退屈だなぁと思いました。
山田洋次と同様、映画監督としての小津の才能に気づき始めたのは、じつは30歳を過ぎてからです。
それはともかく。
後期の小津映画には、「いつも」といっていいほど笠智衆さんが居ます。
そして、「いつも」といっていいほどお父さんを演じています。
まだ若かったにも関わらず、やや年老いたお父さん。
だから「老け役の名手」と評されているわけです。
ところで黒澤は笠智衆さんを何度か起用していますが、三船は小津映画に出たことがありません。
落ち着きがない、「動」の俳優だからでしょうか笑
でもちょっと、観たかったなぁと思いません?
どんな演出をしたのだろうかと。
<経歴>
住職の家に生まれ、少しの期間ですが父の仕事を継いだときもありました。
大学を中退し、松竹蒲田撮影所の俳優研究所第一期研究生として俳優の世界に入る。
映画出演は途絶えませんが、あくまでもそれは端役としてで、第一線で活躍出来ない日がつづきます。
そのころに顔を出していた映画は・・・
『若人の夢』(28)、『学生ロマンス 若き日』(29)、『落第はしたけれど』(30)、『その夜の妻』(30)、『大人の見る絵本 生れてはみたけれど』(32)、『青春の夢いまいづこ』(32)、『東京の女』(33)、『母を恋はずや』(34)、『浮草物語』(34)、『東京の宿』(35)。
小津の映画が、いくつかあります。
小津も最初から、笠智衆さんを高く買っていたわけではなかったのでしょうか。
36年、小津の『大学よいとこ』で初めてメインどころを演じる。
これが、実質的な映画俳優デビュー作になるのかもしれません。
同年、小津の初トーキー映画となる『一人息子』に出演。
実年齢32歳であるにも関わらず、初老の役を器用にこなして脚光を浴びる。
『風の中の子供』(37)、『荒城の月』(37)、『奥様に知らすべからず』(37)、『兄とその妹』(39)。
【40年代】
41年…『みかへりの塔』『戸田家の兄妹』『櫻の國』
42年…『父ありき』
43年…『海軍』
44年…『陸軍』
47年…『象を喰つた連中』『長屋紳士録』
48年…『面影』
49年…『森の石松』『晩春』
【50年代】・・・日本映画黄金期に重なっている、というのもあるのでしょうが、壮観な10年間のキャリアです
50年…『宗方姉妹』
51年…『善魔』『カルメン故郷に帰る』『自由学校』『麦秋』『命美わし』
52年…『お茶漬の味』『人生劇場 第一部』
53年…『人生劇場 第二部』『東京物語』『君の名は 第一部』『君の名は 第二部』
54年…『君の名は 第三部』『風立ちぬ』『二十四の瞳』
55年…『生きとし生けるもの』『くちづけ』『野菊の如き君なりき』
~『サラリーマン目白三平』シリーズ~
『サラリーマン目白三平』(55)
『続サラリーマン目白三平』(55)
『サラリーマン目白三平 女房の顔の巻』(60)
『サラリーマン目白三平 亭主のためいきの巻』(60)
56年…『早春』
57年…『満員電車』『東京暮色』
58年…『無法松の一生』『彼岸花』
59年…『風花』『私は貝になりたい』『お早よう』『浮草』
【60年代】
60年…『銀嶺の王者』『悪い奴ほどよく眠る』『大菩薩峠』『秋日和』
61年…『小早川家の秋』
62年…『秋刀魚の味』
64年…『愛と死をみつめて』
65年…『赤ひげ』
66年…『暖流』
67年…『青春の海』『日本のいちばん長い日』
68年…『肉弾』『スクラップ集団』
69年―山田洋次の代表作『男はつらいよ』シリーズにレギュラー出演、御前様を好演する。
(遺作となる92年の『寅次郎の青春』まで、全作品に登場)
70年以降の代表作に・・・
『家族』(70)、『故郷』(72)、『花と龍』(73)の『青雲篇』『愛憎篇』『怒濤篇』、『宮本武蔵』(73)、『砂の器』(74)、
『海峡』(82)、『お葬式』(84)、『それから』(85)、
ポール・シュレイダーが演出した米映画『MISHIMA:A Life in Four Chapters』(85)、
『キネマの天地』(86)、『国士無双』(86)、『マルサの女2』(88)、
小津狂を自称するヴィム・ヴェンダースの『東京画』(89)と『夢の涯てまでも』(91)、
黒澤の『夢』(90)では「葬式は祝いごと」という名言を放つ老人を元気に演じ・・・ていましたが、このころ膀胱がんを患い、闘病をつづけつつ俳優活動も展開するようになります。
そして93年3月16日、帰らぬひととなりました。
享年88歳。
この歳になって、やっと、笠智衆さんや森雅之のよさが分かってきた感じです。
ガキで、すいません汗汗
…………………………………………
明日のコラムは・・・
『にっぽん男優列伝(351)リリー・フランキー』