Cape Fear、in JAPAN

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『Cape Fear』…恐怖の岬、の意。

低俗がどうした

2016-11-08 09:46:06 | コラム
【2016総括シリーズ その参】

16年度の総括、第3弾は小説・ノンフィクション・ルポルタージュ・漫画などの書物10傑。

今年はとくに偏りが見られ、それで「低俗がどうした」というタイトルを冠してみた。

「ハダカ」モノが多くなったのでね、
先週の話か、TBSのバラエティがBPOの審議入りの対象になったという報道があったが、こういう番組に対する否定派と肯定派のやりあいって、たぶん、これから先もずっとつづいていくのだろうな。

観ていないからなんともいえないが、否定派の主張は「ハダカで笑いを取るという発想が低俗」ということらしい。

いっていることは分かるが、これがゲージツと呼ばれるものの世界になると、途端に「ハダカは、ありがたい」みたいな傾向が出てくるのが、はっきりいって分からん。

加納典明は、「エレクトしなきゃ、ハダカの意味なんて、ない」といった。
ちがうかもしれんが、ニュアンス的にはこんな内容だった。

自分は「こっち派」であり、だから、ハダカはハダカ。
笑いやゲージツに関係なく、人間のありのままを映す最高の「さらしもの」だと思っていますよ。


以下が、今年の書物10傑。
あくまでも「自分が今年読んだもの」であるからして、今年発表されたものとはかぎりません。


(1)ルポルタージュ『性風俗のいびつな現場』(坂爪真吾・著、ちくま新書)



風俗産業を「福祉」という視点で捉え直した労作。
もっと多くのひとに手に取ってもらうため、タイトルに「福祉」を入れたほうがよかったかもしれないが。

鴬谷に「風俗の墓場」と称される店『デッドボール』があり、そのことについても書かれているということで、自分は手に取った・・・が、ここに勤務する女子たちの自虐性に感動するとともに、雇う側の覚悟の大きさも知ることが出来て、これは多くのひとに読んでもらいたいな、、、と。

(2)ルポルタージュ『震災風俗嬢』(小野一光・著、太田出版)



3.11発生の1週間後に、営業を再開させた風俗店の狙いとは。
そこで働く彼女たち、そこにやってくる男たちの濃密なドラマ。

風俗嬢「どうしていいかわからない。人肌に触れないと正気でいられない―って話してました」

(3)小説『沈黙』(遠藤周作・著、新潮社)

一体、何度読んでいるのかって話だが。

公開が迫った映画版の予習のために、再び頁をめくり、またまた感動してしまった。

(4)小説『ジニのパズル』(崔実・著、講談社)

群像新人文学賞受賞作。

98年、北朝鮮からテポドンが発射され・・・。

日本で育ち、中学時代は朝鮮学校に通うも、生徒のなかでひとりだけ朝鮮語を話せなかったジニ。
彼女の視点で描かれる、日本と朝鮮の物語。

映画でもそうだが、自分は新人の出現に最も注目しているので、発表された直後に読んでみた。

(5)漫画『ちはやふる』(末次由紀・著、講談社)

映画版公開前にと、既刊を一気に。

いやぁ、ふつうにハマってしまった。




(6)ノンフィクション『全裸監督 村西とおる伝』(本橋信宏・著、太田出版…トップ画像)

80~90年代のAVを牽引した、村西とおるの熱い・厚い半生。

「人生、死んでしまいたいときには下を見ろ! おれがいる。」

コピーどおりの内容で抱腹絶倒、ロジャー・コーマンの自伝に通ずる面白さがあって大満足。

(7)小説『海の見える理髪店』(荻原浩・著、集英社)

直木賞受賞作。

同時期の芥川賞受賞作『コンビニ人間』に比べて地味だが、個人的に、連作短編のような構造が大好きなので。

(8)漫画『甘々と稲妻』(雨隠ギド・著、講談社)

有吉ちゃんのラジオで取り上げられていたので、読んでみた。



絵のタッチは好みではないが、父子家庭のパパが頑張って料理を覚えていく過程に共感を覚える。

(9)小説『我々の恋愛』(いとうせいこう著、講談社)

多才のひと・いとうせいこうが紡ぐ、ときと場所を越境する恋愛小説。

95年と2001年。
東京と群馬、トルコと兵庫。
電話線とネット回線。

あぁせいこうさんは、近現代史を俯瞰しようとしているんだな、、、そう思った。

(10)小説『大きな鳥にさらわれないよう』(川上弘美・著、講談社)

久し振りに川上女史の著作を読んだが、その変わらぬタッチに安心しつつ、視野が宇宙規模へと進化しているところに驚いた。

SFというより、神話を目指した、スケールの大きい、それでいて繊細な描写が光る物語。

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明日のコラムは・・・

『かほり』
コメント (1)
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