2007年のある日
石崎と三沢は、自国民党の燃料を考える議員の会の面々を食事会に招待した。
石崎がまず燃料を考える会の議員を労う挨拶をし
「昨年からお聞きしております販売店の方々の鬱憤はもっともな事でございます。元売と致しましても遺憾の意を表するところではございますが、先生方のご要望にお応えするべく知恵を搾ってまいりましたので、これからご説明させて頂きますが、どうぞお食事を続けながらお聞きください。」
「販売店の不満は、市況の小売価格から鑑みて差別対価が行われているのではないか?と疑心暗鬼になることに因るものです。
その不安を取り除くために、これまでオープンにしておりませんでした仕切り価格を公表しようと考えております。」
議員が口を開いた。
「不透明な仕切り価格を透明にされるのですね? うん、それは良い考えです。」
「やはり差別対価は正当な競争を阻害する原因になりますからね」
「ええ、そうですね。ただ現在でも製品の性質上、価格決定には2種類ございましてそれをひとつに統一することは不可能です。従いまして仕切りを公表すると申しましても、その仕切り価格は数種類用意させて頂くことになります」
「?・・・それはどういうことですか?」
「ここからは、この三沢からお話させて頂きます」
「簡単にご説明させて頂きますと、原油価格を元にしたものと、先物取引価格から算出したもの、又その平均値というような感じです。」
「うーん、それでは一つの製品に対して数種類の価格が存在する・・と?」
「ええ、そのようになります。そのそれぞれの価格を公表発表致します。」
「それで」
「我々元売と売買契約を結んでいるのは特約店になりますので、特約店との間でどの方式にするかを選んで契約します。もちろん選ぶのは特約店になります。又、仕切り価格はもちろん、運賃も公表します。全て透明に致します。」
「おお!それなら差別対価も無くなり、疑心暗鬼からの不満は起こりませんね」
「はい。そうなります。但し、我々がタッチするのはここまでです。」
「と言いますと?」
「その先は、特約店と販売店との間の話という事です」
「・・・」
「ですから我々は全てをオープンに致しますが、特約店にもマージンが必要です。しかしそれをいくらにしなさいと、こちらが強制できるものではありませんよね?」
「それは自由競争から言っても、もちろんそうでしょうね」
「はい。ですから、この先は我々にはタッチ出来ないことになります。従って販売店が実際いくらでの仕入値になるのか、それはこちらでは関知致しません」
「うーん。・・・それでは仕切り格差が無くなるかどうか、心許ないですね・・・」
こほん、と一つ咳払いをして
「こちらは、先生方や組合の要望にお応え致しました。」 毅然と答える三沢
「確かに・・・。まぁ仕切り値も公表されるわけだし、特約店も無茶は出来ないでしょうし・・・いやいや、良いアイデアを有り難うございました。」
「こちらこそ、ありがとうございます。・・・それはそうと、ガソリンの暫定税率の期限が来年で切れますが自国民党さんではどのようにされるおつもりですか?」
「もちろん継続するつもりではいますが・・・野党の連中が廃止廃止と五月蠅いもので・・・ちょっと予測できない状態ですね」
「そうですか。しかしそれこそきちんとして頂かないと混乱に繋がりますし、何より我々が第一の当事者ですから、動向はお知らせくださいね。何卒販売店が困ることのないようにお願いします。」
「もちろんです。」
食事会が終わって三沢とふたりになったとき、
「君は何だかんだ言っても、実は販売店のことも考えてくれているんだね」
石崎は礼を言おうとしたのだが、三沢は鼻で笑って
「ふん。何言ってるの?マー君って本当に甘いわね。暫定税率は最後の最後まで決めさせないわよ。党の上層部と来週会う手配をするから又そのつもりで用意してちょうだいね。越後屋の方で民の党に暫定税率廃止を強く働きかけるようにする為の手筈を整えるから。」
無言でいる石崎に向かって
「マー君、私が何の為に雇われたか考えてみて。ブランドイメージにそぐわない古いガソリンスタンドを抹消するためでしょう。その為に利用できるものは全て利用するわよ。暫定税率の混乱がガソリンスタンドの淘汰に一役買うのよ。」
つづく
http://www.opda.or.jp/menber/2008_09yuseiren.pdf
油政連だより 卸価格市場連動へ
※この物語はmasumiさんの被害妄想に基づくフィクションです(^^;
実在の人物及び団体とは一切関係ございません。
尚、加筆修正及びキャラの変更等もあるやも知れませぬことをお断り申しておきまする(^^;